戦場へ向けて
◆◆◆戦場へ向けて◆◆◆
「あら、戻ったのね!もう準備できているわよ!」
「ほとんどお店で買ったものですけどね。」
「黒パンとかは出てこないんだな。」
勇者が駆逐してしまったんだろう。
「あえて黒パンも売っている所はあるんだけど、一度食べたら飽きたわ。」
「お姉ちゃんの黒パンに小石が入っていたんです。今でもその店を恨んでいるみたいで。」
「あったりまえじゃない!何が昔ながらの黒パンよ!石は食べ物じゃないわ!」
「みんな揃ったから食べるとしよう!明日からは戦場へ向かうことが決まった!今日はゆっくり休むといい!」
「そう、いよいよなのね…。」
「将太さんなら勝てますよ。」
「そういえば、なんで総動員しないといけないような戦争になったんだ?」
「鉱山の所有権が原因だ!」
「今戦っている、トワイトライの領有の金鉱山があったんですけど、それが毎年地震と共にこっちのデストリンド領内に移動してきていて、ついにデストリンド領に移ってしまったんです。」
なんか町長って言ってたけど実際は領主なのかな?
「金鉱山って移動するものなの?」
「この世界では移動するみたいです。なのに、その鉱山は我らが領地であり、即刻返還を要求する!なんて言ってきて返せるわけもないから戦争開始というわけです。来年にはどうせまたトワイトライから遠ざかるから、デストリンドを吸収合併するつもりなんですよ。」
「貨幣に金貨とか使っていないのにそんなに重要なんですか?」
「何言っているのよ?日本でも金の価値は高かったでしょう?」
「あ、そうか…。」
ちなみに、ミレイは道中地面や植物から栄養を吸い続けている。エコ…なのか?全く大きくなっていないし、通った後の草がしおれているんだが…。
「このグラタンうまいわね。町に戻ったら買いだめしなきゃ。」
牛なんてどこで飼っているんだ?あ、ノーフォーク?とかでもやってるのかな。
「敵の勇者は壁の勇者よ!」
「治癒の勇者と蟹の勇者もいますよ。壁に手古摺っているらしいですけど。」
「壁はパパっと陣地を作れるからすごいのよ?攻撃にも使えるらしいの!」
「なんか強そうでいやだなぁ。アニメで見たことある…。」
実際参考にしているんだろうけど。壁で挟んで押しつぶすんだよきっと。行きたくねぇ…。
「何のために防御を強化しておるのじゃ…。」
「安全の為ですよ。ちょっと歩いただけで魔物が出るんですよ?備えあれば憂いなしです。」
「壁も治癒も蟹も防げるじゃろうに。」
「相手はチートスキルを持った勇者ですよ?きっと理不尽なインチキ効果で無双しているに決まっています!それにほら、壁を使って石の中にいる!とかできそうじゃないですか。なんて恐ろしい…。」
「攻を上げておけば出れるようになるはずじゃ。力ずくで脱出すればいいのじゃ。」
「くっ、なんてことだ。今すぐ攻も上げなくては…。」
そうだよ、バインドとかを使ってくる敵がいるかもしれないじゃないか。なんという不覚…。
「攻も上げることにしたの?うっかりで死人が出ないといいけど…。」
「そもそもこの防護とHPなら負ける要素なんてないのですけど…。それに、後方から味方に強化をかけるだけでいいと思いますよ?」
「それだ!」
そうだよ。何も俺が前に出て戦う必要もない。町長の娘さんもいることだし、本陣でぬくぬくとさせてもらうとしよう。
「やる気になってくれたのは良いけど釈然としない…。」
「シミュレーションで確認できればいいんだけど。」
参加人数が多いからMP不足なのかな?まぁ、戦場のシミュレーション結果なんて毎回結果が変わると思うしやるだけ無駄か。
「美味であった。」
早っ。黙々と食べてたけど、町長の娘だから食事中にしゃべったりしないのかな?
「私は先に寝させてもらおう。」
え、もう?って、電気が無いから普通なのかな?今はたき火があるけど洞窟で長時間火を使うと酸素とかやばそうだし、俺もさっさと食べて寝るか。
「「おやすみなさい。」」
「っと。おやすみなさい。」
「明日の朝は早くなりそうだから、私たちもさっさと食べてしまいましょう。」
やっぱり、シルヴィアさん朝起きるの早いんだろうなぁ。
俺たちはさっさと食事を平らげた。
「えっと、将太さんとミレイさんは入り口付近を塞ぐように陣取って寝てもらいたいんですけど、いいですか?」
「え、ああ。それがいいだろうね。」
女の子3人と川の字で寝れるわけではないようだ。まぁ、当然か。
「では、これ使ってください。」
布団一式を渡された。どう見ても新品だ。やっぱり結構前から準備してたんだろうなぁ。
「ありがとう。ミレイ、いこっか。」
―ミレイが寄ってきた。
ミレイだけはいつも一緒にいてくれる。可愛いやつだ。撫でてあげよう。
―ミレイは喜んでいる。に違いない。
あ、そうだ。お湯とか出せないかな?異世界に行ったら魔法で即席のお風呂を作るのは常識だよね。
魔が10万くらいあるのが問題だけど、外に向かってやれば、大丈夫かな?
