アイテムなしでの厳選は闇が深い
◆◆◆アイテムなしでの厳選は闇が深い◆◆◆
「なんでこんなにウォリウが多いんだ?」
ウォリウは森狼みたいなやつだ。こいつらは群れてなんぼという種族なので、1体だけテイムしてもその真価を発揮できない。逆に1体で現れれば特殊個体ワンチャンあるのだが、ただはぐれただけとか、囮だったとか、そんなのばかりで<いかにもボスです>みたいな個体に巡り合うことができない。いや、それぞれの群れにボス格の奴は混ざってはいるのだろうが、いまいち差があるようには見えないのだ。
「今日も野宿だな。」
トリアテ様が言うには3日前に歩いていた道の反対側は廃村らしく、あの道を通る人はほぼいない。おかげで安心して霧を出しっぱなしで眠れるのだ。毒は何かの拍子に現れた特殊個体を倒したらもったいないので睡眠と麻痺を使っている。2つ起動すると維持MPは1時間あたり3になるみたいだが、寝ている間ならMPの回復速度が増えるらしく、普通に寝て起きればMPが全快しているので問題ない。自然回復がログに表示されないのは歯がゆいが、入門なので仕方ないだろう。
「そういえばこの木、野宿する頃にはいつもそばに生えているな?」
何故か青い色をしているが木肌がツヤツヤで汚れておらず、寝る時縋るのにゴツゴツしないからちょうどいいのだ。ちょっと細いけど。
「当然じゃ。」
「あ、トリアテ様。久しぶりですね。」
俺がテイムの探索にでた初日に「飽きた。進展があったら呼ぶのじゃ。」とか言って通信が途絶えていたのだ。
「ぬしが寝具にしておるのは魔木のフルーリじゃ。なぜかこやつは青いから違う種類かもしれぬが、ただの歩く木みたいじゃから、フルーリじゃろう。初日からずっとぬしの後ろをついて歩いておったぞ?」
「何?!色違いだって?!なんで教えてくれなかったんですか?!」
「そうはいってものう、色が違うだけではないか。」
「俺は転生前のゲームで色違いを確定で手に入る赤い竜もどきとステータスの低い虫しか手に入れたことが無いんです!目の前にいるのに見逃すなんてとんでもない!!」
「そやつをテイムする気かや?ぬしになついてはいるようじゃが、歩くだけじゃぞ?」
「もちろんです!さて、既に3日の付き合いになってたみたいだけど、今後も俺と一緒に旅をしてくれないか?」
―魔木が縦に揺れた。返事をしているのだろうか?
「本当に動いた。それでは試しに、テイム。」
【フルーリのテイムに成功しました。】
―魔木が喜んでいる。ように見える。
「なんかかわいい。ほっそりとしているし背が低いから、女の子なのかな?」
「植物じゃからオスもメスもないじゃろう。」
「銀杏はオスの木とメスの木があるって聞いたことあるから、魔木に性別があってもおかしくないのでは?」
「こんな植物の何がいいのじゃ。」
「いやいや、トリアテ様。初テイム成功ですよ?それに、俺の霧で強化すればLv上げも簡単なのでは?」
「ふん。識別のランクが足りないから片方しか強化できない間は役に立たないのじゃ。」
「敵だけ識別して敵以外を強化すればいいんですよ。」
「わしはドラゴンが良かったのじゃ。」
「いやいや、普通に返り討ちに合いますって。それこそLvを上げてから行きましょうよ。」
この世界のドラゴンがどの程度強いのかは知らないが、あのゴブリンよりは圧倒的に強いはずだ。全く勝てる気がしない。
「Lvが十分上がったらテイムしてくれるのかや?」
「もちろんですよ。ドラゴンはロマンですよね。」
「当然じゃ。」
そういえば、魔木の名前を決めていなかった。青いからって青っていうのは流石に安直だしなぁ。気の利いた名前なんて思いつきそうにないし、たまたま思いついたのでよさそうな名前にしよう。ミリア、クレア、アリサ、エリザベート、ローズマリー、ティアラ…うーん、そういえば、フルーリってどんな魔物なんだ?
「トリアテ様、フルーリって歩くだけですよね?簡単に討伐できるのでは?」
本当に歩くだけなら、Lv上げのお供にされているはずだ。何かあるのだろう。
「そやつは耐久特化じゃ。Lv0では傷をつけるだけでも困難じゃし、再生能力まで持っておる。」
「結構強いんですね。俺の霧で強化すれば弱点も無いんじゃ?」
「その木がどうやって攻撃するのじゃ?」
「枝を振って?できるか?」
―フルーリは枝を振っている。
「まぁ、遅いよね…。」
―フルーリはがっかりしている。ように見える。
「お、俺の霧で敵を止めれば大丈夫だから!頑張って進化を目指そうぜ!…進化できますよね?」
―フルーリはシャキーンとしている。たぶん。
「どう見ても最終形態ではないしできるじゃろう。フルーリなんて調べておらぬから知らぬがの。」
防護とHPが高くて自動再生持ちか。それなら、
「お前はこれからミレイだ。よろしく!」
―ミレイは喜んでいる。かも?
「さっそくLv上げだ!」
今の俺に敵を簡単に見つける方法はない。識別が一見使えそうにみえるが、何でもかんでも識別してしまうので実際に見た方が早い。とはいえ焦る必要はない。ウォリウは鼻がいいから向こうから寄ってくるのだ。おっと。
―横からウォリウの奇襲を受けた
ふははははははは、痛くも痒くもない!さらっと麻痺にしてミレイにパス。ミレイの攻撃力が足りないがちょろっと強化しておけばワンパンだ。楽勝だな!
「あれ、ミレイの攻を強化して狩りに行ってもらえば俺要らないんじゃ?」
「フルーリは硬いし食料にも向いていないからこのあたりの魔物は襲ってこぬ。ゆえに囮がおらぬとはかどらないのじゃ。それよりも、Lv上げは後にしてさっさと町に行くのじゃ。せめて魔物調教を初級にせんとステータスも見れぬ。」
「むむむ、確かに効率を考えれば俺の経験値が入らないのは良くないし、もう少し敵が強くてもミレイは大丈夫そうだ。とはいえただ移動するのはもったいない気がするから町へ向かいつつも森の中を通って行こう!」
「絶対今日中にたどり着けないのじゃ…。」
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