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第二十話:影の部隊長

 信じられない事実は目の前にある。それを本当に自分達のボスがやったなんて思いたくはない。


「ライ・タナー。おしゃべりはそこまでにしてください」

「咲……!」


 突如その場に咲が現れる。黒装束の出で立ちから影の任務で来たことは明らかだ。


「これはこれは、和泉咲嬢。影の部隊長自らお出ましとは」

「社長命令だからです。ライ・タナーを始末せよとの司令が下りましたから」


 修は息を飲んだ。その殺気はとても自分が入り込めるものではなかった。咲が影に所属している以上、分かってはいたことだが……


「なるほど、確かに本気らしいが私もここで終われなくてね。そこにいる時枝修の細胞が必要だからな!」


 高らかな金属音が響き渡る! ライと咲の短刀が交じり合った。


「修さん! すぐにこの場から逃げてください! 瞬間移動だけは使わないでくださいね!」

「ああ! すぐに増援を連れてくる!」


 開け放たれていた窓から修は飛び出した。あの場に残っても自分が役に立てることはないと判断できたからだ。


「あの程度のスピードなら!」


 ライは修の元へ移動しようとしたが咲がそれをさせない。時空使いだからこそ出来ることがある。


「言ったはずです、修さんのもとへは行かせません。あなたの時空間移動は私が封じ込めます。タイムルーム!」


 咲とライを取り巻く時空間が歪む。簡単に言えば、時間の感覚を無くしたということだ。


「なるほど、確かにこれでは時枝修を追い掛けられんな」


 ライは咲に向けて殺気を放つ。それは獲物を奪ったものに対する獣のようだ。


「……ようやく本性が現れてくれましたね。私も手加減するわけには参りませんね」


 咲は直槍を取り出した。それは時空の中に閉まっている彼女の武器だ。時空タイプが無敵の強さを誇るのも、いろいろな戦い方を併せ持つものが多いからだ。


「なに、今ここで取り逃がしたとしても影の部隊長殿が代わりにサンプルとなってくれる。それもまた魅力的なんでね」


 次の瞬間、咲は左に跳びライの攻撃をよける。


「ほう、いい判断だ」


 ライが触れた床は見る見るうちに溶けていき、それはライのエネルギーへと変わる。


「溶解術……噂通りですね」

「そういうことだ。咲嬢」


 ライは不気味な笑みを浮かべた。



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