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懲罰房
大将が言葉を続けます。
「以前、80歳ぐらいのおじいさんと同室になったことがあるんだよ。
留置場から出してもらいたくって認知症のフリをして、部屋の中で随分と騒ぎまわって。警察官も最初は『静かにして下さい』って、穏やかに言う程度だったんだけど、いつまでも騒ぎ続けるものだから最後は怒り出して
『やい。じじい。静かにしろ』って、爺さんを捕まえて懲罰房に連れて行ったことがあったなぁ。あざやかな手つきで軽々と爺さんを拘束していったよ」
「さっき、あの青年が言っていた暴れる人って、時々いるんですね。あざやかな手つきというのは、警察官は逮捕術を習っているからでしょう」
大将も独身で、両親はもう亡くなっているのだそうです。
「ああ、俺ももっと親孝行しておけばよかったなぁ」
大将は、自分の人生を振り返って盛んに反省している様子でした。口には出しませんでしたが、犯罪を犯してしまった事を悔やんでいたのだと思います。




