彼女たちの学力
学校に行くと、定期的にテストがある。これは当たり前のようだが、かつての世界ではそうではなかった。
正確には、わたしが生きていた時代では、そうではなかった。
子供が教育を受ける環境は整っていたが、学校を作るほど、子供の数が多くなかったから。仮に学校があったとしても、わたしが通えることはなかったと思うが。
でも今は、今日で中間テストが終わったという事の方が、学生にしてみたら大切なことだ。
テストの重圧から解放された生徒たちが、今度はその出来栄えを探り出そうと、暗躍を始める。
それは、ユイもサユも変わらないようで、放課後になってすぐわたしのところにやって来た。
「レンー。テストどうだった?」
珍しくぐったりとしたユイが、机を挟んで向かい側に座る。そのまま、腕を枕代わりに机の上を占拠した。
チラッとサユの方も見たけれど、あまり立ち入りたくないのか、やや距離を取って座っている。
「いつも通りだったよ。可もなく不可もなく」
「可もなく不可もなくで、学年最上位取れたら、苦労しないわぁ。
中学校の頃から頭良かったけど、レンって昔はすごい人だったんでしょ? 実は学校のテストくらいわけないんじゃないの?」
「えーっと……」
本当のことを言っていいのか、判断に迷って言い淀む。その態度が気にくわなかったのか、ユイが「本音で」と短く言うので、観念して話すことにした。
「まあ、簡単と言えば簡単なんだけど、そもそもわたしってやろうと思えば、カンニングし放題なんだよね」
「自力で十分やっていけるのに、さらに反則染みた力を持っていると」
「前にもやったけど、認識阻害を使えば堂々と教室の中を歩き回れるし、何だったら人の視界を覗くことが出来るから。見たい人の答案をいつでも、見られる状況ではあるんだよ。もちろんやってないけどね」
かつては人の命を守るために使われていた力も、使い方を変えればこんなせこい事にも使える。
むしろ、こういった事くらいでしか使えないというのは、少々滑稽かもしれない。「それズルじゃん」とさわいでいたユイが、我に返ったようにわたしを見た。
「そういえば、昔の私たちってどうだったの?」
「2人とも今日くらいのテストなら、余裕で満点取れるくらいには頭良かったかな。
と言うか、ソラ達のサポートってかなり優秀じゃないとできないんだよ」
ある意味でソラともう1人は、人類の最終防衛線だったのだから、それをサポートする側も超一流が求められる。
わたしは天使の力があったから、エースのサポートは当たり前だった。
でも、2人はそれぞれに、頑張った結果その位置にいたのだから、かなり優秀だったと言える。
「当時の私帰ってこーい。学校のテストなんかで一喜一憂しない、クールな出来る私帰ってこーい」
「帰ってこーい」
わたしの話で何を思ったのか、ユイとサユがそんなことを言いだす。
それはなんだか微笑ましくて、でも、ユイはたぶん学校のテストで一喜一憂する感情豊かな子だったのだけれど、黙っておいた方が良いだろうか。