プロローグ
ウォオオオオオオ!!!
「なんてこったぁああああ!!!
ここはつるペタぺったんしかいないじゃないかぁあああ!!!
俺の巨乳ちゃんはどこだぁあああ!!!」
俺は学園の廊下で叫ぶ。どこかの戦闘民族が大地に足を踏ん張りエネルギーを集めるように。まあ、俺の場合はストレス発散なんだがな。そしてこの雄叫び? は、最近、日課になってしまった。
そんな俺を非難する者は最早いない。
いつものことと遠巻きにクスクスと笑いながら皆去って行く。
「ほっ。ああ、やれやれ。今日も気が済んだ」
俺の名前は、アーサー・フィン・アルラス。まあ略しての名だがな。なんせ、王族は名前が長い。俺はアルラス王国の第二王太子で、今、ジュエル王国に留学中なのだ。
そして俺の国。国王の命令は、ジュエル王国の姫君、一人娘のアンジェリール・ジュエルを落とすこと(惚れさせて結婚)。
ジュエル王国はその名の通り宝石の国だ。天然石から人工石までその所有や製造は世界一。それだけでもすごい国なんだが、人工石を使った製造品がこれまた絶品。どこの国もこのジュエル王国と懇意にしたがる。
その国がぁ~だ。世継ぎが生まれず、やっと授かったのが姫だった。そしてジュエル王国の国王が、アンジェリール姫が十六歳になった日、全世界に向けて婿を募集した。そのお陰で、俺のような第二、第三の王太子は、姫の通う学園に放り込まれた。というわけだ(やってられねぇ~)。
俺の国も俺だけじゃない。アルラス王国の王と王妃は子沢山なため、中等部には年子の弟が二人、留学中である。
なにせ俺の国は貧乏だ。鉄鋼が盛んなのだが、地味な作業が多いためか、年々職人が減っている。そのため、そこそこの国土と鉄鋼に必要な材料にも恵まれているにも関わらず、国の産業が振るわない。
そんな中、今回のジュエル王国の婿募集の話しだ! 人工石を使った産業と鉄鋼の技術が加われば最強なんじゃねぇ?! と考えた我が国は……、というかだな、王と王妃、兄上、姉君らがだな、幼気な弟たちをジュエル王国の王立学園に放り込んだというわけだ。
なに? よくある話しだって? まあな、そうかもしれねぇ~な(笑)。
あ゛? 冒頭の雄叫びは何だって? ああ、よくぞ聞いてくれた! 褒めてやるよ。それはな、それはなぁーーーーー!!!
俺がリアルの世界で、弟を庇って死んじまったら、転生して『ジュエル・I LOVE・アンジェリール』という乙女ゲームの世界にだなぁーーーーー、生まれ、生まれ、生まれ変わってぇーーー、くぅ~、転生しちまったからなんだよぉおおお!!!
どうだ? 衝撃の展開だろう?
なんで俺が? 乙女ゲームなんだ!
なんでギャルゲーじゃないんだ!
なんで巨乳ハーレムじゃないのか?
なんでこの王立学園には、つるペタぺったんしか、いねぇ~ンだ!!!
「ちくしょうぉおおお」
「アーサー様、今日もお元気ですのね。アンは嬉しゅう御座います」
「姫、愛らしいアン。おはよう」
俺は、壁ドンをしながら、アンジェリール・ジュエルに朝の挨拶をする。
(止めてくれーーー、なんだ! この台詞は! 壁ドンとか、まじありえね~からっ!)
「アーサー様、また、今日もお叫びになっておりましたが、何時、その言葉の意味をアンに教えて下さいますの?」
「フッ、アンが大人になったらね」
俺は、壁ドンから彼女を解放しながらいう。
(なんだぁーーー、こいつはぁ~~~、妙にかっこつけんなぁ~~~)
体が勝手に動く、乙女ゲーム仕様の体が俺は憎い!!!
「まあ、アーサー様たら」
「フフッ」
俺は心の中で泣いた。
まあ、そんな俺の物語が始まったというわけだ。