ゴーレムの迷宮8
◆◆◆ゴーレムの迷宮8◆◆◆
「やっぱりボス部屋のようね。」
「65階だからなぁ。あのロボット風ゴーレムのボスバージョンか、高軌道型超巨大ロボットとか出てこないよね?」
「これまでの感じだとありそうだから怖いのよね。うん?なんか音楽が聞こえない?」
「そうか?…ああ、確かに聞こえるような?」
「いよいよ本当に出てきそうね。」
「やめてくれよ。出会い頭にビームとか撃たれたら防げるか解らないぞ?」
「ちょっとだけ開けて覗いてみよっか。」
「気をつけろよ?」
「まっかせなさいって!」
―マロニカちゃんが扉をそっと少しだけ開けて中を覗いている。
「…なんかライブやってるわ。」
「ライブ?」
「歌って踊るあのライブよ。」
「え?もしかしてダンジョンマスターか?頼んだら俺用にゴーレム作ってくれないかなぁ?」
「ミスリルゴーレムは出てこなかったし、ちょっと分けてあげたら作ってくれるかもよ?行ってみよっか。」
「そうだね。」
―ステージでは何人かの女の子たちが歌って踊っており、数人の観客が熱狂していた。
「あのステージにいるの、ゴーレムね。」
「え?マジで!俺も1体欲しい!」
「絶対にダメ。」
―マロニカちゃんがステージにいる女の子ゴーレムに向かって光の短剣を投擲した。
「え?」
「あ、さっきの短剣はね、この光の剣にMPを込めるとたくさん作れるのよ。」
「いや、そうじゃない。なんでいきなり攻撃したんだ?」
「おにいちゃん、エロいゴーレムは私が壊すって約束したよね。」
「おいいいいいいいい!お前らああああああ!!!」
―観客の一人がこっちに来た。
「なんっテことしてくレてんだよああ!?」
「あんたも勇者でしょう?魔物を倒すのは当たり前の事よ。」
「何が当たり前だ!俺は!シキノマちゃんのファンなんだよ!!歌に人間も魔物も関係あるかああああああ!!」
―勇者らしき人がマロニカちゃんに襲い掛かった。
俺がすかさずインターセプト。霧で石化させておいた。
「ありがとう将太。」
「ねぇ、君たち。僕たちはここでライブを楽しんでいたんだ。わかるよね?」
別の勇者のようだ。どうしよう、襲い掛かってきたさっきのヤツはともかく、流石にこっちが悪い気がするし先手必勝ともいかないぞ。
「幸い、主犯は女の子のようだし、僕たちの奴隷にでもなってくれるんなら、水に流してやろうじゃないか。」
「いや、ゴーレムを倒しただけでそれは厳しすぎるんじゃないか?この石化した男だって治せばいいだけなんだし。」
「君は立場が分かっているのかね?これだけの人数に迷惑をかけたんだ。それくらいはして貰わないと怒りが収まらないよ。だいたいね、ここをどこだと思っているんだい?ダンジョンだよ、ダンジョン。法なんてない。あるとしたら、弱肉強食。強い者が正義ってだけだ!」
「そうだそうだ!」
「俺のアエリちゃんを返せ!」
「男はいらねぇ!やっちまえ!!」
ダメだ。微塵も和解できる気がしない。
「逃げよう!」
「ダメよ!ボス部屋だから引き返せないの!」
―観客たちが俺に向かって様々な攻撃を放ってきた。
俺は自重の無い霧ですべてを打ち消した。
「お前らの攻撃は通用しない!降参してくれ!」
「ふざけるなあああ!!」
―自ら霧に向かっていった奴が消滅した。
【条件達成:異世界人を討伐 1億DPが贈られます。さらに所持DPが2倍になります。】
「投降しろ!これが最後の警告だ!」
「お前が悪いんじゃないか!問答無用で攻撃しやがって!」
「そうだぞ!ここが好きになれない奴のために脱出アイテムまで用意してあるんだ!」
「そうだよ俺たちが悪い!だからって、みすみす奴隷にされたり、殺されてたまるか!俺はあいつの、おにいちゃんになったんだよ!!」
―石化と睡眠の霧が観客たちを包み込んだ。もちろん睡眠耐性減退つきだ。
石化できなかった人がいる。石化耐性減退付与をとらないと…。
―石化しなかった人も石化させた。
「ご、ごめんね、将太。迷惑、かけたよね?」
「気にするなって。妹は兄に迷惑をかけるものなんだよ。」
「それと…助けてくれて嬉しかった。」
「兄妹なんだから、当然だろ?」
「その、石化した人たちどうするの?」
「忘却で今日の事は忘れてもらおうと思う。」
「そっか、じゃぁ早くしないとね。」
「いや、俺の忘却は入門だから、うまくいくか怪しいし、トリアテ様か、ネネリムちゃんに大丈夫か確かめてほしいんだよなぁ。」
「ネネに会いに行くの?」
「そうだな、トリアテ様はなんか最近返事してくれないみたいだし、こんな状況だから、いったんみんなで集まった方がいいかもしれないな。」
「そ、そう…よね。」
「あっちがコアルームみたいだ。ダンジョンマスターは見当たらないし、さっき石化させたやつらの中にいたのかな?」
「えっと、あいつがダンジョンマスターみたいね。」
「妙に偉そうだった奴か。まぁ、いいや。このダンジョンは討伐対象だったから、こいつは助けられないが、とりあえず他の奴はゴーレムで運ぶか。」
「ゴーレムだと傷が入るかもしれないから、私たちで運びましょう?」
「そうだな、危ないところだったよ。」
「これが脱出口かな?」
「まってね、うん、そうみたいね。」
「ここに置いたら転送されないかな?あ、出来るみたいだ。」
「よいしょっと。ねぇ、将太。」
「なんだ?」
「私ね、そこそこLvが上がったじゃない?そのおかげで、ユニークスキルの詳細も見れるようになったみたいなの。」
「え、マジで?すごいじゃん。」
「だから、おにいちゃんの霧の詳細も見てみようと思うんだけど、霧をまとっているからうまく見れないみたいなのよ。」
「ん?そうなのか?」
おにいちゃんっていい響きだよな。
「きっとまだ読み取る力が弱いのよ。だから、ちょっとだけ霧を解除してみてくれない?」
「部分的によけるだけじゃダメなのか?」
「うーん、ちょっとやってみて?」
「これでどう?」
「ダメみたい。霧でガードしてるんじゃない?」
「でも、解除するとみんなに伸ばしている霧も消えちゃうんだけど…。」
「MAPには載ってるんでしょ?すぐ追いかければ追いつけるわよ。おにいちゃんの霧って本気出せば早いんでしょ?」
「今なら秒速244mだね。たぶん音速に迫る速さだし、まぁ、追いつけるか。よし、これでどう?」
「ありがとうおにいちゃん。一応近くでやってみるね。」
―マロニカちゃんが近づいてきた。
「これであなたは私の虜。」
「え?」
―口づけを受けた霧の勇者はマロニカちゃんに魅了された。
~それはもはやインキュバスのごとし~
魅了攻撃[達人級]
遠距離でも相手を魅了できるが、より密接な状態で使用した方が効果が高い。
魅了耐性を70%貫通。同性にすら効果がある。また、どうすれば相手を魅了しやすいかもある程度理解できる。
ああ、俺もいい漢を見つけたらメロメロにしてみたいものだが、使用は法律で禁止されている。
スキル研究家 ムイライド・ハーベス