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第三十二話:翡翠激怒

 義臣のチームが動き出した頃、迷子になっていた翡翠も大ピンチを迎えていた。しかし、やはり治療兵なのか、攻撃を避けるだけ避けているためにかすり傷すら負ってない。


「しぶとい小娘だ。さっさと我々の研究材料になれ!」

「絶対嫌よ!」


 翡翠を追いかけているのは細胞バンクの医療兵だった。主に細胞バンクの研究材料をかき集めることが仕事だが、緊急時には戦闘のスペシャリストとして戦う。

 だが、やはりTEAMのメンバーの細胞は喉から手が出るほど欲しいのか、私情を絡めた戦闘が繰り広げられている訳である。


「とにかく外に出なくちゃ!」


 逃亡することが治療兵にとっては第二任務になる。しかし、翡翠の天然迷子ぶりは普通ではなかった。よりによって、今回快達のチームが破壊を目的としていたクローン技術の核に来ていたのである。


「まずい! 攻撃をやめろ!」


 医療兵達は一斉に攻撃を止めた。中にあるのは自分達の宝だ。一応、それなりの魔法防御や耐震技術等は備わっているが、リスクを負うつもりもない。


「この中から逃げられるかも!」


 翡翠はロックのかかったドアをおもいっきり吹き飛ばす。そして上に出るために屋根を破壊しようとしたが、飛び込んで来た光景に翡翠は愕然とした。

 医術に携わるものなら何があってもやってはいけないことがある。


「やめてくれ! 俺を殺してくれ!!」

「いやぁ! 私の手足を返して!!」

「怖いよぉ!」


 翡翠は幼き少年の元に走った! 今にもそのからだがバラバラにされそうだったのである!


「危ないっ! 気功!!」


 切断機が破壊されるが、その隙が命取りだった。翡翠の背中が撃たれていたのである。


「せっかくの材料を無駄にしないでくれないか?そいつは稀血の持ち主でね、怪物を作るには必要なんだよ」


 しれっと言う医療兵に、翡翠はブチ切れた。


「細胞再生」


 撃たれた背中が一瞬のうちに綺麗になる。


「なっ! 馬鹿な!!」

「馬鹿はあんた達よ! 医術に携わるものなら何があっても人体実験はやってはならない禁忌!あんた達には生き地獄を見せてやる!」


 そして一瞬だった。翡翠は追いかけて来た医療兵達の腕に軽く触れた途端、一気に魔力を爆発させる!


「ぎゃあああ!!!」


 医療兵達の筋肉はずたずたに切り裂かれた。


「しばらく倒れてなさい!」


 翡翠はこれでも加減していたのである。



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