表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/43

第17話 地獄再び


「ど、どうも、祐一さんと日向さん。あは、あはは」


なんでロッキー山脈の中腹に彼らが突然出現したんですか……。


「なんでという顔をしているな。まあ、俺様だからな。神王国の莫大な資産を動かすことによってスキルジュエルを集め、Lvを10にすることくらい朝飯前だ」


「うそ……Lv5が最大値なはずじゃあ……」


「うふふ、だって祐一だもの。なんでもできるのよ」


「まあ俺様には神様が付いている。今までよく隠れられたな。さて、来てもらうか」


逃げたいんだけど、蛇に睨まれた蛙のごとく、身体が動かないです。なにかされてる……。


祐一は私の肩を掴むと、空間転移をして、私を連れ去ったのでした。ここまで逃げてきて……。


――――


「俺とヒナタの功績によって、罪人山咲牡丹は今諸君らの目の前にいる! これより、死よりも辛い刑罰をここで行う! 腕をはね、このステアミナ神王国首都シャーロックにある大ダンジョンへ追放する! 大ダンジョン最下層には『幸せになる不思議で奇妙な箱』という素晴らしい宝物が存在すると聞く。これをを持ち帰ってこれたならば、それは贖罪したとみなし解放してやろうではないか!」



骨の強化がLv3もあったおかげでアーロンダインとはいえ一度では切り飛ばせず、強力なスキルやのこぎりで何度も切りつけられて肘から先をはねられた私は、ヒナタの回復魔法によって即座に傷をふさがれて、大ダンジョンに送り込まされました。


呆然と歩いている途中、ヒナタが私の腕をはねた理由をこそっとつぶやきました。


「あなたが特異体質な理由を調べたくてぇ? なんかどうも? 祐一が【鑑定】したらぁ? あなたの手は特殊らしいじゃないのぉ? だからぁ、私たちがもらってぇ、もっと有効活用してあげるっていうかぁ?」


「……」


「……あと、貴様の美貌がくそむかつくんだよくそがぁ!」


蹴り飛ばされ、何度も踏みつけられたのですが、もうさすがにきついというか、なんというか。折れた、というか。

私があまりにも無防備にやられているのがご不満だったヒナタは、さらにボコボコにした後去っていきました。



ゴゴゴゴゴ



ユウイチ様の有難いアドバイスによると、このダンジョンは数階層ごとにセーフエリアがあってそこはモンスターが近寄らない安全なポイントだそうです。

1階層にさっそくセーフセリアがあったので、そこで数日ぼんやりと過ごしました。



だってむりげー。



肘先がないので棒も防具も扱えず、服は囚人服。魔法は使えるけど[りょうて]は持っていかれちゃった。手に書いてあった魔法陣が2人の居場所だもんね。



どうやらユウイチ様は私を観察できるらしく、何もしない私のところに空間転移してきて、〈動け〉という〈命令〉をかけて去っていきました。


前に進まないと、死なない程度の痛みが全身を駆け巡ります。これは……地獄以上の地獄です。



ゆっくりとゆっくりと前に進み3階層のセーフエリアで大休止。ここまで生きてこられたのは硬い骨によってかなり強靭な歯になったから、悪食でモンスターの骨まで全部噛み砕いて食べてこれたおかげです。もう人間じゃねえな。敵の名前もわからないのですが、光っているモンスターから光生成、暗闇から攻撃してくるモンスターから暗視のスキルを手に入れました。手入れされてないから灯りすらないんだよね。


もうほとんど生きた屍となって5階層まで下りたら、本当に生きた屍と出会いました。いや、そこまでしか【観察】も【看破】もできないんすわ。


生きた屍は、目がつぶされ口は縫い合わされ、腕と足が拘束されている巨人。この世界で初めて巨人に出会いました。


「……あなたも追放された口ですか?」


「んー……ん……」


「ああそうか、意志を表明できないのか。降りるところにいるので、可能ならどいてほしいんですけれども」


「んー……ん……」


「だめか……モンスターじゃないっぽいんですけど、ごめんなさい」


魔力塊を織り交ぜた風の刃。首を狙い撃ちして、殺しました。


殺した瞬間に罪スキルに巨人殺しが刻まれました。そっかー。


それと、巨人さんからスキルジュエルがドロップ。そう、モンスター以外にも、〈人はスキルジュエルをドロップする〉するんです。

……人ってモンスター?


巨人、つまり人だった故か、2個もスキルジュエルがドロップしました。一つは【信念】Lv2、一つは【強い心】のLv3ジュエル。ああ、持っていたスキルをランダムドロップするんですね。直接Lv2とLv3がドロップするなんて。まず信念を取り込んで、そのあと私の強い心Lv2と交換する形で強い心Lv3を取り込みました。





心が折れちゃ、だめだ。

心が折れちゃ、だめだ。

心が折れちゃ、だめだ。


私には信念がある。

私には信念が、ある!


こんなところで折れちゃだめだ! 私には信念があるんだ! 夢が、あるんだ!



強い心Lv3は心の強さを27倍増加させます。パール先生との鍛錬で心は様々な意味でとても強くなりました。

強くなった心を27倍増加させたんです。


その心が、現状に打ち勝ったようです。


この地獄を、乗り越える。


そして、わたしには旅を開始するころに決めた、ささやかな信念があります。


あいつらをぎゃふんといわせて、博士と対決、幸せを謳歌するんだ!

私には夢がある! I have a dream! キング牧師です!


悪いね、巨人。

ありがとう、巨人。




10階層までにはゴブリンやホブゴブリン、猪頭のオークなどが出てきたのであえて乱獲して、狙う、スマッシュ、突進を獲得。


武器は持っていませんが私には無茶苦茶【硬い骨】があります。【狙って】、【突進して】、残っている腕もしくは短いけどしっかり存在する足で【スマッシュ】。頭突きでもいいです。骨をぶち当てればそれはもう鈍器。短い棒。

魔法棒術の出番!


固い【信念】の前にはゴブリンなどの臭い肉なんてどうでもよいです。火で焼いて、悪食を利用して食べる食べる食べる。猪頭のオークはごちそうだ!


15階のセーフエリアに着くころには、ゴブリンや猪頭のオークは消えて緑色のオーク主体に。徒党を組むようになってきましたが、数が増えるということはスキルジュエルドロップを狙えるということでもあるわけで。

術師から【発射】スキルと【回復】スキルを手に入れました。前線戦士からは【はじき返す】、遊撃戦士からは【軽業】【運動】。ウハウハですね。


これで【発射】がLv2に。まさにカタカナ魔法のような飛び道具が放てるようになったと思います。ウォーターボール、ファイアボルト、ウィンドカッター、マジックボルト、などなど。

【回復】のおかげで、生傷を時間経過で修復していただけのひどい状況だった皮膚や抉れた傷跡を、綺麗に元に戻すことができました。Lv2なら腕が生えてくるかな。でもりょうてがいないんじゃな。

【はじき返す】は、うまく使えばクマの突進をはじき返してダメージゼロという、あのゲームの世界を再現できそうです。スゴイ!

【軽業】【運動】のおかげで相手をめくって後ろに回り込んだり、相手にもぐりこんで下から突くように足や腕を伸ばしたりなど、戦闘の幅が広がりました。サーカスに出演して暮らしていけそう、ふふっ。


と、ここで18階のセーフエリアに到達。ダンジョンが用意したのか、完全な宿屋になっていました。勿論無人ですけど……


かなりの消耗をしていましたし、ここに数日滞在して様々な面での回復を行いましょう。

戦士は常に戦える、されどそれには限度がある。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