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検察という組織
護送車に乗り検察庁に向かう。
鉄格子付きの待合室とも今日でお別れだ。
もちろん検察官の取り調べも。
検察官室での最後の取り調べを受けるとき、面妖な検察官僚の忠臣である若い検察官の頬の硬直、眉に揺れ、頬の紅潮、わずかな変化も見逃さぬよう私は彼を観察していた。
「貴方が包丁を持って対峙した時、歩道橋にいた老人は警察とは無関係な民間人だったのですよ」
そう言った時、忠臣の目は宙を泳いでいた。
少なくとも確信に満ちた表情ではなかった。
真実を隠蔽するための苦し紛れの虚言。
検察という組織の卑劣さには心底、辟易する。