こう、ちょこっとだけ、出す感じで試してみよう。お湯~出ろ~。あ。
―手から一筋の水が高速で発射された。それは絵に描いたかのように直進し、あたかも木や岩など無かったかのように貫いて行った。
「これが俺のアクアレーザーだ……!!」
魔道具か何かを探した方が早そうだ。発射口を絞ったのも良くなかったように見える。魔法陣でも書いてみるか?まぁ、どちらにせよ。
「今日は寝るか。」
「お兄ちゃん、朝だよ?」
ハッ!誰かが俺を呼んでいる!
「ぷっあははは!本当に起きた!超ウケル!」
……最悪だ。
「将太も支度しなさい。もう出発するわよ?」
「顔洗ってくる…。」
といっても、川の場所知らないしなぁ。霧でやってみるか。濃度を濃くすればいける気がする。
―将太はずぶ濡れになった。
「クク、ぬしは寝起きがかなり悪いようじゃのう?」
「そっとしておいてください…。ミレイ、これ何とかできたりしない?」
―ミレイがいくらか水分を吸ってくれた。まだ湿っているけど。
「ありがとう。さすが俺のミレイだな。」
―ミレイは朝から元気そうだ。
布団も片付けるか。
「ああ、やっぱり汚れているよね。デカい葉っぱでも用意しておけばよかった。」
とりあえず、落とせるだけ落としておくか。
「気をつけぬと破れるのじゃ。」
「え?あ、もしかして…。」
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中川 将太 Lv15 EXP12 下級ハイヒューマン 男性 クラス:観光客 HP223+999999 MP91 攻51+99999 守42+99999 魔73+99999 護81+99999 速11
状態:効果時間延長[入門]+99999
スキル 霧+毒付与[入門] +識別付与[入門] +麻痺付与[入門] +睡眠付与[入門] +身体強化付与[初級] +効果時間延長[入門] ログ[入門] 魔物調教[入門] SP3
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「うわ。俺のステータスって高すぎ…?」
「そうでもない。おおよそ英雄級って所じゃな。」
「英雄級?ってことは、勇者としては普通ってことですよね?壁突破できないんじゃぁ…。」
「それを教えるわけにはいかないのう。」
「そんなぁ…。」
逃げたくなってきた…。
「そんなぬしにいいものがあるのじゃ。」
「え?なんですか?」
「MP拡散付与じゃ。これならゴーレムのように状態異常の利かない類にも通用するはずじゃ。」
なんかゴースト系にもよく効きそうだなぁ。
「MP吸収じゃダメなんですか?」
「MP吸収を付与すると敵がMP吸収を使えるようになるのじゃ。おぬしが使うのなら発動の方になるのじゃが、今のおぬしが使うと長時間効果を解除できなくなってしまうのう。」
「それじゃぁ使えないですね。拡散の方は、MPを減らすんですよね?」
「そうじゃのう。」
「MP0の敵に当たったらどうなるんです?」
「HPを強制的にMPに変換させてから拡散になるのう。」
「それって危ないんじゃぁ。」
「MPの少ない敵への効果はばつぐんじゃ。防御魔法の魔力も散らすから優秀じゃぞ?」
「そしてまた一撃必殺効果が増えるのであった。もちろん取りますけどね。」
毒・麻痺・睡眠の効果が無い敵にも有効となれば、取るに決まっている。
「だいたい一番下の方じゃ。ああ、過ぎたのじゃ。」
【MP拡散付与[入門]を取得しますか?1SP】Yes No
Yesで。
【どのスキルに適用しますか?】霧+毒付与[入門] +識別付与[入門] +麻痺付与[入門] +睡眠付与[入門] +身体強化付与[初級] +効果時間延長付与[入門] ログ[入門] 魔物調教[入門]
霧で。あ、忘れてた。布団は軽く、軽―くはたいてっと。インベントリに収納だ。
はぁ、戦場までたぶん徒歩だよね?乗り物が欲しい。
~武器のLvを上げよう~
どんな武器でも武器のLvを上げれば強くなります。
自分に合った武器を使いましょう。
ただし、Lvを上げすぎると武器が意思を持ち、勝手なことをするようになります。
以下の症状が出た場合は役場への申請が必要になります。
・血を吸うようになる 魔鞭怠惰を参照
・愛おしく感じる 魔剣色欲を参照
・DPを消費するスキルを覚える 魔剣強欲を参照
・言葉を話すようになる 魔剣憤怒を参照
・自立行動する 魔杖怠惰を参照
・勝手に魔法を放つ 魔槍傲慢を参照
・別の何かの形に似てくる 魔弓嫉妬を参照
なにかおかしいと思ったら役場に相談しましょう。