残酷な真実
ナルクスの部屋の窓がバンと開いた。
「ハーティ!い?あれ?女の子お持ち帰りできるようになったの?」
「ち・が・う!!」
「冗談だよ〜。お帰り。妹さんを見つけてきてくれたんだね。」
「彼女、変な奴らに捕まってた。」
そして起きたことを話すと、ナルクスは顔を暗くした。
「予想以上に危ないことになってるね。一体何者?ラグバーツの者ではなさそうだね。」
「あの…」
リリアが口を開いた。
「兄はどこにいるのですか?」
二人の顔が曇る。
「…………君のお兄さん、シュウ君は死んだよ。」
「え…??」
「落ち着いて聞いて。シュウ君は君を捕まえていた人達によって殺されたんだ。」
「!!!そ、そんな…そんな!嘘ですよね!?嘘ですよね!!?」
「嘘じゃない。そのペンダントはシュウ君のものだろう。」
「そうですけど、、でもそんな、だってお兄様は…」
彼女の瞳からは涙がこぼれ出した。信じたくない。この人達が嘘をついていたら?でもペンダントには見慣れたお兄様の文字…。
「もし君が確かめたいなら彼の死体を見せるよ。」
「先生…!」
思わず叫んだハーティを、ナルクスは手で制す。
「……お兄様はここにいるの?」
「あぁ、この城で死んだからね。シュウ君はハーク様に危害を加えたから、その場で処刑されたんだよ。」
「!!そんな…!お兄様がそんなことするわけない!!!」
「君のためでも?」
「!!」
「君を人質に取られていたんだ。仕方なくだ。シュウ君がそんなことする子じゃないのは僕もよく知ってる。」
「だったらなぜお兄様を殺したの!?どうして!?」
「理由はどうであれ、国の大事な人に危害を加えたことに変わりはない。これは国の防衛としては当たり前のことだよ。」
「…っ!でも!でもっ!!」
「落ち着いて。確かに殺したのはうちの者だ。でも憎むべきはそう差し向けた人間だろう。」
「うっ…、でもっ、うっ…うぅっ…」
「……………少し休みなさい。ハーティおいで。」
泣き続ける彼女を置いて部屋のドアを閉めた。
「先生、言い方キツイ。」
「キツくても事実を伝えなきゃ。それが彼女のためでもあるし、僕達のためでもあるんだ。」
「そうだけど…」
「でも確かにキツかったね。僕のダメなところだ。」
数時間がたった頃。
扉をノックする音が響く。
「少しいい?」
ガチャリと扉が開く。ハーティが覗き込むとリリアはソファに伏せていた。
「ハーブティー持ってきたんだけど、飲む…?」
彼女が顔をゆっくりあげる。泣き腫らしたであろう、その顔はハーティを虚ろな目で見つめる。
「ごめん、テーブルに置いとくから。もう少し休んで。」
ハーティはティーセットをテーブルに置くと外に出ようと立ち上がった。
「……………まって。」
消え入りそうな声で呼び止める。
「……私、どうなるの。私も殺されるの?」
「まさか!あんたもシュウさんも被害者だろ?こんなこと酷すぎる…。」
「…………。」
「俺達は、あんたには絶対に危害を加えない。そこは安心して。」
「………なぜ……お兄様が殺されなきゃいけなかったの…?あの人、ユトって名前のお医者様で、私を病気から助けてくれたって言ってた。お兄様は仕事に行くから、その間の面倒を見るように言われたって。……でも全部嘘だった…?あそこにいた時は優しくて話しやすくて…僕のことは二人目の兄だと思っていいよと言ってくれたのに…。」
「あんたを殺さなかったのには、きっと何か理由があるんだ。人質だけの理由なら、あんたの兄さんが役目を果たした時点で殺してるはず。しかも脅したりせずに優しくしてたということは、あんたに気に入ってもらうようにしてたってことだろ?」
「………私に気に入られる?」
「好きになった、とか…?」
「な…!」
「なんて、ま、それは本人にしかわかんないし。あ、そうだ、ねぇ、名前はリリアだっけ?リリアって呼んで大丈夫?」
「うん。あなたは…?」
「俺はハーティ。さっき話したのが、俺の先生のナルクス。あ、さっきはキツイ言い方して気にしてたよ、先生。」
「そう…なの?」
「いつもはもっと飄々としてるんだけどね。ハーク様は大事な国の三賢人だから、余裕なくなってるんだと思う。」
「ハーク様…昔1度だけ、お会いしたわ。お兄様に連れられてこの城に来たことがあって、その時とても優しくしてくれたわ。」昔を思い出すリリア。それはまだ幼かった頃。
『とても可愛いお姫様ですね。そんな貴方に忠誠の証を…』
『わぁ、キレイな花かんむり!ありがとう。』
『こら、リリア。ありがとうございますだろ?お姫様なんだから。』
『ふふ、お礼を言えるのは立派なお姫様ですよねぇ。』
そう言うとハークはその場に跪き、リリアの額に優しく口づけを落とした。
『貴方に素敵な幸せが訪れますように…』