第三十一話:動き出したチーム本隊
死神などというものは一応この世に存在している。ただ、掃除屋界のなかでと修正しておくべきだ。
「……いいゲームだね。私も今まで何度も命の危機に曝されたが、ここまで命懸けで向かってくるものはいなかったよ。しかも運任せでね」
岩崎はほくそ笑んだ。そして大地も笑みを浮かべる。
「俺もだ。何度もこいつを使ったことはあったが、ここまで恐怖にかられたことはない。勝率百パーセントじゃなければ使っちゃいけない禁術だからな」
「人殺しの召喚だからか?」
「ああ、力の加減は出来そうにないことも明白だからな」
大地は汗が背中を伝っていくことを感じていた。いつも以上の緊張から来る事だけは分かっていた。
「だが、今回ばかりは綺麗事すら言えない。勘弁してくれよ」
話はそこまでだった。死のルーレットは回り始める。一秒、一回転が互の心臓に悪影響を与えている。そして針は止まった。
「……こちらの勝ちだ」
「へへっ、俺の負けかよ」
大地は笑った。そしてルーレットは消え、死神が大地に向かってくる。
「残す言葉を言え」
死神は大地にたずねる。
「普通なら礼を述べたり、愛しいものに何か伝えるべきだが、俺の願いはただ一つ。あいつを倒してくれ」
「承知した」
そして死神は岩崎の方を向く。
「主人の最後の願い、お前の命も頂こう」
「何っ!」
一瞬で岩崎の胸は貫かれる。さらに大地の胸も貫かれた。
「馬鹿な……!」
「相打ちだ、馬鹿野郎……」
二人の意識はそこで絶たれた……
その同時刻、義臣のチームが動き出す。
「長かったな、ここまで」
義臣はそう呟く。言わんとしていることは分かる。
「ええ、翡翠ちゃんを預かって十六年も経つんだもの。だけど、ようやく二人を会わせてあげられる」
夢乃はニコッと笑った。それは今回義臣達がもっとも重要視していたことを表していた。
「ああ。だが、この任務をしくじればまた掃除屋界は大荒れだ。おそらく予想以上の妨害に遭うだろうが必ず助け出せ。あいつをな」
義臣達の任務が始まった。




