第17話 秘密の部屋で
俺は理事長室の続きにある部屋に居る。爺たちは、執務室よ。なんていうけどよ、理事長室からしか入れない執務室なんて……、隠し部屋じゃねぇえええかぁあ……、なあ?
「アーサー、地図とリストは、ザクリで良いから頭に入ったかしら?」
「ああ」
「では、お隣の部屋に移動しましょうか?」
「またあの部屋か? 誰かが、理事長室に用があって、来たらどうすんだぁ?」
「野暮なことを聞くのねぇ~、今日は金曜の……もう、午後六時過ぎでしょう? そうね、生徒は好き好んで来るかしら? それに『花と宝石の祭典』を来月に控えているの、皆、忙しくて爺の相手どころじゃないわ」
「それもそうか……」
「それとも、アーサー、何か気になることでも?」
「ああ、窓から漏れる光りがな……、ちょっと」
「まあいいわ、来なさい」
「ああ」
てな感じで、この窓もねぇ~密室に爺と籠もる羽目になる。
「フィン、弟よ。アーサーが窓から漏れる光りが気になると言うんだ、影武者でも理事長室には置いておいた方がいいんじゃないか。人の気配があると見せ掛けた方がいい」
「それもそうね、じゃ、人形を発動させておきましょう」
そう言うと、爺、ああ理事長は、手の平に乗るくらいの人形に召喚符を貼った。そして、
「我、身代わりを召喚する、君はファンデル、君はフィンネル、君はアーサーだ」
と言いながら、召喚符を貼った人形を床に置いていく。
すると、人形たちはムクムクと上に向かって伸びて大きくなって行き数秒で等身大の人間となった。
「いつ見てもすげ~なぁあ、この人形」
「あら、アーサー、欲しい? 身代わりになるわよ?」
「あ、いや、今はいらねぇえよ」
「そう、では部屋を移動しましょう」
「ああ、あ、ちょっと、カーテンを閉めて置くよ」
「あらあら、フフッ」
爺が不適に笑う。そして、爺が本棚の本を一冊抜くと、扉が開くように本棚が内側へと開いていった。
「やあ、アーサー」
「グッ」
ここにも隠し球が居やがったかったかっ!!! 俺はそっぽを向く。がぁああああ……。
「やだなぁ~アーサーァアア~連れないなぁあ」
「こんな所で何をなさっているんで? フェリックス国王」
「やだなぁ~フェリちゃんでいいよぉお」
「フェ、フェリちゃん、こんな所で何をしているのかな?」
俺は、やっぱり爺の息子だぁああとか、思いつつも聞いてやる。
「僕が居るってことはぁ~、件の重大さが解るよね?」
「ああ」
ああ、やべぇ~わ……。これ、相当だわ……。そんなことを思いながら、俺は顔をしかめてやった。
「今年に入ってからファブロ迷宮に向かった、討伐部隊、探索部隊は数知れず……。死者154名、行方不明者537名を出しているのは、渡したリストを見てくれたから分かるよね?」
「フェリちゃん、そんな短時間で全部は把握仕切れねぇよ」
「嘘仰い、アーサー」
「チッ」
流石、ゲーム世界の一番人気のキャラだ。転生したこのキャラ、アーサーは優秀だ。チート過ぎんだろ? と思うが、リストと地図を大体は数十分で把握していた。
「それで、どう見る? アーサー」
「ああ、色々と洗い出しはしたな」
「ええ」
「どうせ、俺ぇえ、潜るんだろ? この迷宮によ」
「そうだね、アーサー」
「事務方と実行部隊と、人手くれんのか?」
「そうね、実行部隊と通信役に一人かな」
「そうか」
それだけ、秘密裏に動きたいのか……。そんなことも考えながら、一呼吸置いてから……、
「実行部隊は、身軽な奴にしてくれ」
俺がそう言うと、爺たちと王は頷いた。
「じゃぁ、サッサと話しを詰めるぞ? なあ、フェリちゃん、実行部隊も連れて来てんだろ?」
「何のことかな?」
「ふむ。息子よ、恍けるのが下手だなあ、お前が実行部隊と通信役一人と言い切った時点で、アーサーは、実行部隊を連れ来ていると思っているよ」
「あ~、そうか! 私としたことが~」
「兄さん、フェリちゃんを虐めないのぉ~。いつまでも構うと王として育たないわよ?」
「ふむ、フィン、我はつい心配でなぁ~。子離れしていないのか、我は?」
「いえ、兄さんは暇なのよ」
「そうか……」
シュンとする陛下であった。
さて、俺は帰ろうか。なぁんてな、それが出来たら良いんだが……。
「なぁ~、フェリちゃんの後ろに、もう揃っているな? 実行部隊だろ?」
「え? いつの間に! まだ、入って来たら駄目じゃないかぁあ」
「あ、いや、もう、アーサー様にはバレておりますので、その、フェ、フェリちゃん」
プッ。屈強そうな男がフェリちゃんと言った。そうか、このところ構わず皆にフェリちゃんと呼ばせているんだなぁあ。まあ、距離を縮めようとしてくれる国王の優しさなのだろうが……。こんな気遣い方をする国王じゃなかったのだが……。内輪だけの呼び名だったフェリちゃんは、今では王の周りに居る者へと広がり……、それだけ親しみを込めて即距離を縮めて言いたいことが言える仲に早々になる必要があるのか……。それとも送り出す者への哀悼なのか……。
「なあ、何故もっと早く俺を使わなかった? 負念の魔物狩りは俺の収入源だ」
「アーサー、それを爺たちに言わせないでよ」
俺の口を突いて出てしまった言葉の意図を汲んで、爺……理事長が言った。
多分、ここまで被害を出したにも関わらず、今のファブロ迷宮は、謎が多いのだろう。それゆえ、王太子の俺を気遣ってくれたんだな……。
「そろそろ、始めるとするか、レクサム様、よろしくお願いします」
「いやいや、アーサー様、その、レクサム様は止めてくれ、あ、いや、下さい」
「ムッ、そっちから、アーサー様などと言い始めたじゃぁああ、ありませんか? 私と貴殿とは魔物狩りで何回ご一緒したことか……ウウウッ」
「あ~もぉ~、アーサー! 今回も頼むぞ」
「おう、レクサム。それに顔なじみの面々が揃っているな、様はよしてくれよ?」
「全く、相変わらず、口の悪い王太子様だなぁ~」
「フフフッ」
俺たちは、窓の無い部屋で作戦会議と洒落込んだ。




