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第15話 アーサー呼び出しを食らう

 『ああ、春だねぇええ』と、俺はテーブルに頬杖を付いて正面の窓の景色をうっとりと見ている。そろそろ夕暮れ時だ。オレンジ色の飴玉みたいな夕陽が沈んで行く。さてと、俺は、


「あ~~~えっと、これで上手い飯が食えるな!」


いつもの格好付けの言葉は出ずに、ただ、皆の顔を見て言った。

皆は、なんだか照れくさそうだ。俺だってそうだ。


グレタとアークの方に目をやると、お約束のように二人共、もじもじとしている。

ちくしょうぉおおお。初々しいねぇえええ、お二人さんっとくらぁああ。


そんなこんなで、後はディナーまでまったりとしている俺たちだが、俺と同じく外の夕陽を眺めていたアンジェリールが、


「アーサー様、私とグレタは、パウダールームに行って参りますわね」


そう言った。すると、隣の席に座っている、リカルドとアークがスッと立ち上がり、アンジェリールとグレタの椅子を引いてやる。

俺は、紳士だねぇえ~などと心の中で茶々を入れながら、


「ごゆっくり、お嬢様方」


と、姿勢を正し微笑んで言った。


「はい」


優しい声でゆっくりと返事をするアンジェリール。その声は、なんだか耳障りが良い。


二人が席を外すと、一気にだらける野郎ども。


「あ~よぉ~、俺、どっと疲れたぁ~」


というのは、リカルドで、


「僕は、ハラハラしましたよ? アーク!」

「あ、僕はその……」


ルカの言葉に上手いこと返答出来ずにいるアーク。まあ、好きな女の子に一大決心で告白したんだ。しゃぁ~ねぇ~か? フフッ。俺は寛大なのである。なぁ~て言いながら、


「アーク、その、良かったな」


俺はアークをからかってやろうと思っていたんだが……、口から勝手に言葉が出て、


「ご迷惑掛けましたね、アーサー。皆にもその、ご迷惑を掛けました」


席から立ち、頭を下げるアーク。皆、照れくさいのか、視線を合わせない。そんな中、視線をそらせたままで、


「いいんじゃねぇの?」


ボソリとジェイドが言う。照れくさそうにするアーク。

それきり、俺たちの会話は途切れて……。まあ、野郎同士なんてこんなもんだ。なので、俺は沈む夕陽を堪能することにした。



 夕陽の頭がそろそろ沈みきる頃、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。俺は、


「入ってくれ」


そう言った。すると、シャルレが俺の側まで来て、


『スコット様が御越しになられております』と、小声で言った。俺も『わかった、直ぐに行く』と、返し『ロビーで御待ちです』と告げシャルレは下がり部屋を出た。


「皆、すまない。執事のスコットがロビーに来ているようだ。ちょっと行って来る、ディナーはそろそろ来るだろう。皆で先に楽しんで欲しい」

「そうなのか? わかったよ、アーサー」


すぐに返事を返してくれたリカルドに、頼むと、目で合図をすると伝わったらしいのかニパッと笑って見せた。


俺は部屋を後にしてロビーに向かうと、そこにはスコットが待っていて、俺の顔を見るなり歩み寄って来て、


「アーサー坊ちゃん、その、早速ですみません、理事長がお呼びなのですが……」

「あ、あのね? もう、坊ちゃんは止めて? ね?」


俺はつい、いつもの調子で言ってしまった。スコットはそれでもめげずに?


「あ、いや、アーサー坊ちゃん、これはスコットめの感でございますが、嫌な予感がするのですよ! 坊ちゃん!!!」

「あ。いや、あのね?」

「何です、アーサー坊ちゃん」

「フッ……、ス、スコット、話しを続けて」

「はいはい、ついさっき、寮に使いが来たのですよ、私めはまた、坊ちゃんの本日のディナーが変更になったのか、そのようなことを考えておりましたが……。理事長の使いだと仰られて、至急、アーサー様に理事長室に着て貰ってくれと……。そう申されても、坊ちゃんにも予定がございますので、急ぎでしたら明日の土曜日に。そうでないのなら月曜日に伺います。と申し上げたのですが……、あちら、一歩も引かず……。至急、理事長室に着て貰って欲しいと……、その一点張りでして……」

「こんな時間にか?」

「はい」


何やら不穏な雰囲気で言う執事のスコットに、どう返事をしたものか俺は少し考えて、


「わかった、俺、兎に角行って来るよ。スコット、弟たちのことを頼む。ああ、それから、ここで弟たちとスコット、アリアの土産を受け取ってくれないか。弟たちが、夕食後に欲しがったら少しだけ菓子は食べさせてやってくれ。ああ、そうそう、新作の紅茶が出たそうだ、ベイビーブルーローズティと言うらしい、アリアも喜びそうなお茶だったよ」

「左様ですか、承知致しました。理事長室には、学園の正面玄関を開けておくとのことでした」

「わかった。では頼むよ、スコット」

「はい、坊ちゃん、お気を付けていってらっしゃいませ」


俺は、何となくスコットの話に不安を感じたので……、ああ、不安といってもなんてぇ~かな? カフェの個室に居る皆と、飯が食えないんじゃねぇえかという不安だ。それでだ、フロントに居るシャルレに急用でディナーを一緒に食えそうにないことを皆に伝えてくれと頼んだ。

まあ、でもよ、スコットの’私めの感’てのもよ、これがなぁああ、よぉお~~~く当たるんだよなぁ~……ブツブツ。


まあ、そんなことも言ってられねぇ~ので、おれはカフェから同じ敷地内の講義棟に向かった。講義棟の正面玄関を入ると、右に進んだ所に理事長室がある。


俺はノックをする。


「ああ、アーサーくんか?」

「はい、理事長」

「入りたまえ」

「失礼します」


俺は、理事長室の扉を開けると、


「やい、爺ーーーーー、こんな時間に呼び出しやがって! どうせ、碌でもない話しだろ?」

「理事長を爺呼ばわりとはけしからんな、アーサーくん」

「帰るぞ」

「あ、待って待って、爺が悪うございました!」

「ふむ。で? 用件は……」

「早速、良いのかな?」

「で? 用件は?!」

「はいはい、もうぉ、ファブロ迷宮の事なんだけどね」

「帰る」

「待って待って!!!」



おい、これぇえええてぇええ。俺、とんでもねぇええ、地雷を踏んだんじゃねぇえのか? おい……。チッ、帰るか……。俺は本気でそう思ったが……、爺の顔を見ると、帰れそうにもなかった……。

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