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第四十六話:任務完了

 任務終了明けの昼、快は自室のベットで夢乃と話していた。

 いつもより満面の笑顔を浮かべている母親と…


「期末試験には間に合わないわね、快ちゃん」

「……母さん、すごく楽しそうだな」

「そう? 父さんじゃないんだから喜んではいないわよ?」


 とは言いながらも、息子との時間を楽しんでいるのは確か。紅茶まで持ち込んでいるのだから……


「それで、SHINは?」

「SHINちゃん? 陽子ちゃんと遊んでるわよ」

「母さん!!」


 いきなりの爆弾発言に快はベットから飛び出そうとしたが、夢乃の魔力がそれをさせなかった。


「大丈夫。SHINちゃんの記憶は科学班が消したわ。だから陽子ちゃんに殺されそうになった記憶はないの。さらに陽子ちゃんには悪かったけど、SHINちゃんを殺そうとした記憶はないわ。もちろんその場にいた修ちゃんと翡翠ちゃんの記憶もね」

「それって……」


 快は何とも言葉では言えない感情に支配されたが、夢乃は紅茶を一口飲んで答えた。


「いいのよ、まだSHINちゃんは七歳なんだもの。これから箒星小学校に通って大きくなったらいいの。

 快、SHINは小さい頃は病弱だったから幼稚園に行ってないと記憶操作したわ。

 けっして造られたって言わないこと。それにね、母さんは快が立派なお兄ちゃんになってくれると思ってるわ」

「……あいつが俺を兄だって思ってくれるなら俺も弟だって守るさ」


 八年前、自分の性で流産した夢乃に対しての謝罪の気持ちは強いが、弟が出来たことに少しだけくすぐったい気持ちにもなる。


「だけどどうする? 快ちゃんも悪いところだけ記憶を消してあげてもいいけど」

「夢乃さん、そりゃ甘やかしすぎだろ」


 楽しそうに部屋に入って来るのは自分が期末を受けられないぐらい気絶させた父親である。


「よう! 相変わらず機嫌悪そうだな」

「あんたの性だろ、今日の期末受けられなくなったのは」

「お前どのみち動けないだろ」


 確かに義臣の言うとおりだが、ペンぐらい動かす力はある。


「あれぐらい一日でやれ。それに大原ちゃんから全教科の問題は預かってるから」


 さすがは担任である。全て予測済みだ。快は問題を受け取るなり、さらさらとペンを動かした。


「それで、話してくれるんだろ? 今回の件に俺達を動員した本当の理由」


 テスト片手に話は出来る。快はそれだけ優秀である。


「ああ、まず紫織達に細胞を盗ませたり、修に情報収集させたりと高校生バスターをやけに使ってたことから気になってるだろ」

「ああ。今回の件は親父にしてはありえない人選が多かった気がしてな」


 皮肉が半分だが、義臣はさらりと答えた。


「あれは囮だ。TEAMの高校生バスターの力が強いと思わせとけば、さらにその逆に取られたとしても奴らをおびき寄せるきっかけになった」


 十分な返答である。TEAMの細胞というだけで科学者達が涎を垂らして追っかけて来たのだ。

 おびき寄せるには持ってこいの囮達である。だが、納得いかないこともある。


「じゃあ、咲とライ・タナーを闘わせた理由は?」


 ライ・タナーの力は咲の倍だった。そんな相手と咲を闘わせたのである。


「……咲から言い出したことだ。相手が自分以上の力量だったらすぐに航生を呼び戻せとな。

 分かってると思うが、咲は影の部隊長だ。お前達は酷だと思うかもしれないが、命をかけてもらうしかない」

「……ああ」


 快はそう答えることしか出来なかった。影とはそんな部隊だ。


「あと、陽子の監視は細胞バンクのスパイ、さらにあいつがSHINを破壊する事が目的でこっちに戻って来たと情報が入ったからな。

 まあ、そのあたりはお前も気付いていたはずだろうがまさか本当にSHINを守ってくれるとは……」

「俺と同じ細胞を持つクローンの破壊、それでピンと来たよ。

 親父が細胞関連のヘマを仕出かすとしたら八年前しかない。それに細胞バンクなら人間を作り出す可能性があるし、普通ならそれを守れというはずだ。

 まぁ、修が掴んだ情報があったから確信したんだが」


 任務前、修が見せてくれた細胞バンクのデータ中にSHINが人間である可能性が高いと確信した。

 陽子の性格から細胞バンクの最高傑作であるSHINが危険因子である以上、自分の失態だと思い破壊する可能性を考慮していたのである。


「仲間に弟を殺させるわけにはいかないだろ」

「上出来だな。とりあえず、今回の件はぎりぎり合格だろう」

「あら、それは厳し過ぎない?」

「夢乃さん、快は隊長の任務は果たしたが先発隊は大地が重傷、さらに修と陽子が闘う羽目になり、おまけに翡翠も魔力を使い果たしてるんだ。まだまだあまい!」


 結局は予測通りの点数を父親に出される。しかし、今回は夢乃が快の味方だった。


「あら、そういうならあなたも今回は落第点ね」


 してやったりと快は微笑を浮かべたが、やはり義臣は鮮やかに、尚且つ快を激怒させる方法など心得ているのだ。


「ああ、だから夢乃さん、今夜は慰めてくれよ」


 夫婦のうっとうしいぐらい甘い空気に息子はブチ切れた!


「おい……クソオヤジ、さっさと仕事してこい!!」


 任務完了……。



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