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第四十八話:騒がしい夏は始まる

 翡翠が強引に快の手を引っ張っていく。滅多にない強引さに多少快は不思議に思ったが、それでもいつも通りに聞いてやるのだ。


「どうした? 夏休みならちゃんと花火大会に連れていってやるぞ?」

「違う! 聞きたいことがあるの!」


 その反応で今回は真面目な話だと確信した。そして屋上に着けば真摯な瞳を向けてくるのだ。


「一体どうした? お前らしくない」


 こんな場面では相手を和らげてやった方がいいと快は心得ている。相手が翡翠ならなおさらだ。


「…お父さんは敵じゃないんだよね? 信じて良いんだよね?」


 ストレートである。快に対しての質問に翡翠がカーブを投げるなんてことはほぼない。だからこそ快は真っ直ぐ答えるしかないのだ。


「翡翠、確かに今回は風野博士のクローンが敵になったが、お前の母さんは博士のことを信じてた。だからお前も信じてやれ」

「…証拠は?」

「翡翠?」

「証拠がないよ! お父さんの研究はいつも皆を苦しめてばかりだよ! この前のデビル・アイだって今回のクローンだって快を怪我させてばっかりじゃない!

 どうしたら信じられるのか分からないよ……」


 滅多に泣かない少女が泣いている。ブラッドと戦った時も自分の父親の研究が絡んでいた性か、翡翠は責任を感じてならなかった。

 だが、快は一つ溜息を付いて話始めた。


「翡翠、俺の血液が何型か分かるか?」


 いきなり変わった話に翡翠は治療兵ならではの答えを返した。


「A型のマイナス……」

「そうだ。持つ奴は少ないが母さんと同じだ。だが、親父の血液なんてこの世にないだろ? 風野博士は俺が怪我してもいいように、俺が生まれる前に血液操作をして助けてくれた人なんだ。治療兵ならその事の重大さが分かるよな?」


 十分だ。血液がないことが命取りになる場合は多々あるのだから……


「だからさ、お前も気に病むな。風野博士は絶対TEAMが救い出す」


 快の言葉に翡翠は穏やかな笑みを浮かべた。それは夏の空にあっていて快の心を揺さぶる。


「あのさ……、翡翠」

「ん? 何?」


 キョトンとした表情を浮かべた翡翠とは対象的に快は真っ直ぐ翡翠を見た。


「俺は、お前のこと!!」


 快は翡翠に近づいていく。が!


「快ちゃん! 任務だよ!」


 突然飛び込んで来た間の悪い奴が一名。色鳥白真である。


「任務……」


 この時ほど任務を怨んだことはない。そしてさらに続く悪循環。


「あ〜!! 翡翠が泣いてる!」

「快っ! あんた翡翠に何言ったの!?」


 友人達が口々に文句をたれる。間違いなくこのあとにバスタークラスの批難の嵐に遭わなければならない。


「違うよみんな! 快は悪いんじゃないよ!」

「風野さん、何も言わなくていい。篠原は泣かせるようなこといったんだろ?」

「そうよ! 明らかに悲しんで泣いた後じゃない!」


 そうとなれば自然と快に批難がいく。もう告白どころではない。


「快、覚悟なさい!!」


 紫織の鉄拳が快に襲い掛かる。快の恋路はまだまだ厳しく険しそうだ。


そして、そんな様子を傍目から見ていた少女が一人呟く。


「これから楽しくなりそうですね、龍二さん」

「ああ、間違いない」


 騒々しい夏が始まろうとしていた。




これでTHE TEAM!(2)は終わりです。

次は今回より面白くしていきますよ!?

何より、自己紹介コーナー再開しなくちゃ…

では、THE TEAM!(3)でお会い致しましょう☆




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