空飛ぶ壁の上で
◆◆◆空飛ぶ壁の上で◆◆◆
「そういえば、答えづらいならいいんだけど、なんで咎人の町デストリンドなんだ?」
「あー…、それはね。あそこが開拓地だからよ。くだらない理由で捕まった人を開拓者に仕立て上げて開拓させられたのがあの場所って事。」
「デストリンドの先にも村があったみたいだし、だいぶ古い話じゃないのか?」
「まだ20年くらいしか経っていないのよ。潰れた村は5年前から開拓が始まったわ。」
「なるほど、デストリンドが落ち着いたからすぐ次を開拓してたのか。でも、もと犯罪者が集められていたのなら、その呼ばれ方も仕方ない事か。」
「本当にそうなら良かったのだけどね。実際はあふれる人口を何とかするための口減らしなのよ。罪はほとんどがでっち上げね。本当の罪人を集めたら枷か何かつけないと絶対何か問題起こすでしょ?」
「口減らしって、なんでそんなことになってるんだ?勇者がたくさんいるんだから何とかしようってやつくらいいるだろう?」
「その勇者が頑張ったおかげで豊かになったわ。デストリンドみたいな辺境ですらそこそこの生活ができるくらいにね。おかげで人口が増えすぎて土地が足りなくなったの。」
「町と町との間に森とか山とかあったよね?そこをちょっとずつ開拓した方が安全なんじゃ?」
「あんたねぇ。ちゃんと地図見たの?今出すと風で飛んでいきそうだから仕方ないけど、開拓されていない森の中にはだいたいダンジョンがあるの。それはわざと残しているダンジョンか討伐できないでいるダンジョンね。そんなのの近くに家なんて建てたらどうなると思う?」
「えっと、もしかしてダンジョンにDPが入る?」
「そういう事。一応都市核で土地を奪い返せるけど、ただそこに人がいるだけでDPが増えるダンジョンマスターとの取り合いに勝つのは容易ではないわ。」
「それだと、どこの町もやばいんじゃ?」
「そうでもないわ。都市核の基礎領域を奪うにはダンジョンバトルをする必要があるの。それがスタンピード発生原因の一つにはなっているのだけど、そういうことをするダンジョンは危険だから、すぐに討伐隊が結成されるわ。」
「それで負けたのが討伐できないダンジョンってわけか。」
「そうね。でも、負けたからといって、皆殺しになんか滅多にされないわ。結果的に得られるDPが減ってしまうでしょ?」
「まぁ、要するに、地図の印ががある所は討伐した方がいいって事か…。」
「ま、出来ればって事にしましょう。」
「Lvが1以上なら、パーティーを組んで戦闘に参加すれば経験値がもらえるんだよね?」
「パーティのユニークスキルなんて誰も持っていないわよ。倒した時に近くにいれば何割かはもらえるんじゃないかしら。Lv0じゃない人は気にしなくても大丈夫よ?」
「倒したらLv差プラス10の2倍って聞いたらから、どうなるのかなと思って。」
「倒した敵から経験値の群れが出てきて、複数人で倒した場合は活躍した人や近い人に経験値が群がりやすいわ。これが7割くらいで、残りが他の人に分けられる感じかしら。Lv0だと、経験値を吸収すること自体がうまくできないから、1体分丸々の完全な形じゃないと吸収できないらしいわ。女神様から聞いてないの?」
「俺はこの世界に来てその日のうちにLv1になったから良く調べてなかったんだよ。」
「なにそれ。戦闘系は楽でいいわね。」
「いや、俺の霧も最初はほとんど普通の霧で攻撃力もなかったぞ。ただ、俺の魔力を纏った俺の体の一部みたいになっているから経験値を横取りできるらしい。それで簡単にLvが上がったんだよ。」
「私たちは血のにじむような努力をしたのよ?十分楽しているじゃない。」
「戦ったのはネネリムちゃんだけで、マロニカちゃんはトドメ刺しただけだったよね?」
「そこに至るまでに努力したのよ!全くネネに勝てないのにゴブリン相手にほとんど勝てないっていうのよ?」
「なんでウォリウとかにしなかったんだ?あっちの方がLv低いじゃないか。」
「あいつらは足が速いからダメよ。ゴブリンの方が力が強いって言っても、どうせ1発もらったらアウトだから遅い方が倒しやすいわ。硬くて倒せないフルーリは論外ね。」
「超切れ味のいい武器とか使ってもダメなのか?」
「そのためのDPを貯めてたのよ。何の効果もないマジックシルバーの剣ですら2000万するのよ?」
「シルヴィアさんに借りれなかったの?」
「シルヴィアさんのお兄さん達に邪魔されたのよ。」
「ああ、そういう事か。」
次男と3男には会ったことがないが、似たような感じでシルヴィアさんを可愛がっているんだろう。
「まぁ、結果的にLv1になれたからいいわ。」
「次の迷宮でがっつりレベリングだな。」
「ええ、もちろんよ!」
~経験値を手に入れようLv1以上編~
敵を倒した時に近くにいれば経験値が得られるのはみんな知っているよね?
でも、何もしないで少し離れて見てただけで経験値が得られる人がいる。
そう!僕の事さ!
僕のあふれ出るカリスマが抑えられなくてね、つい経験値も僕の方へ寄ってきてしまうのさ。
ああ、僕はなんて罪な男なんだ。
カリスマ魔術師 エーデン・リンドバルグ