海辺の迷宮
◆◆◆海辺の迷宮◆◆◆
***マロニカのターン***
とりあえず、この石化した奴らを助ける余裕はなくなったし治癒の勇者あたりに治されても困るから、きっちり倒していこうかな。
ダンジョンマスターと仲良くしているようなのだし、先に攻撃してきたのは向こうだから討伐しても大丈夫よね。
「ねぇおにいちゃん。この人たち、本当に助けるの?私怖いなあ。」
「ああ、ごめんねマロニカちゃん、俺がどうかしていたよ!俺の大切なマロニカちゃんを奴隷にしようだなんて、そんな恐ろしい事をしようとした奴らを、許すわけにはいかないよ。ちょっと、待っててね。」
「うん、待ってる。」
私が倒した方がより経験値になるけど、お兄ちゃんが妙にやる気だからいいかな。
―霧の勇者が手早く石像となったやつらを抹殺した。
「ありがとう、ごめんね。」
「殺す気で攻撃してきたんだ、殺されても文句は言えないって。」
「それ、どっかで聞いたことある。」
「はは、まぁ、昔読んだ小説の受け売りだからね。外にいるのも対処しておくか。」
「そうね、いこっか。」
こういう話が通じるって、やっぱいいわね。
「とりあえず、この迷宮の討伐は終わったわけだけど、次どこにしようか。」
まだスタンピードの後始末をするつもりだったのね。でも、そんなことはできないの。おにいちゃんが治癒の勇者の視界に入っただけで治されちゃうから、どこか、おにいちゃんを匿える場所を探さないと…。
「ねぇ、そんなことより、別荘を作らない?迷宮の討伐なんて、ヴリトラやベルゼブブだけでも十分でしょ?」
都合のいい場所なんて知らないし、自分で用意した方がマシね。ついでに距離をとった方がいい気がするし。
「うーん、まぁ、それもそうだな。とりあえず、皆に連絡しとくよ。」
「待って!絶対に連絡しないで!」
すこしでも態勢を整えるための時間を稼がないといけないのよ。
「え?でも、それくらいはしないとみんなが心配するよ?」
「どうしてもダメなの。お願い!」
「解ったよ。連絡はやめておくね。」
なんか、何でも意見が通っちゃうわね。ちょっと効きすぎたかな?でも、うーん…。
「ありがとう。それと、その、霧でみんなを強化するのも辞めて欲しいんだけど、いいかな?」
「さすがにそれは危ないんじゃないか?」
「治癒の勇者とネネがいるから大丈夫よ。」
フル強化のみんなが徒党を組んでおにいちゃんを取り返しに来たら太刀打ちできないもの。
「うーん、でもなぁ。」
「ね?お願い。」
「はぁ、じゃぁHPだけの強化にしとくね。」
「うん、それで十分だわ。ありがとう。」
だからってみんなを返り討ちにするわけにもいかないし、HPだけならいい…のかな?
「別荘を作るってことは、海の近くがいいんだったよね?どっちに向かおうか?」
「海と言ったら南よね!南に行くわよ!」
「OK、早速行こうか。」
「あれ、もしかして海じゃないか?」
「知らなかったの?結構近くにあるのよ。」
「なんで近くにあるのに利用しないんだ?もったいないじゃないか。」
「海って遮るものがないでしょ?リヴァイアサンとまではいかなくとも、サーペントとか、グラシアウスとかが来るのよ。」
「グラシアスって何?たしかありがとうって意味だよね?」
「グラシアウスよ。クジラのでっかい奴なの。遠距離攻撃をしてこないから、陸にいれば安全なのよ。」
「やばい。ちょっと欲しいかも。」
「来たら捕まえて海の護衛をしてもらいましょう?」
「いいね!楽しみになってきた!」
「それじゃぁ、あえて海のすぐ近くに家を建てよっか。」
「よし、さっそく建てよう!」
計画してなかったけど、家建てれるのかな?鑑定しながらやれば大丈夫だといいけど。
「まず最初に都市核を設置したほうがいいわね。風とかが来ないようにしておきましょう?」
「んーと、じゃぁ、あのあたりに設置しよっかな。」
―おにいちゃんが迷宮から取ってきたコアをドンと置いた。割れてないよね?
「これってどうやるの?」
やっぱり調べてないのね。本当はマスター権限を持っててほしかったけど、サブマスターでもいっか。
「私に任せて、都市核を起動。」
(初めまして、こちらは都市核です。言語の設定を変更しますか?)
日本語にしか聞こえないけど、実際はなにかよくわからない言語なのよね。
「そのままでいいわ。彼をサブマスターにしてくれない?」
(設定完了しました。)
「建物は建てられたりしないかしら?」
せめてコアルームだけは作れたらいいのだけど。
(コアハウスであれば、DPを消費して建築が可能です。)
これはラッキーね。
「どれくらいまで大きくできるのかしら?」
(支払われたDPに依存します。後から改築も可能です。)
「へぇ、そうなの。元がダンジョンコアなだけはあるわね。本当に魔物は召喚できないの?」
(魔物を召喚するには種族がダンジョンマスター系列でなければなりません。)
「ねぇおにいちゃん。種族がダンジョンマスターなら魔物を召喚できるらしいわよ?」
「マジで?!DP払ったらダンジョンマスターになれるって聞いたし、いや、進化できなくなりそうだから辞めておこう。」
「それでね、DP支払えば建物を作れるらしいんだけど、どうする?私たちで建てた方がいいかな?」
「うーん、大工の知識とか無いし、倒壊したら怖いから、DPで建てちゃおうか。」
「でも私、あんまり持ち合わせがないのよ。おにいちゃんはゴーレムの迷宮でたくさん異世界人を倒したからDPがたくさん余ってるよね?それ使ってもらってもいい?」
「ん?ああ、そういえば、かなり条件達成報酬が届いてたな。うわ、19兆も持ってる。ドーンと1兆つぎ込んでみるか。」
「これはまた大きく出たわね。1兆使って建てるとどうなるの?」
(敷地面積100万㎡の邸宅を自由に設定可能です。)
「そんなにいらないわ…。100億ならどう?」
(敷地面積1万㎡の邸宅を自由に設定可能です。)
「ねぇおにいちゃん。100億でそこそこ広い家が建てれるみたいだし、これでいいんじゃないかな?」
「他にも何か建てるんだよね?1兆払って、ついでに他の建物も建ててしまえばいいんじゃないかな?」
「あ、それいいわね!コアハウス1軒で全部やってしまえばいいのよ!それじゃぁ、何がいるかしら…。」
水道用貯水池 焼却炉 お店用空き店舗 宿屋 遊技場 倉庫 室内訓練場 地下採取場 研究所 学校 病院 ギルド会館 公民館 公衆浴場 迎賓館 防衛施設
とりあえずこんなところね。足りなかったら増設すればいいわ。
この後、おにいちゃんと話し合っていくつかの施設を建設したわ。
~勇者様たちが大活躍~
各ダンジョンを監視している兵士から、勇者様方の多くのダンジョンを討伐報告が寄せられています。
その数は既に10を超えており、我らの街に平和が訪れる日も近いでしょう。
ああ、勇者様方に感謝を!
町長 フライル・デストリンド・オーステン