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伝承と舞  作者: ふしきの
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ものがたりのへんか 神こもり島と貍とにょ人

 貍が一匹おりました。

 供物はとちのみやドングリでそれもまた流れ着いたりした虫食いでありました。

島の奥に毎日毎日届けることを好きでやっておりましたが

「かみさま、付け届けしているからにはどうかわたしにご褒美などくださりませぬか」

 と、言い出したのです。

 そしてお下がりの実を食べては、片付けささと、おてんとうの当たる島の頭に行くのです。


 暴風の日が何日も続きそれから凪ぎの日が続いたある日のこと。

 貍は三つの箱をかみさまの前に並べました。

「どうか供物をお納めくださりませ。そして褒美をくださいませ」

 箱のひとつは反物が濡れることもなく油紙に包まれ入っておりました。

 もうひとつの箱には綿紙に金糸や銀糸が入っておりましたが、濡れて腐っておりました。

 そうして最後の大きな箱には白い娘が入っておりました。娘はかすかに息をしてはいましたが死に行くさまでした。

「いや、こ、これは贄ではございませんよ。わしのよめごにしたいのです」

 かみは湧き水の方へゆびを指しました。

「手を洗えと?ああ、そうですか、わかりましたぞ、水?水ですな」

 汲み水を娘に浸すと娘は半目開きました。

 それでも枯れたような血色は戻りませんでした。

 その時でした。

「供物は貍でよかろうかや」

 と、流れた男が銛でいって殺したのです。

 流れる血は娘の朱よりも赤かったといいます。


「かみもりよ、かみこもりの島よ。見ておれわしとこのやつの子を宿せ。カミハラミノ島よ」


「お前は?」

 死地へ向かうべき境地にある刹那の問いにすら娘は選べませんでした。

 かみは理解されました憶測な不確定なことを省略をもされました。

 かみとはそういうものでござります。


 娘の短い生涯を聞くことはありませんでした。

 男の生き死にはここにおわせられるかみだけが知っておられるだけでよいのです。

 毛づやの悪い貍の皮を膝において暖をとっているような姿の息絶えたおなごを子供は見ていました。やがて冷たいおなごを置いて子供は立ち去り、日を浴び、ものことを風の流れの言葉に教わりました。

 子供が「乳がでなくなった」と言えば、神は流れ着いたここやしの実の位置を指し示すだけです。子供は矢尻で穴を開けることをまず覚えました。

 鳥を見つめ、

「わたしの父は誰なのですか」

 と聞けば神が泣くので子供は二度と聞くことはありませんでした。

 やがて子供は船を作り島から出ていくと島は渦潮の荒波で姿を消してしまわれました。

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