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第四十一話:リミッター解除

「相原哲、僕は相原哲です」

「聞いてる。相原陽平の息子だな」


 龍一はすまなかったと刃を下ろした。

 まだ中学生ぐらいの陽子の兄、相原哲と龍一は遭遇していた。

 この任務でもし保護できるなら保護しろと言われていた少年だ。


「どうする、お前もTEAMに来るか?」

「是非お願いします」


 哲は子供らしい笑みを浮かべた。


「それより龍一さん、片岡航生さんをご存知ですか?」

「ああ、合流する予定だがあいつがどうした?」


 片岡航生は翔の父親だ。今回の任務で合流する予定の男である。

 哲はすっと一枚のディスクを龍一に渡した。


「これを篠原義臣さんに渡してください。片岡航生さんが掴んだ細胞バンクの実態とブラッドの関係です。

 おそらく風野博士も関与しているとおっしゃっていられました」

「そんなバカな…博士はTEAMを売るような人じゃない」

「ですが、風野博士の研究仲間であったライ・タナーがいます。可能性はゼロとは限りません」


 哲の言うとおりだった。細胞バンクは風野博士が立ち上げた組織だ。

 義臣の信頼を得てTEAMをかくれみのにし、暗躍するにはもってこいだ。

 特に敵対する組織と風野博士が繋がっていることなど疑うはずもない。


「片岡航生さんは前から博士を疑っていらっしゃいました。

 おそらく義臣さんの子供を研究対象にしたのも彼の好奇心だけではないのではと」


 言われればかなりの不可解なことがある。だが、風野博士がTEAMに施してくれたのはプラスにしかなっていない。


「とりあえず、美咲と合流する。

 俺は仲間を信じたいが、もし風野博士が裏切るような真似をすれば…」


 影の総隊長としてはTEAMに害をなすものは抹殺しなければならない。

 特に今回はブラッドが、氷堂尊氏が絡んでいるのだから…


「哲、お前は兄弟が二人いただろう、二人を連れて早く戦線を離脱しろ」


 そして龍一は素早く印を結び哲の腕に刻み込んだ。


「この術式をお前の腕に刻んでおく。

 お前がTEAMに行きたいと念じれば飛ばしてくれる。

 出来るだけ早く離れるんだぞ」

「はい」


 そして二人は離れた。



 霧澤美咲は巨大ビーカーの水の中で目を醒ました。コポコポと水の音が暗室に広がっていた。

 胸の傷が少し塞がってるということは誰かが治療してくれたということ。

 そして彼女の目に自分を刺した張本人がいた。


「は…かせ…?」


 朦朧とする意識の中、彼女は言葉を紡いだ。さっきの出来事は敵の幻術だったのかと思ったが、それを検討違いと思わせる言葉が降り注がれる。


「残念ながら君の命運はここまでだ。

 霧澤美咲君、君は私の制止も聞かずにこの研究室にたどり着いてしまったんだからね」


 美咲の周りにはクローン人間や生物の屍が無数あった。

 間違いなく禁忌の実験が行われていたに違いない。

 美咲は自分が明らかに研究材料にされていると自覚するのに時間がかからなかった。影としての彼女の目を風野博士に向ける。


「…違うでしょ、誘い込んだんだ」


 美咲は全てが風野博士の思惑だったと知る。TEAMにいたのはこのため…


「だけど!! 私一人で事足りるなら早い!!」


 美咲はリミッターをはずし周囲の研究材料を消し去っていく。


「風野博士、いや、風野秀生!! TEAMを裏切った罪、その命をもって許そう」


 美咲は風野博士に躍りかかった!




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