第36話 小型機動装甲車
いざ行かんクラウディア帝国!
という感じなのですが、やっぱ遠いんすよね。勇者はクラウディア帝国東部で暴れてるので特に遠い。足が欲しいっすね。
3又に分かれている半島の東側に機械族が住んでいて、機械族が車を作っているということなので、いっちょ借金して買うか!
クーガーの例があるので、今回は小型で、でも長距離走れる軽快な車を選ぼうかなって。
さーて機械族さんなんですが、めっちゃ機械機械してます。機械族というか、古代の機械製造工場でうまれた作業ロボットって感じ。
まあ知能はあるようなので大丈夫でしょう、うん。
うーん、小型でも武装付き装甲車は難しいですね。20万30万しよる。いくら借金できるとは言え、3万くらいが限度ですよ。それだってロゼスの炭鉱採掘ができればのお話。今はクラウディア帝国に向かうわけで。むうー。
「ポンコツないですか、ポンコツ」
私作成とか修復なんかができますからね、たぶん直せます。科学知識は無茶苦茶残っとるし。
「んー、そやねえ、機械パーツをとってるダンジョンの最奥にボロボロの車が鎮座しとるなあ」
「お、じゃあそこ行ってみます」
機械ダンジョン。ダンジョンといっても石油プラントか溶鉱炉プラントか、それくらいの規模の施設がダンジョン化したようなもので、どこからがダンジョンなのか明確にはわからない開放型のダンジョンですね。スタンピードは起きないけど、内部に際限なく溜まっていきます。すごく良い資源が採れるのですけど溜まりすぎたら放置するしかない、かな。
そういうダンジョン。ダンジョンにも種類があるねえ。
今回は機械族が定期的にパーツ取りにここを訪れているので溜まっていく感じではありませんね。ダンジョンとは言え、配管などを壊すわけにはいかないので魔法スキルはやめて、槍で攻撃する感じかな。
あまり強く攻撃すると槍が曲がるので、簡易を使いながら攻撃していきます。
敵はガードロボットって感じの車輪で走る小型攻撃ロボットに、銃弾を打ち尽くした後特攻する危険なドローンかな。
銃弾は全て強化された体から生み出される、魔導防御で完封ですね。巣の防御性能が高いほど、強い魔導防御が出る仕組みサイコー。
今回1人じゃ運び出すの無理だろうということで数名の運搬型ロボットさんに来てもらっています。残骸はその子らに拾ってもらうって寸法よ。
ガンガン奥に進んでいき、中ボスとご対面。デカい2足歩行ロボットさんですね。5メートルくらいかな。でかいんで『ギンガンテス』とでも名付けましょうか。
しかし作ったんだかダンジョンで生まれたんだか、馬鹿ですねー。あのねえ、2足歩行って不利なんですよ。なんでかっていうと
「魔力で大きな剣を作って、全力の斬る!!」
スパっと膝部分を斬り落としました。うん、終わりだね。
2足歩行ってまあ確かに腕が使えるから有利な部分もあるんですけど、足をやられたらおしまいなんですよ。バランスを崩して。
ガシャーン
そう、倒れるんですわ。いきなり片足の一部分がなくなってバランスが取れる存在は……多分いないんじゃないかな?
あとは観察と探感知してセンサーをつぶして目を奪い、腕を切り落として攻撃を不可能にして、一番高価な動力部には傷をつけないようにしながら装甲を剥がしとっていき、丁寧に動力部を取り出しておしまい。
「こわい」
「狂気すぎる」
運搬型君がおびえてます。
あれ、また何か私しちゃいました?
これ、倒したことにはならないのかな。ジュエルドロップはなし。まあ、100%ドロップではないとは聞いておりますけど……いままで全部ドロップしていたからなんか残念。
さて5メートルもある機械なので運搬し切れずに一度帰還、何回かに分けて持ち帰って売り払いました。2万ドルエンくらいいった。これはこれでいいね、借金無しで修復できそう。
さーてお車とご対面。どんなかなー?
軍用車両かな……? 普通車としては武骨でデカいなあ。
本当にボロボロで、かなり錆びているので、正確なスペックは後回し。とりあえず持ち帰りましょう。運搬型君頼んだっ!!
「いやーこれはボロボロでんなー。直せるんかいな」
「うーん、でも直せばいい車だと思うよ。大きさは、正面から見て横幅が2.3メートル、高さが2.2メートル、奥行きが5.3メートル。クーガーと比べるとだいぶ小さいね。小型軍用車両って感じ。でも普通の車よりは一回り二回りは大きいね」
「装甲ついていた形跡もあるし、良さげな車でんなあ。直せればええですな」
「まあ直すよ。加工スキルとか売ってるんでしょ? 機械作ってるんだから。お金はダンジョンからパーツ貰ってきてそれで賄うよ」
ガレージを1つお借りして、修復開始!
――スキル追加――
加工 Lv9
――――――
何が重要って、エンジンが直せるかどうかなのよ。錆がひどくてLv9修復やLv9加工でも駄目だとちょっと。換装という手もあるけど。
観察と探感知を使ってエンジンの場所を把握して、そこまでの分解経路をりょうてに計算してもらい、液体生成で潤滑油を生成しながら加工で錆びをとりつつ丁寧に金属板を剥がしていきます。この金属板をもとに修復するから、あんまりバキボキやって壊しちゃうとまずいのだ。
「エンジンまでたどり着いたけど、錆がひどいね……」
[ひだりて:まずはエンジンオイルを流してうんぬんかんぬん]
[みぎて︰かんかんうんうん]
あーわかんない。専門はわかんない。たしかに私は究極の頭脳はある、あるけど使いこなせるかは別。
頭脳があるのと使いこなす知能があるかは別。
なのでりょうてに任せます。この子らも新型になったらしくてなんか凄いらしいし。
結果……
「エンジンは直せるけど部品が足りない。後魔導エンジンじゃなくて普通のディーゼル車だと」
[みぎて:まあそうなんだけど大丈夫だお。部品は3Dプリントすればいいし、ディーゼル燃料は液体生成で作っちゃうお]
だそうです、わからんからまあ頼んだ。タイヤも当たり前だけど使えなくなってるので、これを機会に足回りをいろいろと改造するんだって。
錆落として修復して3Dプリントして、コントロールパネルや部品を交換したりなんだりして最後に装甲張り付けて塗装して完成。
「できた! 見違えるようによくなったねー! これならどこにでもいけそう!」
あ、名前どうしようかな。小型機動装甲車……スーパーイーグルとかでいっか。
「んでんで、スーパーイーグルちゃんの特徴は?」
[ひだりて:クーガーのようなどう猛さはありませんが、機敏な動き、軍用車でありながら時速180キロメートルまでだせる高速性能、足回りを改良したことによる走破性向上と乗り心地の改善そして]
[みぎて:航続性能だお。一回の給油で整備された平地なら1500キロメートルは走れるお]
おー、なんや凄い燃費だね!
足もできたのでクラウディア帝国へ! たんぽぽちゃん達と別れを告げましょう。
「寂しくなりましゅね」
「勇者を押さえつけたらまた来るから」
「死なない限りは治せましゅから、死んじゃだめしゅよ」
「うん、死なないように頑張る」
「それじゃ、いってらっしゃいでしゅ」
さー、行ってみますか。




