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第二十一話:元・影の総隊長

「メルト」

「くっ!!」


 咲は紙一重で避ける。いくら時空系といえども相手が自分を上回る力を持っていれば強敵となる。

 ライは様々な人間の細胞をエネルギーに変えて来たと同時にその能力までも身につけていた。


「相手の時間を支配できない気分はどうかな、咲嬢?」

「最悪です。敵なら尚更ですね」


 それだけ答える余裕があったのはさすがと言うべきだった。影の部隊長の実力は相手と冷静に戦うスキルも要求される。


「実に結構な答えだ。しかし、その細胞を頂く!!」

「きゃあ!!」


 乙女らしい叫び声が響く。しかし、それが罠だとライはすぐに見破った。


「咲嬢、そんな幻術など私には効かない!」

「くっ!! リターン!!」


 溶解する手が咲の肩に触れた直後、咲は時間を巻き戻し肩を元に戻す。もちろん、ライの奪ったエネルギーも無効化される。


「すばらしい能力だ! さすが影の部隊長殿だ! その細胞を寄越せ!!」


 まるで獣のようにライは咲に飛び掛かって来た!


「させません! ストップ!!」

「うっ!!」


 ライの体は制止する。その隙をついて咲は銛を換装する。


「散りなさい!」

「かかったな」


 皮肉な笑みが咲に恐怖を与えた。そしてライの欲望を満たす光景が浮かび上がる。


「その細胞、確かにいただいた」


 自分の体が少しずつ溶けていく。時を支配する力がない……


「時空系といえども点穴をつかれては魔力は出せない。だが、私は優しいほうでね、遺したい言葉だけは聞いておく主義だ。お前は何を遺す?」


 虚ろな意識の中で咲は答える。


「あなたに勝てる人が後ろにいます」

「なっ!!」


 咲はライの手の中から消える。そして助けた人物の手の中にいた。


「全く、義臣の奴も大原ちゃんも人使いが荒いもんだ。高校生バスターが手に負えるレベルじゃないだろうに」


 飄々とした、しかしどこからか恐るべき威圧感が溢れ出している男がライを見ている。掃除屋界でかつて篠原義臣の部隊で暗躍していた男、そして今回召集された元・影の総隊長はそこにいる!


「瀬野龍一!!」

「ああ、正解だ」


 瀬野龍二の父親だった。




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