第15回 100回目の告白
生徒会室の扉を開ける。後で思えばノックの1つでもすればよかったと後悔したが、室内には川口と男性教諭の姿があった。
2人とまともに目が合い、やばいと直感で感じ、
「失礼しました!」
何か言われる前にひなたはぴしゃっとドアを閉めた。自分でも驚くほど早業だと思う。
「大丈夫だよ。特に大事な用事があったわけじゃないから」
くすくすと笑って男性教諭が出てくる。眼鏡をかけた優しい先生で、確か名前は板倉といっただろうか。
「あ、いえ・・・私は生徒会の人間じゃないので・・・」
「でも何か用事があったんでしょ?先生はもう済んだから中に入るといいよ」
そう言って先生は立ち去っていく。中途半端に半開きにされたドアから得体の知れないオーラが出ているような気がした。
しばらくドアを見つめる。ここからだと中は見えない。
やがてそこから覗く1つの顔があった。
「・・・浅月さん?」
「――――」
頭がぐるぐるする。そういえば何を言えばいいのか考えていなかった。どうしよう、どうしよう・・・
「そんな所に立ってないで、中に入りなよ」
とにかく、言わなきゃ。ごめんって?違う。でも、謝らなきゃいけないのは確かだ。こないだ謝ってなんて言われたんだっけ?えっと・・・えっと。
ドア付近に立つ。そこから入ってこようとしないひなたに、川口が不思議そうに見てくる。
「浅月さん?」
「―――怒ってるよね・・・・・」
ひなたの口から出た言葉はそれだった。他に何も思い浮かばなかった。
川口はしばらく何も言わずにいたが、やがてドアを閉めにこっちにやって来た。そして、ドアを閉めるとようやく口を開いた。
「俺・・・お祭りの日、あんな態度とっちゃってごめん。せっかくの花火が全然見れなくて・・・・」
「そんなの、私がひどいこと言ったからじゃん・・・」
「俺はその前からずっと浅月さんに迷惑ばっかりかけてたから・・・これ以上嫌われたくないよ」
ぶんぶんとひなたは首を振る。
「私のこと・・・・好きなんじゃないの・・・?」
自意識過剰と言っていた有奈の言葉を思い出した。これもそうなのかもしれない。だけど、出た言葉を撤回することはできない。
「うん」
川口はしっかりと頷いたが、真剣な表情がやがて驚愕の色に変わる。
「やっべぇ・・・!言っちゃったよ!」
「何を!?」
「好きだって言っちゃったよ!やべーよ!もう終わりだぁぁぁ・・・・・」
そんなの前から言っているじゃんと言いそうになった。だけど、あることを思い出した。
――100回告白してふられたらあきらめる・・・
もしかして、今ので100回目になったんじゃないだろうか。
「川口君」
「言わないで!ノー!聞きたくない!」
「聞いてよ」
「無理無理無理!きーこーえーなーい!」
「―――好きなの!」
時が止まった、ように感じられた。あれほど騒いでいた川口が息を呑むのがわかった。
ひなたは言った。自分の気持ちを。最初からこれを言えばよかったのだ。
「嘘だ」
川口の開口一番がこれってどうだろうか。
「ありえない・・・ありえないよ」
「・・・・そうかも。ありえないね。じゃっ」
「待ってよ!もう1回言ってよ!」
立ち去ろうとするひなたの腕をぐいっとつかんで離さない。その途端に顔が赤くなるのを感じてしまい、今川口のほうには向きたくなかった。
「川口君と違って、何回も言えるわけじゃないって」
「・・・・・マジ?」
何に対してマジなのかわからなかったが、ひなたはこくんと頷く。
「えっ・・・じゃぁ、俺とつきあってもいいってこと・・・なの?」
少し間を置いてからひなたは頷く。その瞬間、がんっと大きな音がした。振り返ると、弁慶の泣き所を押さえてうずくまっている川口がいる。どうやら何かの拍子に、足をぶつけてしまったらしい。
「・・・痛そう」
「いっ・・痛い・・・・でも夢じゃない」
痛みを我慢しながらもにこにこと微笑む川口に、なんだか笑えてきてしまった。
◇
今、ここに1組のカップルが誕生した。
ローテンションで根暗な彼女と、ハイテンションでお調子者の彼氏という凸凹コンビだった。
題名が昔のドラマの名前と似ているような気がしますね。
内容は全然違いますけど……;;
ようやくくっつきました。まだ続く予定なのでよろしくお願いします。