第二十七話:先発隊の実力
緑と幾重にも張り巡らされた結界に囲まれた細胞バンク。いかにも研究所という造りの建設物の数々には極秘事項が満載。そこが今から血の海へと変わっていくのである。
「さぁ、久しぶりの先発隊だ」
白真は楽しそうに肩を回した。先発隊は好き勝手に破壊できる特権を与えられている訳でもないが、それと同様の事は出来るので好戦的な者やストレスを抱えた者達が挙って受けたがる部隊だ。
しかし、油断してもらうわけにはいかないので、翔は念のため白真に注意を促した。
「隊長、あまり油断するなよ。今回は治療兵までが先発隊に入れられてるんだ。何があっても無茶はやるな」
今回の先発隊は白真が隊長であり、その下に翔、大地、翡翠がついている。決して弱くもなく、実に安定の取れたチームではあるが、白真を除く三人は多少警戒していた。
「大丈夫! 翡翠は無理させないって! 攻撃補助が任務なんだし、怪我させたら快ちゃんに何て言われることか……」
ぞっとするという感覚はさすがの白真にもあるらしい。しかし、それを聞いて何も理解してないのが翡翠らしい。彼女の頭の中では、治療兵が怪我をしてはいけないという使命からだとしか思考が働いていない。
「まぁ、行こうか。大地、翔、先制攻撃の準備は?」
白真の問いに二人はニッと白い歯を向けて答えた。
「すでに完了だ」
その瞬間、地面が崩れ、さらに突風が木々を倒していく! 大地と翔の魔法だ。
「さらに追加だ」
召喚剣士である白真は風に火を乗せ火災を起こす。
「あ〜、やり過ぎたかな」
やれやれという表情を白真は浮かべるが、全く罪悪感はない。それは他の三人も同様だった。
「問題なさそうだ。敵さんもやっぱり立派な掃除屋みたいだし」
周りにはいかにもベテランのバスター達がズラリと四人を取り囲んでいた。
「TEAMと聞いていたが、どうやら篠原義臣が直々に動いてるわけではなさそうだな」
決してなめられているわけではない、長年の経験がそう告げさせていることも分かる。しかし、その考えが隙を生む。
「ねぇ、やっぱり社長って予知能力者なのかな」
翡翠の表情はすごく嬉しそうだった。取り囲まれたというのはピンチの一つでもあるのだが、それすら上回る喜びがここにある。
「間違いない。翡翠、頼むぞ」
「うんっ! ヒート!!」
そして起こる三人の少年の電光石火! いつも以上の力を体の負担にならないように引き出す翡翠の攻撃補助の魔法。義臣が彼女を先発隊に入れたのはそのためだ。
「TEAMってのは篠原義臣が組織してんだ。お前ら程度の力で勝てるわけがないだろう」
わずか一分で戦闘は終わっていた。




