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第三十七話:風野博士

 信じたくないことはこの世には沢山転がっている。快の目の前に現れたものも否定できるならすぐに否定したい。

 まさか自分の父親達がずっと助けたがっていた翡翠の父親が香を殺したのだから……



 優しさに溢れた人、穏やかな人、そして不器用な父親だったと義臣が翡翠に語っていたのは幼い頃。ただ、目の前にいるのは桁違いの力を持つバスターだ。


「久しぶりだね、快君。私がTEAMを離れてから十数年にのぼるから君に記憶など」

「あります。物心は三歳の時には付いてますから」


 快はサラっと答えた。それは動揺を隠すため。


「そうか、私が思ってた以上に優秀だったか。やはり義臣の遺伝子はかなりのレア物というわけか」


 風野博士は笑った。それは科学者としての喜びに満ち溢れていた。


「さて、快君。君に頼みたいことがあるんだが聞いてもらえるかな?」

「聞くだけなら」


 嫌な予感がする。義臣が話していた風野博士とのイメージがかなり掛け離れている。人のための研究をする科学者、それがとてもこの男だとは思えない。


「なに、簡単なことだよ。君に私の研究材料になってもらいたい。もちろん寂しければTEAMの高校生バスターの面々も一緒にね」

「断るっ! 一体あんたは何者なんだ!? 親父はあんたが人を救うために研究を重ねてきたと言っていた。

 だから今回あんたの情報を掴んで助けに向かったんだ。その結果がどうしようもない男だったなんてふざけんじゃねぇよ!」


 快が風野博士に突撃していこうとしたが、それを止める者達が現れた。


「快、お前達高校生バスターはここまでだ。今回は引け」


 そこに現れたのは影を率いた瀬野龍一だった。


「まだ任務は終わってない。俺達の任務は細胞バンクの壊滅と要人の始末。それに今風野博士が含まれた。この男が今回の首謀者なんだろう!?」

「そうだ、だからお前達は引くんだ。風野博士に一対一で勝てる相手などこの世にはいないからな。だから義臣が来るまで俺達が食い止める」


 足手まといという現実が目の前にある。戦場を離れてなお自分より強い龍一がそう言うならば命令には従うべきだ。だが、快は逆らった。


「親父が来るまでどれだけかかるんだよ……」

「さぁな。だが、5分は稼ぐ自信はあるな」

「だったら行けない。心配しなくても足手まといにはならない。ただ、5分後のことは全て親父にかける。それなら問題ないか?」


 快は一気に力を上げる。間違いなく自分の力のリミッターをはずすつもりだ。


「……それなら5分30秒はもつが、期末は諦めるか?」


 龍一はニッと笑った。


「ああ、一日で全てやるから心配しなくていいよ。龍二と違ってすでに範囲全てを学習済みだ」


 そして空気は変わる。激突寸前のたわいのない会話だった。



放置プレイしてすみませんでしたっ!! 連載再開です☆

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