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第3回 ツンデレっ娘

「よっ!ツンデレ!」

 いきなりそんなふうに呼んできたのは、友達の宮本彩香だった。ひなたは一瞬何を言われているのかわからなくて何も言い返せなかった。

「聞いたぞ〜。95回目の告白されたんだって?」

「は、はぁ」


 あくまでも平静を装おうとするひなたに対して、彩香はにやっと笑う。なんだか嫌な予感がしてきた。彼女とは小学生のときからのつきあいだが、この顔をするときはろくなことを考えていない。

「ひなたはツンデレだもんね。そういうところがかわいいんだけど」

「意味わかんないよ」

「ほんとは告られるたびにめちゃめちゃ緊張してるくせに。いっつもなんてことない顔してるよね〜」


 だってあんなに堂々とされてこっちまで恥ずかしくなる。あんなふうにされたら、誰だって照れるに決まっている。

「川口君ってルックスもいいじゃん。なんでつきあわないのさ」

「・・・・・・」

 つきあうなんて考えたこともない。もごもごと口ごもっていると、彩香が小声で何かを言おうとしてくる。


「どうしたの?」

「ちょっとウワサで聞いたんだけど、川口君ってウチの生徒会長となんかあるらしいよ」

 急にトーンの低くなった声に、思わずひなたは唾を飲みこんだ。


 生徒会長、たまに全校集会や体育祭のときなどで生徒の代表として話すところを見たことがあるが、確か女だったような気がする。

「もしかしたら昔つきあってたのかもよ〜」

「べっ別に・・・私には関係ないし」


 とか言いながらも、少しだけ気になっている自分にひなたは気づいていた。


            ◇


「あっ!浅月さん!」

 人一倍陽気なこの声はひなたの知る限り1人しかいない。振り返ると、川口諒が屈託のない笑顔で向かい側の校舎の窓から声をかけてきている。なんだってそんな所からでも声をかけてくるのだろうか。

「37秒でそっちに行く!」


 そして、腕時計で確認して39秒後に彼は現れた。

「――2秒オーバー」

「うっそ・・・!あのとき階段でコケなきゃ絶対間に合ったのに・・・」

 ぜぇぜぇと息をつく川口の姿はどこから見てもおじいさんだった。


「今生徒会室にいたんだ。窓の見たら浅月さんが見えて思わず声かけちゃった!」

 生徒会・・・その言葉にひなたはどきっとした。

「・・・生徒会の仕事してたんでしょ?抜け出していいの?」

「浅月さん心配してくれてるの!?ありがとー!」


 いや、そういうことを言っているわけじゃないんだけど・・・と思っていると、突然制服の上から腕を握られた。

「へっ?」

「来て!生徒会室においでよ!」

 なぜか強引に生徒会室に連れて行かれることになる。


            ◇


 扉を開けると、そこにはしんと静まり返った静寂が広がっていた。しかし、明るい空間で、ひなたが持っていた印象とはだいぶ異なっていた。

「今は誰もいないや。遠慮することなくどっしり構えててね」

 そう言って、川口は慣れた手つきでお茶を入れる(そもそもなんで生徒会室に台所があるんだろうか)。


 しかし、生徒会室に関係のない自分がいるのはなんだか落ち着かないことだった。

「ぜーんぜんオッケー!ほんとにくつろいじゃっていいよ!」

 でも座るわけにもいかず、ひなたは台所で何かを探している川口のもとへ行く。

「手伝う」

 そう言って、ポットに入ったお湯をカップの中に入れようとした。


「あ・・待って!」

 川口の静止は少し遅かった。気がついたらポットから出た熱湯がもろに手にかかってしまったのだ。

「あっつ・・・!」

「早く冷やさないと!」

 ひなたの左手を引っ張り、慌てて水道水をかける。びりびりと痛むが、冷たい水で少しだけ楽になってきたような気がした。


「・・・・・もう大丈夫」

「このポットもうかなり古いもので・・・変なところからお湯が出てくるんだ・・・・・ごめん、俺が言わなかったから」

 川口は本当に申し訳なさそうな表情でひなたの左手を手にとって見つめる。最初こそ意識していなかったが、しだいにその体勢が気になってしまった。


「―――別に。勝手に手を出した私のせいだし」

 ふなたはぷいっとそっぽを向くことしかできなかった。


 ―――びっくりした・・・

やけにハイスピードでした。

以後気をつけます…

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