第7話 丁々発止の綱渡り。綱から落ちたら意味がない。
おっさん臭く仕事終わりにギルド付属の酒場で飲んでいると、ギルド受付のほうが騒がしくなってまして。
なんやなんやと覗きに行ったら……。
SSランク勇者様パーティ様御一行じゃあありませんか!!
「おい、ここで飲ませろ。俺たちは勇者パーティだ」
おー俺様俺様勇者様は相変わらずですねえ……。
ここは受付の人の出方を見てみましょう。
「酒場はあちらとなっております」
「勇者パーティか。神王国で頑張ってるという話だったが」
「へー、そうなんですね配達名人の旦那。」
酒場でも揉めていて、スマートじゃないなあなんて思いつつ飲んでいると。
あ、弓持ってる眼鏡と目が合っちゃった。名前なんだっけ、もんきぃ一郎だっけ?
「あ……!」
「……はい?」
「この特徴的な髪の毛と目の色……お前死んだはずだろ!?」
「はぁ。ここにいますが」
何を言っているんでしょうもんきぃ一郎は。
「だってあの時ヒナタから能力解放のスキルを埋め込まれたはずだろ!?」
「はぁ? 何の話ですか? 覚えがありません」
「俺のスキルは完全記憶と完全探知なんだ、この記憶が嘘をつくはずがない。お前何者だ!?」
ちょっとビビっているもんきぃ一郎。うーん、何者、ですか。何者ねえ。
「そうですねえ。そうだなあ……ああそうだそうだ、私はね」
一呼吸おいて。
「あなた、もんきぃ一郎に拷問強姦を受けた山咲牡丹ですよ。あの仕打ちははっきりと覚えてますよ」
もんきぃ一郎は青ざめた後真っ赤になって。
「俺はモンタだくそアマ! というか拷問強姦なんてこの俺がしているはずがないだろう!!」
店内に響き渡るような大声でそう叫ぶモンタさん。もんきぃ一郎ではなかった。
「おいおいうるさいぞモンタ。そうだよ、お前がそういうことをしているはずがないだろう。ほら、ギルドでスキルを確認してもらえよ。犯罪スキルなんてついていないはずだ」
勇者様は穏やかな顔でそういい、こちらには鬼のような顔を向けて、
「おい、勇者パーティを陥れるのは重罪だぞ。わかってるんだろうな」
と言い放ちました。そりゃあ知ってるよぉ。
「嘘ではないですし……」
「じゃあスキル一覧でモンタの潔白が証明されたら、お前を切るからな」
うっわ怖いわぁ……。
「嘘ではないですし」
「ほざけ」
「嘘ではないですし。じゃあまあ、ここでモンタさんのスキルを公表してもらいましょうよ、ホログラムで壁に表示させましょう」
「いーだろー山野牡丹。なんでお前が生きているかは知らないがその挑戦受けて立つよ、どうせ出てこないからな!」
「そうですかそうですか。嘘ではないですし」
というわけでホログラム表示させてモンタのスキルを表示させました。抜粋した結果がこちら。
――――
罪スキル
なし
――――
「だーはっははっは! 重大な虚偽をしたな! 今度こそ死んでもらうぜ!」
「今度こそ? 一度殺しかけたってことですか?」
「なっ……それは」
ここで勇者が割って入りました。
「そうだ、お前は確か……持ち逃げをしようとして切られたはずだ。それで、死ななかったんだな。まさに、『今度こそ』死んでもらう!」
聖剣を抜き放とうとする勇者様!
とりあえず大声で叫ぶ!
