第十話:ごまかし無用
「よぉ、ようやく帰って来たか」
広い玄関の前でばったりと剣道部三人組と快は出くわした。
「ただいま快ちゃん!」
白真は快に抱きつこうとしたが、いつものことだからと快はひらりと避ける。
「たったとシャワー浴びてこい。そのまま食堂にいくなよ」
「学校で浴びて来たよ! 剣道部に対する偏見反対!」
夏場の剣道部は確かに汗まみれになるが、一日中あの異臭を放っているわけでもない。
「偏見じゃないさ。ただいつもにまして温度が高く感じただけだ」
「快、それは間違いないな」
修は同意する。そして視線は龍二へと向くのだ。
「おい、お前らなんか俺に怨みでもあるのかよ……」
今日の部活といい快の態度といい、やけに二人は龍二に突っ掛かっていた。
「確かにそうだね。快ちゃんは龍二のことを翡翠が話しているのが気にくわないだけでしょ」
「お前らまだくっついてねぇの!?」
快のげんこつが龍二に直撃する。
「だけど、修ちゃんは陽子絡みのことを龍二が隠してるのが気にくわないんでしょ」
核心に迫る発言が龍二を逃さない。しかし、やはり「影」は飾りじゃない。
「隠すも何も、快の方が詳しいんじゃねぇの?」
今日にでも義臣の命令が下ることを龍二は知っていたのである。
「どうなのかな、快ちゃん」
快はため息をついた。どっちに転んでも白真の思う壷にはなるわけだ。
「下ってるよ。細胞バンクの調査依頼、または交戦の可能性ありのな。近いうちにお前らにも援護要請が来るさ。
ただ「影」の任務だ。俺と龍二でも教えられてないことはある」
陽子のことはうまくかわした。大きな任務だと言えば少しは聞くことを躊躇わせることが出来るからだ。
「そうか。だが、快。後からもう少し詳しく教えろよ」
修にごまかしが効くはずがなかった……
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