そうだ、ダンジョンに行こう!
◆◆◆そうだ、ダンジョンに行こう!◆◆◆
「俺、遊撃部隊の隊長になったんだ。」
これといってなにもなく、普通にデストリンドに帰ってきた俺たちは、とりあえず双子に会うことにした。
「それより、後ろの3人は何なんですか?」
「え?俺めっちゃ頑張ってきたうえに、無事に帰ってきて、軍属になったんだよ?聞くことそれなの?」
「私たちはシルヴィアさんの部下よ?今更じゃないかしら。」
「無事だったのは良かったです。でも、それとこれとは別です。」
「アタシは遠藤夏海、治癒の勇者だ。わけあって隊長について行くことになった。よろしくッ!」
2人は従うと言ってた通り、二つ返事で部下になってくれた。ユレイラちゃんは、俺の主人だからついてきてくれるらしい。
「壁の勇者。」
「我こそは蟹の魔王ユレイラ・F・キャンサー。しばらくの間、人間の生活を見せてもらおう…!!」
「全員勇者とは、頼もしいですね…。」
「新しい仲間ができたから、私たちはお払い箱ってやつ?」
「いや、ダンジョン巡りするから、一緒に行かないかなぁと思って…。」
「ダンジョン?どうして急に?」
「ダンジョンだぜ?わくわくするじゃねーか!」
「あー、いや、俺が行きたいって言ったのもあるけど、放置しているダンジョンがあるから、間引きに行って欲しいらしいんだ。討伐してもいいってさ。あ、印付けた地図もらったから。」
そっと地図を渡す。いや、デカいから普通に渡したけどね。
「どれも人気ない奴じゃない。本当に行くの?」
「いやぁ、探索前に霧を流し込めば楽勝かなと思って。」
「なるほど、その手があったわね!私も行くわ!」
「私も行きます。」
「そっか、良かった。それと、俺の部隊に入るかどうか考えておいてくれない?シルヴィアさんは入れちゃダメって言われてるから、微妙なんだけど。」
「そんなの無視して入れちゃえばいいのよ!最悪、自由の翼の活動ですって言えばいいわ!」
「うーん…まぁ、シルヴィアさんが頼めば大丈夫かな?それで、シルヴィアさんは?」
「あー…。家で缶詰ね。勝手に出ちゃったから…。」
「それもそっか。それで、ギルドの人戻ってきたんですね。」
「人員が揃うまでの指導という扱いらしいけどね。資料もまとめて元の酒場に戻るみたい。」
「そっか。ここに泊めてもらおうかと思ったけど、宿を探すことにするよ。」
「そう?ギルメンなんだし、泊っていってもいいのよ?」
「俺、この世界に来てまだ宿に泊まったことが無いんだ。今のうちに体験してくるよ。」
「ええ?じゃぁ、行ってらっしゃい。」
「ああ、行ってくる。」
よく、現地の人におすすめの宿を聞いてるシーンを見かげるが、これは間違っていると思う。なぜなら、現地の人なので自宅があり、宿なんて使わないからだ。
「ここにしようぜ!」
だからって適当に選ぶのはやめて欲しい。
「一応値段とか聞いてみるけど、高かったら他にするからな?」
「わーってるって!」
うーむ、玄関は奇麗だなぁ。まぁ、ホテルはだいたいそうなんだろうけど。
「すいません、ここは1泊いくらですか?」
「いらっしゃいませ、朝夕の2食付きでシングルなら1名様で1泊3000DP、大部屋なら4名様で1泊1万DPとなっております。」
しまった。高いのか安いのかわからん…。それと、ミレイが数に入ってないみたいだな。
「いいじゃねーか、ここにしようぜ!」
「我は構わぬ、好きに選ぶが良い。」
「えっと、こっちのフルーリはどういう扱いになるんですか?」
「使い魔ですね。使い魔は大型でなければ1体までは数に含みませんのでご安心ください。ですが、フルーリでしたら土のある所が良いかと思われますが、いかがされますか?」
ミレイのサイズでも大型じゃないのか。えっと、どうしよう。どうがいいのかな?
―ミレイはついて来たそうだ。
「洗ったら部屋に上がっても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。傷などがついた場合は修理費をいただくことになってしまいますが…。」
「その場合は払いますよ。ミレイ、気をつけようね。」
―ミレイは枝を畳んだ?ようだ。
「じゃー大部屋なー!はい1万DP。鍵くれよ鍵!」
「ええ、俺が払うよ。」
「アタシはダンジョン巡りでだいぶ鍛えたからな!結構金も持ってんだぜ?隊長はアタシが一生養ってやるよ!」
「将太は我の下僕、いくら治癒の勇者でも…うう、ごめんなさい。」
「いや、俺もそこそこ稼いでいるんだけど。まぁ、どっちも余裕があるならいいか。っていうか、壁の勇者さんはいいんですか?」
黙ってついてきているが、さっきから微動だにしていない。寝てないよね?
「ウルビエラ、ウルちゃんでも可。」
「ウルビエラちゃん。」
「ウルちゃんでも可。」
「う、ウルちゃん。」
「ちょぉーっと待ったッ!アタシは?アタシもウルちゃんって呼んでいいよね?」
「ウルビエラで。」
「なんでだよーッ!」
「私は大部屋で構わない。」
「そ、そうですか。」
「よーっし!部屋も決まったことだし、まだ時間はあるな。とりあえず…」
「温泉か?」
「修行だなッ!隊長!模擬戦しよーぜッ!」
「いやいや、昨日戦ったじゃん!今日はいいって!」
「修行は毎日やるもんだッ!」
「た、タスケテ。」
「我が半身よ。強く生きるのだぞ…!!」
この後俺はボコボコにされた。いや、ノックバックも外傷もないんだけど手も足も出なかった。霧が使えない俺は、無力だ…。聞くところによると、以前は魔王様がこの役だったらしい。完全にスケープゴートにされたようだ…。
~蟹の勇者~
魔王ユレイラ・F・キャンサー またの名をユレイラ・ハルディス 自称18歳 146cm
あらゆる蟹を従える能力を持つ。また、従えた蟹の能力の一部を継承できる。
一騎打ちで戦わずに降参したので能力が封印されており、配下の蟹も散り散りとなっている。
武器は暗黒剣デスブリンガー(黒く塗った鋼のロングソード)を持っているが使っていない。
転生のおかげで金髪ツインテールであり、これ幸いとゴスロリ服を着こんでいる。服は自作らしい。
秘かなファンも多く、彼女の服を真似たものが市販されている店もある。