第三十八話:時間を砕く拳
リミッターをはずすこと。それを使う事態が起こるというのは、間違いなく自分が全力を出さなければ勝てない敵が目の前にいることだ。さらに勝ったとしても確実にしっぺ返しを喰うため、既に自分の身の安全は捨てていることになる。
だが、やらなければならない時がある。誰かを守るためという名目が限界を超えることを促してくる。しかし、それ以前に理屈を抜きに自分が動いてしまうから不思議だ。
「さて、俺も実践は久しぶりだからな」
龍一は屈伸運動をし始める。間違いなく彼自身も全力を出し切るつもりだ。
「おじさん、俺達は親父に反発してばかりだけどさ、多分龍二が一番素直だと思う」
「そうか。まぁ、俺達は息子をほったらかしにしてばかりだからな。だが、快君達のおかげだろうな、あいつはちゃんとまっすぐに育ってくれた。ありがたいことだ」
龍一は笑みを零した。本当に心からそう思ったからだ。
「だったら俺も礼をいっておきます。あいつを家に置いてくれて嬉しかった」
「そうかい」
それが最後だった。その場にいた者達は一斉に風野博士に殴り掛かった!
「まずは四人」
覇気が快と龍一以外の四人に襲い掛かり戦闘不能となる。その時間僅か三秒。
「ふざけた力だ」
「君ほどではないよ、瀬野龍一」
たった一秒で龍一の後ろに風野博士はついていた。
「くうっ!!」
強烈な蹴りが龍一を襲うが、やはり元・影の総隊長の実力は半端ではなかった。しっかりと足を掴んでいたのだ。
「快!!」
「いけっ! 神龍!!」
神々しい龍神は風野博士に襲い掛かるが、それを片手で止める男がいたのだ。
「危ないな。神龍は義臣じゃないと使いこなせないものだ。さすがに暴走したら私も疲れてしまうからね。消えてもらうよ」
そして弾ける……!!
「ばかな!!」
「油断するなよ、義臣の遺伝子は継いでるんだろう?」
まさに一瞬の影分身。その分身の強烈な蹴りを快は背中に受ける。
「ガハッ!!」
「快っ!!」
龍一は駆け寄ろうとしたが風野博士はそれをさせない。
「近付かせたりはしないよ。時空系の力を壊す力の持ち主なんて普通はあってはならない存在だからね」
「ほざくな! お前の方がよっぽどあってはならない科学者だろう! 俺達を散々弄びやがって!!」
龍一は快の前に立ち塞がる風野博士に再度躍りかかる。
「砕けろ!」
「させない」
それは時間の狭間での戦い。相手の時間を壊す龍一の乱打が風野博士に襲い掛かるが、
「……やはり弱くなったようだ。あの時、美咲が殺された時の君に戻ってさえくれれば少しは私とも戦えただろうに」
「……!! お前がどうしてそれを知っている!!」
拳が止められ、風野博士は答えた。
「私が殺したからだ。それ以外思い付くかい?」
そして貫かれる胸。しかし、その痛みを龍一は感じなかった。激怒と共に龍一はその場に膝を折りすべてを解放する。
「ようやくすべてが繋がったよ。風野博士、あんたをこの世から消し去る」
そして話は激動と言われた過去に戻る。
それはまだ快達が生まれて間もない頃、細胞バンクがまだ設立された頃の話へ……




