第二十八話:迷子発生
TEAM本社。山岡優奈は今頃細胞バンクで戦っているであろう、恋人の大地や同級生達の事を思い浮かべながら別の任務に出立するところであった。
掃除屋という家業上、本社の襲撃でもない限り他の依頼も無視できないのである。
「優奈、あいつらが気になってるようだな」
「氷堂さん」
後ろを振り返れば、隊長の氷堂仁が立っていた。
「ええ、さすがに不安です。もちろん、信じてはいますけど」
苦笑しながらポニーテールが風でさらさらと揺れる。
「そうだな。だが、こっちも気は抜けないんだ。さっさと終わらせた場合、別の任務に当たる予定だからな」
仁の口元が少し吊り上がった。
そして同時刻、快のチームが戦火上がる細胞バンクを見下ろしていた。
「快! 早く突入させやがれ!」
「まだだ! 白達が戦線離脱してないだろう! お前本当に影に所属してんのかよ!」
快のツッコミはもっともだが、任務前に喧嘩を勃発させる隊長も珍しい。そんな中でも冷静なのが修と陽子である。
とはいえ、陽子も反旗を翻した立場に立っているため、若干の余裕はないようにも見える。
「まったく……、もう一度作戦を説明するぞ。今回は俺と陽子はクローンの破壊、そして修と龍二は各重要人物と交戦。まずくなったら即時に戦線を離脱すること。特に龍二、絶対深追いするな」
釘を刺すあたりはさすがは快というところ。任務成功率を上げるためには小さな事ほど逃さない。
「分かってるよ。それよか、いくら先発でもあいつらが出て来るの遅くねぇか?」
龍二の問いに修は冷静に考え出す。
「細胞バンクって迷路みたいな構造だよな」
「ええ、白や翔は方向感覚完璧だけど、翡翠と大地は平気なのかしら……」
言われてみて気付く事実はある。おそらく天然迷子と気配は見つけられても地図を覚えてない奴が一名……
「今すぐ行くぞ! 突撃だ!」
本隊のはずなのに先発隊の援軍として快チームは任務を開始することになった。
そして、その予想は見事に当たっている。
「ここはどこだ……」
大地は見事に迷っていた。とはいえ、気配を辿るか天井さえ壊せば何とかなるため、そこまでの危機感はない。
「白達が第四研究所の細胞を回収してるはずだから、俺はその隣の第三辺りにいるはずだよな」
その曖昧さが非常に危ない。しかし、何度かの襲撃にかすり傷一つも負ってないのは幸いである。
「とりあえず、あの辺の部屋にでも入ってみるか」
「それは困る。大切な臓器が保管されているのでね」
大地は声のする方に振り返った。




