霧の勇者は後方待機
◆◆◆霧の勇者は後方待機◆◆◆
「チッ。やはりお前だったか。そいつを置いてさっさと前線へ復帰してもいいんだぞ?まだ勇者は2人残っているからなぁ。」
「いえいえ、戦は俺一人でやるものではありませんよ。皆の力を信じましょう。」
「それでも、犠牲は少ない方がよかろう?」
「そ、それはそうですが…。」
「まぁ、そいつが起き出して暴れられたら事だ、後方で待機せよ。おい、2人くらい護衛につけ!」
やっと後方支援だよ。助かった。
ふぅ。この辺でいいよね?とりあえず、この子は起こすか。どうせ銃を撃ち始めたら起きてしまうだろうし、そうなると会話もままならない。
「おーい、おきろー。」
「勇者様、何をなさっておられるのですか?」
「銃を撃ち始めたら音で起きるでしょう?だから、今のうちに起こして話をしておこうかと思いまして。」
「そうですか。」
「おーい。起きたかー?」
よく見ると可愛い。髪は緑色でロング、年は10代後半か?ほっぺは張りがあって
「む。霧の勇者。」
「あ、起きたみたいですね。えっと、スキルで襲い掛かってきたりしないんですか?」
「敗者は勝者に従属。」
「え?そんなの聞いてないですよ?」
「そんなルールは無いのじゃ。弱肉強食というのならそうじゃが。」
「そういうルールは無いらしいですけど…?」
「む、常識。」
「うん?兵士さん、そういうものなのですか?」
「そのような話は聞いておりません。少なくとも勇者の隷属化は禁止されています。」
「だ、そうだけど…?」
「むぅ。日本人なら常識。」
「俺そんな常識しらない…。」
―味方を突っ切って向かってくる奴がいる。
「アタシの、可愛いウルちゃんに手を出した悪党は、オマエかーーーーッ!!」
うわ、また勇者っぽい女の子が来た。
「オマエが霧の勇者だな!ウルちゃんを返してもらいに来た!」
カニの勇者かな?カニより本体が強かったのか。
「我こそは治癒の勇者遠藤夏海!遠くの藤に夏の海で遠藤夏海だ!アタシの熱い正義の心がお前を撃つ!さぁ、一騎打ちを始めようじゃねぇか!」
治癒の勇者なのかよ!しかも槍ぶん回してるぞ!しかも一騎打ちって断れない奴じゃん。
取り下げてくれないかなぁ。
「えっと、俺は壁の勇者さんと一騎打ちして勝っただけなんだけど…。」
「アタシは小難しい事なんかしらねぇ。つべこべ言わず、かかってこいやーーッ!!」
治癒の勇者脳筋じゃねぇか!嘘ではないだろうし、ステータス的になんとかなるよね?
「我こそは霧の勇者中川・将太!トワイトライの盾を打ち破りし武を持ってお相手仕る!いざ尋常に勝負!」
「奥義!竜牙ッ絶衝ッッ!!」
「い、いってぇええ!」
なんで?え?刺さった!?
「凄いのじゃ!HPが485も減ったのじゃ!」
「アタシに貫けないもんはねぇ!ちったぁ硬ぇみたいが、オマエをぜってぇ倒してみせるッ!」
やっべ、麻痺睡眠の霧!
「これがウルちゃんを倒した霧かッ!こんなもんにアタシは負けねぇええ!!正義は絶対勝ーーつッ!!」
―治癒の勇者は霧を振り切って攻撃してくる。
うわっ。そうか、治癒だから治せるのか。毒とMP拡散は必殺スキルだし、やばいぞ。
「雷槍トライデントォォォオオオ!!」
「165か。まぁまぁじゃが、最初の方がよかったのう。」
刺されたときに掴もうとか思ったけど無理だから!HPか防のおかげで少ししか刺さらないからなんとかなってるけど、無理だから!
「これもダメか。しゃーねぇ。」
―治癒の勇者の槍に光が集まっていく。
「この一撃にすべてをかけるッ!究ッ極ッ奥義ッッ!ブリューナァァァァアアアクッッ!!」
「イッテエエエエーーーッ!!」
―将太の腹に穴が開き光が突き抜けた。HPのおかげで修復されていく…。
なんで俺がこんな目に…。やっぱり強い奴いるじゃないか。そしてこれ治ったのHPのおかげだよな?
