今の彼
「わたしは天使の力が使えるけど、ソラってどれくらい力があるの?」
ふと気になったので、ある日ソラに尋ねてみた。
前の世界だと、殴って大きな岩を壊したり、今いるビルくらいは下から跳んで乗ったりできる人はいたけれど、この世界では見たことがない。
わたしは体が弱くて、身体機能だけで見たら、今の高校生の足元にも及ばなかったけれど、今では平均ちょっとしたくらいはある。
もしかしたら、ソラもこの世界の基準になっているかもしれない。
「少なくとも、神と戦っていた時くらいの力はあるんじゃないか?
本気を出したくても、出せる環境がないから何とも言えないけど」
「……ってことは、やろうと思えば、地球滅ぼせるね」
「セクトゥムくらいなら、片手で倒せるだろうし。
手段を選ばなかったら一瞬、選んで数日だろうな」
全盛期くらいの力があれば、ソラが言っていることは間違っていないだろう。
普通なら、何を言っているのだと馬鹿にするなり、言葉通りの行動をとるのではないかと恐怖するなりするのかもしれないが、わたしはソラがそんなことはしないことを知っている。
というか、わたしが知っているのは、わたしが殺されるまでだから、今では知っている以上に強くなっているだろうし、もっとすごいこともできるかもしれない。
「強すぎる力って、不便じゃない?」
「今のところそうでもないな。むしろ、高額のアルバイトがあって助かる」
「まさか、危険なアルバイトしているの?」
「一般人にとっては危険だろうけど、高所での作業とか、俺的には全然危険じゃないし」
「確かにソラにしてみたら、割のいいバイトかもね」
加えて、食事の心配をしなくていいとなると、案外ソラはお金を持っているのかもしれない。
思いがけず、今のソラの話を聞けたのは、嬉しかった。