再会と旅立ち
「ハーティィィィィ〜」
ボブヘアの小さな女の子が、ハーティめがけて抱きついてきた。
「会いたかったよぉぉぉ、ハーティも寂しかった!?」
「メルル、おかえ…」
「そんなに寂しかったの!?そうよね、そうよねぇ!私も寂しかったわ!あぁハーティィィ!」
ぶんぶんと揺らされながら、発言を許してもらえない状態に、ハーティは早々に会話を諦めた。
「それくらいにしとかないと、ハーティ死んじゃうよー。」
スズが笑いながら近づいてきた。
「あ、スズ!元気だった!?」
「元気だよー。メルルも元気そうだね。ハーティも元気…だったんだけどな〜」
ふと横を見ると真っ青な顔をしたハーティが目に入る。
「あぁっハーティ!…ま、まさか、感動でめまいが……?」
「メルルは、ほんとにプラス思考だなー」
スズは感心しながら、ふらついてるハーティを支えた。
そこへ背の高いスラッとした青年が向かってくる。
「相変わらずメルルは賑やかだな。」
「キール!!」
3人が同時に叫ぶ。
ハーティが嬉しそうに声をかける。
「家に帰ってたのか?」
「あぁ。」
「愛しのお嫁ちゃんは元気だったのー?」
スズがニヤニヤ聞く。
「変な言い方するな。特に変わりなくだ。」
ハーティ、スズ、キールの3人は同世代ということもあって仲が良い。
ハーティとスズの2人は戦争で家族を失い、城に引き取られてきた。セスティアでは街で孤児を引き取り、城の兵士や世話役に育てることが多い。対してキールは普通に街で育ち、兵士を志願してやってきた。まだ18歳だが結婚もしている。
ちなみに、メルルもハーティ達と同じ境遇である。
「でも集まれたのは素直に喜べないな…」
キールは顔を曇らす。
皆が各地から戻ってきたのはハークの葬儀に参加するためだった。
「ほんとなんで急に…」
スズも黙り込んでしまう。
ユトのことはハーティと一部の上の人間しか知らない。他の者たちはラグバーツが急にテロ行為を起こしたのだと認識している。
「これじゃまた戦争になっちゃうよ…」
メルルはしょんぼりした顔で呟いた。
「ハーティ〜」
廊下からナルクスが呼んでいる。
「ちょっとおいで〜」
「ヴィラン様に今回のことをお話ししたくて。彼はお兄様と仲が良くて、騎士団長も務めていますし、きっと動いてくれます。」
「というわけで、リリアをそこへ連れてってあげてほしいんだ。あとこれも渡してほしい。」
ナルクスは書状を出してきた。
「これはラグバーツへ向けた正式な文書。ここには今回の事件とユトの存在について記載してある。事件の調査への協力体制を求めるってね。もちろん、戦争する気は無いってことも書いてあるよ。」
ハーティは書状を受け取りながら、口を開いた。
「了解です。でも、どうやって行くか。ダスティカ渓谷は彼女を連れては厳しすぎる。」
「フフフ、そんな君に助っ人登場〜♪」
ガチャっと開いた扉から入ってきたのは、銀色の大きな鹿だった。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
二人して小さな叫び声をあげる。
「初めましてだよね、彼はリョク。いつもはジン様のとこにいるんだけど、力を貸してくれるって。」
〈初めまして、諸君〉
「し、喋った…!?」
またも二人して声が被る。
「精霊の仲間だから話せるよ〜。」
〈二人を乗せていけばいいのだな〉
「はい、どうぞよろしくお願いします。」
〈承知した〉
あっけにとられてる二人にリョクが話しかける。
〈非常に早く走る故、振り落とされぬよう〉
その瞳は新緑のように美しく、少し怖さも感じる。
2人から視線を外したリョクは、悠然とした足取りで扉から出ていった。
固まっていた二人はハッと我に返り、その後姿を追いかけていった。