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第一話:時空少女

 箒星学院の近くにある九条高校。その日、高い進学率を誇るその高校に一つの事件が起ころうとしていた……


 夕日が沈み夜風が優しく吹き始める時刻。どこからどう見ても繊細といったイメージを抱かせる美少女が科学室に呼び出されていた。


「待たせたね」

「沢崎先生……」


 可憐な美少女は声のした方を向く。彼女を呼び出したのはまだ三十半ばの科学の教師だ。生徒の人気も高く、女生徒からの告白も絶えない。

 そんな教師が今日はいつもと違い、怪しげな笑みを浮かべていた。


「さて、今日君を呼び出したのは他でもない。僕の愛を受け取ってもらうためだ」


 いきなりの発言に美少女は戸惑う。その現れかのようにグレーのセーラー服が僅かに揺れた。


「さすがに驚いているようだね。だけど大丈夫、怖いことは何もないから」

「いやっ……!?」


 少女は声を発したが、いきなりそれが不可能になった。そう、声を止められたのだ。


「無駄な抵抗は止した方がいいよ。僕はかつてバスターをしていてね、それも時空タイプと言って時間を操る能力者なんだよ。だから君は逃げられないんだ」


 美少女は何とか声を出そうと必死に抵抗する。しかし、それにも構わず沢崎はにやけた顔をしながら近寄ってきた。


「どうしてもというなら記憶を消してあげよう。まぁ、今まで残してほしいと言った生徒はいないけどね」

「当たり前です、だから私達は苦労させられたのですから」

「なっ!?」


 いきなり少女が凛とした声を発した。それに沢崎は目を見開いて驚く!

 そう、彼女に掛けた術は一介の女子高生が容易く解けるものではなかったからだ。


 しかし、少女は沢崎の動揺など意にも介さず、バスターとして坦々と話し始めた。


「私達が今回与えられた任務は時空タイプのバスターの捕獲です。覚悟して下さい」

「くっ……!」


 しかし、そこで諦める男でもなかった。寧ろ勝機すら感じていた。そう、彼は時空タイプという特殊な能力を持つバスターだからだ。


「だが、例え君がバスターでも私は倒せない。私は時空タイプなんだからな!」


 しかし、その言葉はすぐに掻き消された。沢崎は自分の体の感覚を失ったのだ。さらに立ち上がる力まで消されて地面に倒れる。そして少女がとどめの言葉を刺す!


「御存じじゃないんですか? 私達は影です」


 少女がそう呟いた。それを聞いて沢崎の顔は一気に青ざめる!


「影だと……! まさかあのTEAMの特殊部隊か!?」


 TEAM特殊部隊「影」。掃除屋の中でも特に秀でているものが属するエリート部隊。目の前にいる少女はその名を発した。


「時空タイプの捜査は私の専門でしたが、まさかこの高校に三人もバスターがいるとも思わなかったので、一人ずつの捜査に一ヶ月費やしてしまいました。

 ですが、そちらから尻尾を出して下さったことに感謝します」


 しかし、沢崎は力を再び増幅させ始めた。


「ふざけるな! たかが十六の小娘に捕まるか!」

「捕まりますよ。実力の差は時空タイプならとっくに御理解なさってるはずです」

「認めんっ! 貴様の時間を操作する! タイムドール!」


 沢崎は少女の時間を操作しようと術を放つ! しかし、少女は冷静だった。そして一言で片付ける!


「リバース!」

「ぐっ!!」


 術は簡単に返された。時空魔法の勝負は実に簡単。いかに相手の時間を支配出来るかだ。

 そして少女は沢崎の懐に入ると、彼の腹部に手を当てた。


「勝負ありです。倒れて下さい、沢崎先生」

「クパッ……!」


 強い衝撃波が腹部に叩き込まれ、沢崎は泡を吹いて意識を失った。

 そして少女は一つ息を吐き出すと、後ろから声が掛かる。


「終わったか、咲」

「龍二さん」


 後ろを振り返ると、彼女と同じ高校一年生の少年が立っていた。若干日に焼けた肌と好奇心が強そうな目は、どこからどう見ても腕白少年といったイメージを彼に植え付けている。


「これで任務も終わりました。ようやく皆さんと合流出来ますね」


 咲はニッコリ笑うと、白い歯を見せて龍二も笑った。


「ああ。帰れるんだな、箒星学院に!」


 二人のバスターは合流することになる。世間を騒がすバスター、篠原快と……



第二弾がやって参りました!今後ともよろしくお願いします☆

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