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第1話 攻略キャラ

 俺が廊下を歩けば……。


「キャァ、アーサー様よ! アーサー様よ!」


ヒソヒソ声だが俺の耳に入るくらいの大きさのキラキラとした声が届く。


俺が立ち止まり視線を送れば……。


キャァアアア!!!


悲鳴と共に失神者が出る。


俺が……。

ああ、虚しい、もう止めよう。

俺は廊下でキョロキョロと辺りを見回した。


「何なんだぁあああ、この世界はよぉおおおおおお」


取り敢えず、大地に足を踏ん張り叫んでおいた。


「よし!」


また辺りを見回して、体勢を整える。

ふと右手の指が額を軽く押さえ、左手が右腕の肘を支え。足下を見ると、左足は半歩下がっていて、背筋を伸ばしポーズを決めている。


「だぁああああああ」


俺は少し膝を曲げて、両手をぶらりと下げて脱力した。いちいち、格好つけるんじゃねぇ~と、俺は思うのである。


「アーサー、そろそろ教室に入らないと、また教授に怒られちゃうよ」

「ああ、ルカ」

「ね、早くぅ~」

「急かさないでくれ」


俺に声を掛けて来たのはルカ。水色の髪はフワフワな軽い癖っ毛で、深い藍色の瞳と合っている、十七歳しては小柄でまるで弟のような……。そうだ、転生前に姉ちゃんが言っていたショタ系攻略キャラだと。


「おう、廊下で、何、いちゃついているんだ? 遠目から見ると、アーサーが可愛い女の子を口説いているみたいだぜ?」

「何を言うんだ、リカルド。女子を口説くのはお前の得意分野だろ?」

「抜かせアーサー。まったく、俺よりモテる癖に」

「フッ」


俺はリカルドの言葉に口元から零れる笑みと吐息で答える。


「俺にその甘い微笑みは通じないぞ」

「そんなつもりはねぇよ」

「ハッハハハハ」


俺が口悪く答えると豪快に笑うこいつは、リカルドと言う。真っ赤な髪に鳶色の瞳、俺よりも背が高く188センチもあり筋肉質でがたいが良い。こいつはジュエル王国の公爵家の次男だ。姉ちゃんの話では脳筋系攻略キャラらしい。


「廊下で二人で何を話しているんですか? もうじき授業ですよ?」

「二人? あれ、ルカのやついつの間に……」

「そういえば、そうだな」

「何を二人して……、ボケるのも大概にして下さいね」

「ようようアーク、今日は風当たりが強いな、アーサーにまた実力テストで一位を取られたからか?」

「いえ、そのようなことは微塵も思っていませんよ、私は二位はキープしていますから」

「ハッハハハ、男が二位で満足かよ? お勉強しか出来ないアークちゃん」

「満足も何も、学園のテストなどそこそこで良いんですよ。それよりリカルドはもう少し勉強した方が良いですよ」

「それはそうだな、また、俺とアークで、リカルドが赤点を取ったら勉強を見ないといけないしな」

「ぐっ」


眼鏡を指で押し上げて言うアーク。黒髪に眼鏡の奥は水色の澄んだ綺麗な瞳をしている。これは眼鏡を外せば、超美形というやつか? 勉学は出来るが、実は剣術も得意だ。アークの二刀流は、俺の大剣に対して間合いに入ってこられたら毎度さばくのに苦労をする。姉ちゃん情報だと、眼鏡系攻略キャラだそうだ。


ルカ、リカルド、アーク、それからもう一人いるんだが……、奴はなかなか授業にも出て来ない。まあ、俺たちは何のかんのと言っても仲がいい。


あ、気が付いてくれたか? 転生した俺。姉ちゃん情報に寄ると、王道系攻略キャラだそうだ。アンケートや人気投票でも常に堂々の一位。まあ、ついでだ、俺の紹介もしておこう。俺の髪は金髪で肩に掛かるくらい、目は碧眼だ。背は高い方で186センチあり、細マッチョだな、うん。俺としてはもう少し筋肉が欲しいというかだな、厚い胸板が欲しいものだが……、何せここは乙女ゲームの世界だ! マッチョがいるわけもなくだなぁ~。まあいいか。

そして、文武両道。さっきリカルドが言っていたが常に成績はトップだ。そして、剣術は、大剣を使いだな。あ、一応、出番は余りないが、片手持ちの伝説の剣エクスカリバーも持っている。まあ、常に共にあるのは俺のエクスカリバーだがな! はっはははは、ゲフンゲフン。


「さて、行きますよ。アーサー、リカルド」

「ああ」

「おう」


俺たちは教室に入る。


キャァ。


小さく声が上がり、俺は、


「皆、おはよう」


爽やかに挨拶をする。


キャアア。


「アーサー様、おはようございます」

「アーサー様、ご機嫌麗しゅう」

「アーサー様、素敵!」

「アーサー様、格好いい!」

「アーサー様ぁ~……」


皆が挨拶を返して来る。


リカルドが挨拶すれば、キャァキャァと言い、アークが挨拶をすれば、今日もクールで素敵と言い、ルカが挨拶をすれば、可愛いぃ~と言い。嵐のように女子たちの声が飛んで来る。

そして、ヒロインのアンジェリールを見付けた俺は……、吸い寄せらるように彼女の元へ行き、


「アンジェリール、おはよう」

「アーサー様、おはようございます」

「ああ、アン。君の隣の席は予約が入っているのかな?」

「アーサー様、予約だなんてそんな……」

「フフッ、可愛らしい君の隣の席だ。俺は確かめずにはいられないよ」

「アーサー様、可愛らしいだなんてそんな……」

「フッ、アン」

「アーサー様?」


止めてくれぇえええええ。俺の口、黙れ黙れ黙れっ。


「あ~、そこの席ぃー(棒)、もう授業始めるんでー静かにせんかぁ~」


いつの間にか、教授が教壇に立っていた。


「アーサー様、アンは恥ずかしいです」


こっそりと言う、アンジェリール。


「すまない、俺のせいだ。可愛いアンジェリール」


俺の口は……、まだ言うか! この口はこの口はこの口はっ。


「あ~、アーサー、後で職員室に来なさいぃ~(棒)」


棒読みな教授の言葉に、


「あ……」


しまったと思った俺の口は、やっと閉じたのであった。

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