「このスキル表示が本当か確認させてくださいよ!」
この叫び声を聞いたモンタが少しひきつった顔をしましたが、すぐに冷静になって。
「ああいいだろう。俺は何もしてないからな。何をしてもこの表示が変わることはない!」
と申し上げましたー。ほっほー。
しかし顔には冷や汗が出てきてますね。私の目は鋭いですよ。
「じゃあ私は【看破】を使いますがよろしいですね?」
「だーはっははっは! 仮に俺が悪だくみをしていてもその程度のスキルじゃ見破れねえよ!」
「自白しているようなもんですが……まあいいや、【看破】」
するとたちまちホログラムにはこんな表示が。
――――
罪スキル
強姦Lv5
拷問Lv5
暴行Lv5
強盗Lv5
窃盗Lv5
……
……
……
――――
「あらぁ……見破っちゃった。これはこれは……」
「な、なんで見破られたんだ!?」
「見破られた、見破られたとおっしゃいましたね今、これは事実だということを酒場の全員に知らしめたということですね?」
「なっ!? ……いや、嘘だ。お前俺に何かしただろう。!? 【看破】じゃなく【虚偽】とか、なんかそういうスキルを使ったんだろう!? なあ、そうだろ、おいこのクソガキ! チートスキルが破られるはずがねえんだ!」
ゆーっくりとモンタの前に勇者が割って入って。
「残念だよ、モンタ、いや竹口源太。お前がこんなことをしているだなんてな、知らなかった」
「おま、裏切る気かぁ!? お前も――」
「――だまれ! こんな重罪人、喋る価値はない! ヒナタ!」
「【沈黙】【金縛り】残念よ、源太。ここでお別れね……」
「ンー!? ンンー?! ンー?! ンー!?」
うおおお、なんかすげー。三文芝居すげー。
「ギルド員、こいつを兵舎まで連行しろ!!」
ピャー! という感じでギルド員は速やかに源太を縛って兵舎がある方に連行していきました。
「あー、あー……すまなかったな、君。僕の目を見てくれ。謝罪をしたい」
というので渋々勇者様の目を見てあげますと……。
「誠心誠意謝罪するから、君ももう忘れてくれ、いいかな?」
説得スキル、かな?
「……効かんわ」
「!? ……まあ、謝罪だけではだめだろうな。何か望みはあるかい?」
「んじゃあ、その戦士ゴリラにも同じことをしたいんですが」
「なっ……それは後にしてくれ。今は源太が凶悪犯罪者ということで頭が混乱してしまっているんだ」
「わかりました。じゃあ明日にでも……」
勇者は大げさに残念ぶると……。
「おお、そうかそうしたいのはやまやまだが、今すぐにでもここを発ってしまわないといけないんだ。お願いする。ダメカナ?」
何か掛け合わせてきた。ちょっと持たない。
「分かりました……2000ドルエンで手を打ちましょう」
「分かってくれてうれしいよ! ハハハ! はぁ?」
「やられたのは嘘じゃないですし。慰謝料。」
すっと手を差し伸べます。
「ああもう時間が! すまんが次あったときにしてくれたまえ!」
といって三人は出ていきました。出て行ったあと駆け足でどこか行ったみたいですが。
というわけでモンタこと竹口源太をムショに送ってやりましたぁぁぁぁぁ!!
ワハハハハハハハハハハハハハハ!!
いやさー! 今回は博士対策と賞金稼ぎ対策が役に立った感じ!!
実はスキルってこんな感じだったんだ!
――――
治すLv1⇒強い心Lv2
回避Lv1⇒看破Lv2
防御Lv1⇒誤魔化すLv2
備考……2000ドルエンの借金
――――
ワハハハ!! 悪夢に耐える【強い心】、賞金首を見破る見つける【看破】、博士の目から居場所を【誤魔化す】。
組み合わせたらこうなっちゃった! 自分自身も誤魔化しておいてよかったかな? あの4人のうちだれかがスキルを見抜いていた気がしないでもない。大丈夫だったようですが。
ま、Lv1で3倍、Lv2で実に9倍ですからね私ー!
成長や身体能力向上のスキルによる基本能力の高さも相まって、こちらのスキル込みの能力がチート野郎の力を上回っちゃった感じですねー!
いやーハッハッハ! 爽快爽快! 借金多すぎ問題は大変不愉快! はぁ。