「5409も出たのじゃ!」
―治癒の勇者は倒れた。
こいつ本当に全部出し切ったのかよ。っていうか、トリアテ様少しくらいアドバイスしてくれてもいいじゃないか…。
「こやつ凄いのう。あの一瞬にここまで力を込めることができるとは相当じゃぞ?」
「そういうスキルじゃないんですか?」
「ぬしのアクアレーザーと似たようなものでシステム外スキルじゃ。プレミアム召喚で呼ばれた元々強い奴なんじゃろう。」
「うへぇ、起きたらどうしよう…。」
「拘束系は回復されてしまうからどうしようもなさそうじゃのう。」
「大丈夫。」
「え?」
「敗者は勝者に服従。」
「いや、だからそれは」
「言い出したの、夏海。」
「え、あ。そういう事か。」
なんか意見曲げたりしなさそうだし、自分で言い出したなら守ってくれるだろう。服従ってのは気がかりだが…。
「それにしても、勇者の女性率高すぎませんか?」
「当たり前じゃ。おっさんなんか育てて何が楽しいのじゃ?」
「俺も戦車野郎も男だし、ゆくゆくはおっさんなんですけど…。」
「ぬしは一番安い召喚じゃし、戦車野郎はあれじゃ。せっかく能力は高いのにキャラデザが不人気じゃったり男だったりする奴がいるじゃろう?それじゃ。」
「えぇ…。まぁいいや。兵士さん。どちらか報告に行ってきてもらえませんか?」
「その方がよさそうですね。おい、行ってくるから任せたぞ?」
「解ってますよ。」
―兵士の1人が本陣に向かっていった。
うーん、地面に突っ伏しているのも可哀想だし、どうしよう。
「あーっくそっ!負けた負けた。」
復活速ぇ。
「あれだけやって勝てねぇならしゃーねぇ。好きにしな!」
「え、いや。好きにって言われても…。」
「命を懸けた戦いを吹っかけて負けたんだ。何でもいいぜ。覚悟はできている。」
「えっと、まぁ、そういうのは後で考えましょう。」
「チッ。やっぱなんかおかしいぜ。聞いていた話と違ぇじゃねぇか。」
「聞いていた話?」
「咎人の町デストリンドに鉱山を奪われたって聞いてたんだが、どうもおかしい。
それっぽい穴と木で組んだ奴があるし、あの山が多分鉱山だろ?誰も守ってねぇじゃねぇか。
アタシらも素通りだしよ。
ここに来る時もお前らの兵士は助け合ってる感じだったし、アタシが倒れている間も何もされてねぇ。
おまけになんでもいいって言ってるのにこれだ。疑わねぇ方がどうかしてるぜ。」
「咎人の町?俺はあの町に住み始め…るところだったんだが、そんな奴いなかったぞ。1人いたけど俺の勘違いだったし。」
「やっぱりそっか。ごめんごめん。また騙されてたみてぇだ。」
「とりあえず、もう槍で刺されないみたいで安心したよ…。」
あれは痛かった。
「アン?そうか、悪かったな。傷見せてみな、アタシが治してやるよ。」
「いやぁ、治ったんじゃないかなぁ?ほら。」
―貫かれたところを見せてみた。
「マジで?あれで無傷か?修行が足んなかったか…。」
「いやいや、修行は十分すぎるくらいなんじゃないかなぁ…。」
「ま、今日からはオマエが修行の相手してくれんだろ?」
「えっと、一つだけ、お願いしていいかな?」
「なんだよ、アタシ達の仲じゃねぇか。いくつでもいってみな。」
「修行は他の人とやってくださいお願いします。」
「なんだよ。しゃーねーな。ガチでやろうって事か。いいぜ!」
「やっぱり一緒に修行しましょう!仲間だからね!ガチは良くない!!」
「そうか?まぁ、どっちでもいーけどな。そうだ、ユラちゃんも混ぜてやってくれよ。」
「ユラちゃん?もしかしてカニの勇者か?」
「そうそれ。アタシと一緒にいけば、ついてきてくれるって。」
「私は待機。」
「え?あ、うーん。まぁ、いいんじゃないかな?」
勝手に敵だった勇者連れまわしても大丈夫かなぁ?まぁ、カニの勇者を放置するのも良くないし、ここまで来たら仕方ないか。っていうか、結局全部の勇者を俺が何とかすることになるんだな。
~勇者の扱いについて~
以下の厳守が義務付けられています。
・奴隷にしてはならない
・虐げてはならない
・むやみに殺してはならない
これを破った場合、我々の総力を持って抗議活動を行います。
勇者共同組合 広報担当 山根和樹