第26話 火気厳禁
面白いなあこの世界って思うのは、原油を食べるバクテリアが居るんですよね。いや、地球にも分解して食べるバクテリアが居ましたけど、規模が違うというか。アメーバ状になってむさぼるんですよ。
普通に剣とかで攻撃しても倒しようがないので、凍らせて生命活動を奪います。そしてこのアメーバがよく燃えるんだぁ……原油を体内で精製して、非常によく燃える可燃物をアメーバ状にしているらしくて。
攻撃してくるわけじゃあない。一見危なくない感じなんだけど……。
小さいアメーバが原油採掘機構に取り付いて大きくなるんで、水際での排除は難しくて。んでよく燃えるわけでね、原油採掘施設の火災事故のかなりの割合がこいつらが原因なんですよ。
原油はそんな簡単には燃えないんだけど、魔導機械や人は火でやられちゃいますので……。
それで、習性というかなんというか。小さいアメーバを周囲にまき散らすのは、中型以上の大きさがあるアメーバなんですよ。これは討伐対象です。
良く燃える大きなアメーバが小さいアメーバをまき散らし、小さいアメーバが原油を食べて大きくなる。大きくなったアメーバがさらに小さいアメーバをまき散らし……。地獄ですわ。
なので、牡丹さんが討伐するお時間がやってまいりました。
まず探感知と観察を使って原油施設周辺にいるある程度の大きさのアメーバを探し出します。今回私がすごい勢いで原油をくみ取ったので、それにつられて結構な量のアメーバが近くに集結していますね。
基本的に攻撃してこないので、見つけたアメーバは、温度管理で猛烈に冷い風を作り範囲魔法にし、伝達も併せて使用して一気に凍らせます。
私お得意の、水で冷気の伝達をさせたいところなんですけど、液体や石など、不純物が混ざるとアメーバの商品価値が下がるそうで。
アメーバも、商品なんですねえ。主な用途は爆薬の原料になることだそうです。
不純物を混ぜたくない、だから風も出来る限りクリーンな風を生成して、固めるんです。私の風はあまりクリーンではありませんけど。【ろ過】とか、【純粋】とか、【成分調整】、【調整】、そういうスキルありゃあいいんですけどね。
【操作】はもってますけど、魔法の範囲や風の粘りなど何かしらを【精密に操作】してるので。むう。
おっと。
固めたアメーバは、ついてきている採取係の人が亜空間倉庫付きの袋に詰めて処理。そそ、今回は2人での作業です。
今回アメーバが結構飛んで来ているので、魔導採掘施設全体を止めて作業に当たっています。いったん生産が止まりますけど、火災で壊れた施設を復旧する方がお金も時間もかかっちゃいますからね、しょうがないです。
私みたいな超人じゃない人は、アメーバ処理専用に調整された魔導銃を撃ち込んで処理していたりします。使えるときは銃も使う。魔導文明さすがだなー。
順調に処理していたら私に緊急支援の連絡が魔導無線から飛んできました。なんでも、ついに大ボスを発見したようです。
んー、デカい。デカいですねこれは。情報によると、私が採掘する予定だった場所に存在していた原油を丸ごと飲み込んだらしいです。じみーに採掘するための設備を先行して設けていたのが裏目に出ましたねえ……。
つまりくそデカいんですよ。それでデカいと小さいアメーバ飛ばして防衛してくるんです。なぜそういう行動をとるようになるかは、博士にでも聞いてほしい。
とにかく投げつけられるアメーバに対処しつつ、くそでかアメーバ君、『デカいんです』とでも名付けますか、こいつを活動停止に追い込まないといけないです。
もし燃えて爆発したら、辺り一面が完全に吹き飛ぶでしょうね。だから慎重に慎重を重ねて処理しないといけない。
だけどそれくらいデカいって、つまり大量に存在する爆薬の原材料。
……売れる。
原油会社に莫大な利益が入ってくる。現場で対処した私に臨時ボーナスくらいは出るだろうね! ぐふふ。
今回は魔法系が扱える兵士さんや冒険者さんも一緒になって行動します。人数は10人位。まあ、それくらいデカいんですよ。
「戦略魔法しかないですね。使える人います?」
そんなことを聞いたら、ウサギ族の人が手をあげてですね
「おいら魔法陣ならくめるっす」
そしてネコ族の人が耳を立たせてですね
「わたし魔法陣の中の術式構築は得意です、氷ならしっかりと描けます」
「おーじゃあそれにみんなでスキル込めましょう。戦略魔法とはいかなくても魔法陣による大魔法なら凍り切るかもしれない。私範囲結界張れます。防衛担当しますので皆さんで魔法陣を組みましょう!」
ということで魔法陣の大魔法で凍らせよう作戦がスタートしました。ちなみに私が指揮してるのは、総合能力AAだからです。力で黙らせてる。
「魔法陣はできるだけ広く大きく展開してくださいね!」
「ういっす!最大の大きさで展開するっす!」
「念入りに術式を書き込むので少し時間が欲しいです」
「足止めなら私出来ますから。ゆっくり丁寧にやっていきましょう」
半径2・5メートルくらいある大きさの魔法陣に強力な術式を組み込んでもらいました。あとはこれにみんなで精神力を込めるだけ。
私はとりあえず右手で範囲結界を簡易で広く展開して、結界でバリケードを作ります。サークル状に囲みたいけどデカすぎて難しいので一直線のバリケードですね。簡易にしたおかげで強度は低いですが代わりに広く展開できました。
それでも乗り越えてくるでしょうけどね。
その場合、ひだりてが【粘る低温管理された魔力塊】をバリケードの脇に【蒸気噴射】して、少しでも行動が遅くなるようにします。魔力は混ざっても私が力を抜けば消滅するから、品質低下を起こしません。
みぎてはとりあえず思考のバックアップですね。何かあったらすぐに対応していただく感じで。鼻くそを今ほじくりたいようなので後でぶち殺しておきます。
まあ、正直モンスターというか一定の行動をする液体なので、あまり問題はなくさくっと準備は完了。魔法陣による大魔法の実行に移ります。
「いきまーすっす!」
ひゅおおおおおおお!
まずすんごい冷たい風がアメーバを大きく取り囲むようにして流れ出します! この時点で私が張った結界は邪魔なので解除。ひょおおお、風がこちらにも吹いてくるのですんげえ寒い。
んでもまあ、これでアメーバの表面が凍りました。これで動かなくなるわけです。あとは大魔法が温度を伝達して、ガンガン内部まで凍らせて終了。
一見やってることは私のいつもの行動と一緒。だから私だけでもできそうなんですが、一人でやるのは不可能ですねー。
まずアメーバを取り囲む魔法そのものの大きさ。そして一度風で動きを止めてから一気に凍らせるという2段構え構造。うん、無理。
みんなでパワーを合わせることでこの規模に対処できました。
この後はデカいんです君を専門の処理係さんが解体して、1つ残らず綺麗に移動させて終了。
ちゃーんと私達にもボーナスが支給されました。ぐふぐふぐふふ。
今借金もないし、何に使おうかなーって考えたのですが、レアスキルの中和を買って、Lv2にしました。
ジュエル屋で売りに出されていたんですわ。
今この国はめちゃくちゃスキルジュエルが高騰しているので買うかどうか迷ったのですが、レアスキルの中和が売っているってそうそうないので買っちまったぜHAHAHA。
さすがにこの事態が起きてすぐに原油採掘するのは危険があるということで、専門業者に頼んでアメーバの徹底除去をすることになったそうです。
暇になってしまったので、鉱山行ってきまーす。




