[7]
週が明けて学校に行く。
昨日も結構夜遅くまでエルヴィンと話をしていたので少し眠かったが、気持ちが良い朝だった。
現実の世界も輝いて見える。
「おはよー。」
教室のドアを開けて、いつも連んでる3人に挨拶する。
「おっす、マコト。
なんだお前、目が真っ赤じゃねーか。」
相変わらずリアル重視のやつらなので、
新1年の中で可愛い女子は誰かについて語っていた。
「ああ、寝不足かも…。」
「おい!夜に何やってたんだよ!
お前も好きだなー!!!」
「別にやましい事はしてねーよ!!」
「じゃ何?」
「いや、ちょっと
ゲームにハマっちゃってさ…。」
「なになに?そんなに面白いゲームがあんの?」
好奇心旺盛な高橋が喰いつく。
「うーむ、教えるのは勿体無いが…
特別にお前らには教えてやろう。」
「ああ、早く教えろ!」
「…仮想世界ってVRのゲーム知ってっか?」
「知らない」
「知らない」
「ちょっと知ってる…」
高橋だけがどうやら知っているらしい。
「2年くらい前に話題になって、やった気がするなぁ…。でもあんま面白くなかったような…。
なんかCGがイマイチでさ、結局出会いもあんまり無かったから、さっさとアカウントも削除しちゃったよ。」
「それはきっと初代仮想世界だ…。
セカンドが出たんだけど、今スゲーぞ!マジCGがリアル!」
「へー、そんな進化してんの。」
「CGとは思えないくらいリアルな出来してんだよ!
アバターなんて、ほんっと人間そっくり!
マジリアル!!」
オレの熱のこもった言葉に、若干たじろぐ3人。
「おお…。で、内容的にはどうなん?」
「うーん…そこはやっぱりチャットで出会い作んのが主かも知れないけど、クエストも充実して楽しめるみたいよ。」
「え、みたいよって?」
「…いや、オレ、クエストとかまだやってないからさ。」
「は?じゃ、何やってんの?」
「…ちょっと知り合いが出来てさ…。
その人と喋ったり…仲間紹介してもらったり。」
「…もしかして女か?」
「…。」
3人が顔を見合わせる。
「おいおいおいおーい!!!
充分やましい事やってんじゃねーかよぅ!」
3人に一気に小突かれはじめる。
「いや!そんな関係じゃ無いって!!」
まんざらでも無く一応否定していく。
「何?その子可愛いの??」
「…写真とかはまだ見てない。
アバターはスゲー美人だけど…。」
「アバター?!
そんなもんは適当に綺麗に作るに決まってんじゃん!」
「…。でも性格がスッゲー良くてさ。本当いい子なんだよ。」
「え…。お前…、まさかその子の事
好きになっちゃった?」
「…。」
「まぁ…ネット恋愛って、恋に落ちやすいっちゃ〜落ちやすいから、しゃーないやな。」
後ろから急に池田が現れて言う。
「おお!池田!久しぶりじゃん!」
(…いつからそこに居たんだ。)
手で挨拶をして、池田が続ける。
「相手をいいように想像して、自分の理想像に作り上げてしまう傾向にあるんだ。だから恋に落ちやすい。」
「へー。」
オブザーバー3人が声を揃えて言う。
「で、結局会ってみて撃沈するパターンが多いやな。」
(…う、うるせーーーー!!!!!!)
「取り敢えず気をつけるに越した事ないから、お互いに会うまでは注意した方が良い。
ネットに100%の真実なんて、転がって無いって思った方が良いぞ。」
「…。」
「オレにはお前にVRをくれてやった責任つーもんが有るんだよ!
あんまり危ない橋渡んなよっ!!」
「…わかった。」
教室の窓の空が急に曇りはじめた気がした。




