報告
◆◆◆報告◆◆◆
これと言って何が起きるというでもなく、俺たちはあっさりとAランクに勝利した。
賞金は1千万DPだったが、俺達の所持金からすれば誤差にしかならないのでメダルだけもらっておいた。
霧で無双しただけでもらうのは流石に申し訳ないし、闘技場の経営が傾くのはよくない。
メダルを辞退するのは流石に失礼なのでもらっておいたという事だ。
「さすがアタシの隊長だッ!今日から隊長がチャンプだなッ!」
「いや、俺そういうのはいいし、これからも夏海ちゃんがチャンプやってくれないか?」
「そうか?ま、次はアタシが勝ってやるぜッ!」
「ていうか、どうやって勝つつもりだったんだ?」
「こーテキトーに霧を払いながら進めばいけると思ったんだけどなー。まだまだ修行が足りねーみてーだなッ!」
まじでノープランだったのか…。
「そうか、強くなったら再戦しよう。」
「望むところだッ!」
これで再戦するまではチャンプがどうのこうのとは言ってこないはず。…だといいな
「結果が出たみたいですよ。」
「ん?表彰式でもするのか?」
「いえ、先日の戦争の結果です。逃げた町長が大勢引き連れて帰ってきたみたいですよ?」
「うへぇ、またかよ…。それで、今度はどんなやつと戦えばいいんだ?」
「国です。」
「え?」
「ミルダース王国はデストリンドを逆賊と認定。周辺から戦力を集め、占領中のトワイトライに行軍中です。」
「え、そ、それは、王国軍みたいなやつも来るって事?!」
「今は距離的や規模などの関係から、大将となる部隊が派遣されているだけですが、これを撃退すれば国の総力を挙げて攻撃してくる可能性はあります。」
「なんだよそれ!どういう事なんだよ!」
「逃げた町長が、突然デストリンドが攻めてきたとでも報告したのでしょう。私たちデストリンドは立場が弱いので、ろくな話し合いや調査も行われずにこれ幸いと討伐することに決めたという予想が有力です。」
「立場が弱いってなんだよ?くだらない言いがかりで攻めてきたから反撃しただけじゃないか。」
「デストリンドの住民は、本国から切り捨てられた人たちです。思っていた以上に成果を上げたから、この機会にもう一度切り捨てて有効活用してやろうとでも思っているのでは?」
「そうか…。そうだよな…。何をやっても俺らが悪い。そうなるんだよな…。」
「倒せばいいじゃない!おにいちゃんなら出来るよ!結局は私たちを殺して奪おうって奴らなんでしょ?町が国になっただけじゃない!」
「でも、国だよ?」
「搾取するだけで守ってくれない国なんて国じゃないわ!もう自分の身は自分で守るしかないのよ!」
「あぁ…結局異世界に行っても、誰も助けてくれないんだな…。」
「大丈夫よ、私が助けてあげるわ!…ううん、助けられないかもしれない。でも、きっとそばにいるから。」
「フッ、元より我は世界の敵。恐れるものなど何もない…!!」
「私も、お供しますね。」
「マスター、私はずっと、マスターと一緒だからね!」
「みんな…ありがとう。俺も頑張るよ。」
「お、そうか。頑張れよなッ!それで、話は終わったのか?どういう話だったんだ?」
「夏海ちゃんが重要な話をしていると全く割り込んでこない原因が今わかったよ…。」
「あ?なんだ、アタシの事か。もー隊長はしょうがねーやつだな。ほら、パンツ見るか?」
「ちげーよ。ミルダース王国から逆賊認定されて軍が攻めてくるって話だよ。」
「は?なんだそりゃ。この国ついにおかしくなっちまったのか?」
この後夏海ちゃんにもう一度同じ話をした…。




