第三十六話:弔い合戦
「陽子! 翡翠!」
修は二人を抱えると一瞬のうちにその場から消えた。
「あらあら、残ったのは隊長さんだけ?」
「ああ、弔い合戦は隊長が出張れば充分だ」
快は魔法の弾を浮かせる。召喚系の快にとっては珍しい戦い方だ。
「そう言わないでよ。仕方なかったのよ、哲達を殺すことになったのも。私を出し抜いて細胞バンクの秘密を調査しようなんてするから」
「人間兵器を作るなんて禁忌を犯したからだろうが。掃除屋として見過ごすわけにはいかないんだよ!」
覇気が香に叩き付けられる。ビリビリ来る感覚に香は多少の快感を覚えていた。
「ふふっ、さすがは解析できない細胞の持ち主ね。風野博士の研究結果は見事に出てるわけか」
「研究結果? 何のことだ?」
いきなり実験体扱いされ快は少々不機嫌になった。
「あら? 優しい社長は何も伝えてないの? あなたは確かに篠原義臣の息子だけど、あなたもSHINと同じように様々な細胞が組み込まれている。
ついでに夢乃さんを溺愛してるのも優秀な人間兵器を作る母体だから。まっ、私達以上に篠原義臣は策略家なんでしょうけどね」
快は静かになった。さすがに知らされていない事実にショックを受けたのだと香は思った。
「それは事実なのか?」
「ええ、あなたが一番よく知ってるはずでしょう? 自分の出来の良さを考えたらね」
「そうか……、あの親父なら確かにやりそうだな。だがっ!!」
無数の魔法弾が香に襲い掛かる!
「母さんを実験台に使ったんだったら、例えどんな理由があろうとあの親父を消す!」
向けられる矛先が明らかに違うのではないかと冷静な者がいたらつっこんでいたはずだ。しかし、今の快に何を言っても無駄だろう。
本人いわく、前提としてマザコンではないが父親より控えめに見ても百倍マシ、寧ろ結婚したという点については頭を下げてもいいレベルらしい。
「なるほど、やっぱり考えて戦ってるわね。これじゃあ、あなたに近づけない」
魔法弾をよけながら香は心の中で舌打ちした。香は近距離戦タイプだ。一発快に当てることが出来れば、間違いなく快に致命傷を負わせることが出来る。
「だけど、それ以上の策はないのかしら?」
「ある」
それは一瞬だった。香の後ろに快はいたのである。
「雷光」
「いやあああ!!」
香は感電した。そして途切れていく意識の中、最後の力を振り絞って快に言う。
「ふふ、さすがね……」
「……どうして避けなかった? 元・影にいたあんたが今のを避けられないわけはないと思ったが」
「ええ、あの程度ならね。だけど残念、私も見捨てられたのかしら……」
香は意識を失った。そしてその言葉の意味はすぐに分かる。
「ご苦労だった、私のクローン。作り出した甲斐があったみたいだ」
「なっ……!!」
現れた人物に快は絶望した。
本当に更新遅くなってすみませんでした! また頑張って書いていきます☆




