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第四十話:闇が現れた日

 掃除屋ブラッド。氷堂尊氏が組織するバスター集団。その悪名は掃除屋界の中でもリスクファクターとして轟いていた。


「デビル・アイ、それが今回の一番危険な代物か」


 ブラッド本社を目指し龍一、美咲、風野博士の三人は走る。基本は四人小隊だが、後一人は現場で合流する手筈になっていた。

 簡単に言えば、ブラッドのスパイとして入り込んでいる男がいるので、その人物と合流しろとのことだ。


「ああ、氷堂は数年前に義臣に片目を斬られて視力を失ってる。

 だが、風野博士がクローン技術を用いて義眼を作り上げたんだ。それが利用されようとしてる」

「利用ならまだいい。私の義眼がデビル・アイなどといい名前に出来る技術者達がブラッド内にはいる。そっちの方がこの先もっとも危険な事態だ」

「確かにな」


 科学の危険さを理解しているからこそ、今回は慎重に事を運ばなければならなかった。TEAMの精鋭達が選ばれたのもそれだけの案件だということだ。


「やはりそいつらも始末しておくべきか」

「いや、優秀な科学者ならば生かしておくべきだ。ブラッドについているからといって完全に敵だと思い込むのは危険過ぎる。

 あの氷堂尊氏なら科学者の一人や二人、脅すことなどなんともないだろう」


 正論だった。相手はバスターではなく科学者だ。氷堂尊氏が利用しようとしているだけの可能性は捨てきれないのである。


「だったらどうする? 彼等は殺意を見せれば殺して投降するなら保護しろというのか?」


 美咲は龍一に尋ねた。最終判断は隊長が決めることだ。


「……幼い子供だけは殺さず捕獲。他の者は抹殺対象としてかかれ。例え投降して来ても全ての自由を奪え。何があっても隙を見せるな」


 龍一の命に緊張が走る。全ては自分達とTEAMを守るため。甘さは命取りになる。


「了解」

「では、一旦ここで別れる。俺は氷堂の抹殺にあたる。美咲と風野博士は科学者達と応戦してくれ。絶対に死ぬな!」

「ああ」


 それ美咲と龍一が交わした最後の言葉だった。龍一と分かれたあと、裏切り者が牙を向いたのである。


「……霧澤美咲か、TEAMの影は優秀な人材が集まると聞いたが、噂以上のサンプルだ」

「博士!! 下がってください!!」


 美咲は風野博士を後ろに下げ、声がした方に躍りかかった!


「ちっ!」


 声の持ち主は美咲の攻撃を交わしさらに闇へと入り込んでいく。


「博士! 奴を追います!」

「ダメだ! 深追いするな!」


 しかし、美咲はその忠告を聞かずに追い掛ける。


「美咲! 止まれ!」

「止まるわけにはいきません! 今ここで手掛かりをなくすわけには!!」

「伏せろっ!!」


 美咲は風野博士に庇われ地面に伏せた。


「ちっ! 溶解術か!」

「その通りだ」


 闇から現れた男は不気味な笑みを浮かべた。その顔は知っているもの。


「えっ!」


 次の瞬間、美咲の血が滴り落ちる。胸に刺さった違和感は間違いなく刃物。


「だから追うなと言ったんだ。霧澤美咲」


 風野博士が正体をさらけ出した瞬間だった。



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