表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝承と舞  作者: ふしきの
1/4

ものがたりのおこり にょいん窟の淵かみさま

今のところここまでで終了です。 古い日本語はかな文字やひらがなで書きました。 内容はおとぎ話です。

2018年11月15日 16:00 更新

 轍には壊れた木材と車輪が散らばっています。

 折れた草は棺がひきずられたあとだけが残っています。

 やがてそこは苔の柔らかな足跡と二本線の石棺があるだけです。



「あにま(神)我々の祖先よりたたりし神よどうかお出になってください」

 その小汚ない男に答えるものがおられます。

「わしならとうに出ておるわ」

「ああ、にょいん窟のどこにおられるのか私にはわかりませぬ。だが、おわすことはわかります。どうかどうか御無礼をお許しくださいませ」

「お前たちの無礼はいつも唐突に来る。刹しても良いがわしはお前のそれに興味がある。申しを許そう」


 いちまいは一生涯困らぬ衣服。

 そしていちまいは、鏡、櫛、穂先の柄、化粧道具。

 そして最後は。

「我が(ヌヒ)の棺にございます」

「死人は女人禁制ではないと思い連れて来たのか」

「あにまよ、どうか誤解を招いてしまって申し訳ございません。わが妹子、わが妻はやはり死んでしまったのでしょうか」

「石に丁寧に埋葬されておるがな」

「私には見ることができませぬ。蓋を開けることができませぬ。装飾を施し丁寧に埋葬されたと聞き及んでもなお、わたくしの耳には届きませんでした。ある日別のヌヒが石に水漏れが出ているといいに来てもなお……私は妻に近づく盗人を殺すことしか頭にありませんでした」

「ほぉ」

 たしかに斜めになった石棺から水の裂け目のような漏れが見えます。

 たぶんと言わず装飾品の飾り釉薬は溶けているだろうに。

「あにまよ。どうかわたしに力をくださいませ。わたしに勇気をくださいませ。わたしはただ、ただ、いとおしい恋ひとと一緒に墓に入りたいのです」

「お前なら立派な円墳墓がたつであろう」

「生涯を妻と別れてすごし死してなおひとりはつろうございます。ただ、ただ、これが本物の妻であるかないかが怖いのです」

 男はあにまに、長いこと長いこと額を地面に下げ続けたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