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「はい、着いたよ!皆んな起きて!」
今日はesports世界大会当日。
アキラさん…いや、ここでは佐伯教授
が運転するワンボックスに揺られて
アキバにある会場に到着する。
会場の催しの一つである宣伝ブースに、うちの大学のブースが出るということで手伝いに来ていた。
「はぁぁぁぁい。うーーー。」
そう言って大きく背伸びをするめぐみ。
ガラッとワンボックスの扉が開き、それぞれ車の外に出る。
佐伯教授は大学で私にはほとんど接触しないようにしていたが、問題はめぐみだった。
私が休んでいた間に1度教授からめぐみに接触して、私の様子を聞いたことがあった。
その事を何か怪しいと思っためぐみは、
「もしかしたらあの教授に結衣が狙われてるのかもしれない…。」
とある日言い出した。
「ねえ、本当に佐伯教授のこと知らないんだよね。」
「えっ、…まぁ、多分知らないと思う…。」
「なにそれ!多分って。」
「…あぁ、私もさ、自分の事で精一杯だから…。あんまり周り見えてないから、自信なくて。」
なんとか佐伯教授の身バレを防ごうと思って、知らないで通している。
「もぉ!ちゃんとして!
もしかして結衣のストーカーだったらって思うと心配なのよ!」
「あはは…、それは無いよ。」
「なんで!めちゃくちゃ怪しいじゃん。
私に結衣の事聞いてきたりして。」
「…たまたまうちのゼミの教授に頼まれたんじゃ無いのかなぁ。」
「いや!絶対なんか有る!
あたし、ちょっと研究室行ってみるわ!」
「えぇぇ!!!!辞めた方がいいよ!!!」
「いや!行く!」
「ねえ、辞めた方が良いって!」
そんな押し問答を続け、メグに引きずられた状態で佐伯教授の研究室のドアの前まで来てしまった。
ドアの前でメグと押し問答をしているうちに、ガチャっとドアが開いて中から佐伯教授が出てきた。
「あんた達!!人んちの前で何ごちゃごちゃ言ってんのよ!!!!」
そう怒鳴られて、
その後静かに研究室の中で、
私たちの秘密をめぐみに打ち明けた。
「私も仲間に入れて下さい!!!」
ひとしきり聞いた後何を感動したのか、めぐみは目を潤ませながら佐伯教授の手を握りしめてそう叫んだ。
それからというもの、めぐみは仮想世界のあの店に来るようになり、
そして何故だか佐伯教授を教祖のように尊敬するようになっていた。
今回の世界大会での催しは、佐伯教授が企画を任されており
めぐみは進んで手伝いをやり
私はそれに巻き込まれている…。
でも興味がなかったわけでは無い。
池田君という天才高校生プレイヤーは
どこかマコトさんにかぶるところが有って見てみたいと思ってた。
「…でも、声が違うんだよなぁ。」
池田君が映っているインタビューを観るとそう思う。
私達の大学のブースには前日に荷物が運ばれており、最終調整を今行っているところだった。
私とめぐみは大学のパンフレットを配る係だ。
「さて気合い入れてやりますか!
結衣は無理しなくて良いからね〜。疲れたら座ってて。」
「ありがと。」
そろそろ開場の時間になる。
しばらくすると催しのブースにチラホラと観客が流れてくる。
各ブース、趣向を凝らした演出をしている。
2ブロック先に仮想世界のブースが有るのは分かっていたが、佐伯教授が避けていた事もあってまだ見に行っていない。
20分も経つと、かなり混雑してきた。
我がブースもそれなりに混み合ってきて、パンフレットもドンドンと無くなっていく。
流れ作業のように来る人来る人に手渡して行くと無心になれた。
「マコトー!!」
(えっ…)
目の前の若い男性の叫ぶ声でハッとする。
背が高い若い子が手招きをしている。
人混みを分けるようにしてひとりの男子が近づいてくる。
「おせーよ。」
「ごめんごめん。」
聞き覚えがある声だった。




