第十七話:テスト勉強
「だからさ、なんでお前らはテスト前になるとここに来るんだ?」
快は気だるそうにこの部屋に集った者達に尋ねた。もはや快の部屋にテスト前に駆け込むことは中学に入学したときからのお決まりである。
快としては修と大人しく勉強する方が楽でいいのだが、そうさせないのが他のメンバーである。白真に至っては、ほぼノリでこの部屋に来ている。
「まあまあ、快ちゃん! みんなでやった方が早く終わるよ。何より楽しくていいでしょ!」
このノリで毎回学年ベストスリーに入るのが色鳥白真という奴である。
「白ちゃんの言うとおりだよ! 大原ちゃんの数学の問題って難しいじゃない」
翡翠も意見する。ちなみに翡翠も数学以外は学年上位である。
「そうだぞ。ほら、ここの英文なんて訳すんだ?」
「俺は文法そのものが分からん!」
赤点コンビの翔と大地はすでに快のノートを奪っていた。
「勝手に人のノート奪うな!」
「あら? 快、ここの範囲今回追加されたの?」
紫織が自分ノートと見比べながら尋ねる。彼女が来ることはまだ良しとしている。自分が任務で休んだ時は、紫織がノートを貸してくれることが多々あるためだ。
「ああ、いけるとこまでいきたいらしいからさ。まぁ、暗記が増えただけだから問題ないだろう」
「そうね。じゃあ化学のノートは貸しとくからリーディングのノートは借りるわ」
等価交換の成立に快は賛成派である。
「それより修ちゃん、陽子と一緒に勉強しなくていいの? 今回誰も範囲教えてないんじゃない?」
おそらくそれはないが、修と話をする機会を与えるために白真がついた嘘だろうと空気で分かる。
「心配するな。あいつは頭の出来が違うからな」
「だったら行ってこい。この数式の答えが違ってるからな」
快の指摘に全員がニヤリと笑った。修が毎回満点しかとらない数学の問題を間違えることは、それだけ心の中で何かが引っ掛かってるということ。
「……隊長命令なら仕方ないか」
そして修は快の部屋を出て行った。
「あの二人大丈夫なのかな?」
翡翠が不安そうな声で言うが、快は全く心配いらないとあっさり答えた。
「大丈夫だろ。修は陽子が好きなんだからさ」
「快ちゃんがそんなこと言うなんて明日は雨かな」
白真が言ったとおり、翌日は雨になった。




