とりあえず帰宅
次の話までの繋ぎ部分なので短いです。
疲れた体を無理やり動かしながら村へ帰る事にする。
10分ほど歩くと、先程まで感じていた疲労感は、みるみる回復していき今では平常運転だ。
「んー、回復力も半端ないわけだ。さっきまでは、絶招はもう打てない感じだったが、もう一発くらいは何とかなりそうな気がする」
回復してきた身体で、飛んだり、捻ったりしてみる。
ジャンプすれば3mは飛ぶ。
近くの木を殴ってみたら拳がめり込んだ。
「おお、めり込むのか。へし折れるかもと思ったけど折れないもんだな。本気でやれば……いや止めとこう。怪我するのも馬鹿らしいしな」
猫との戦闘で幾つかの武技と絶招、反応速度や回復力まで確認できたのは良かった。
盗賊の動きを見る限り、あの大猫がこの世界で弱者に類する事はないだろう。
結果だけ見れば、無傷で勝利出来た俺の戦闘力は、この世界では強いかもしれない。
「まぁ、久々に暴れてスッキリしたな。最期は大猫の頑張りでシリアスになってしまったが……それにしても、あの猫をペットにして巨大な猫じゃらしで遊びたかった……」
2mの巨体でじゃれる様は壮観だっただろう。
まぁ、終わったモノは仕方ない。
別口でペットを、探してみるか。
どんなペットにしようか思案いていると、何時の間にか村の手前まで到着していて、ニックが駆け寄ってきた。
「リュ、リュートさんですか!? しっかりしてください、今すぐ手当を!」
イケメンに身体を弄られ、テンションがガタ落ちだ。
上着を捲ったり、手足をベタベタ触ってきた。
「いきなりどうした?最高の嫁がいるのに男色に走ってどうする」
「いやいや、男色とかそんなこと言ってる場合じゃ!怪我が……
怪我は……ないですね?」
キョトンとした顔を向けてくる。
奥様の母性を擽る表情なんだろうが、なんとなくイラッとしたのでデコピンしておく。
「ぎゃあぁぁ!」
額を抑えて悶絶している。
身体をカックンカックンしている。
ちくしょう、ちょっと面白いじゃないか。
「で、急にどうした?」
「いたた、あー痛い。いや、そうじゃなくて! その血はいったいどうしたんですか!?」
「ん、血?」
身体を見回すと、全身が赤黒くなっていた。
所々に肉片や臓物の欠片がこびりついている。
鼻が馬鹿になっていて匂いを感じないが、さぞ悪臭を放っていることだろう。
「あー、猫と戦闘になってな。血は返り血だから安心しろ」
「猫? もしかして魔獣と戦ったんですか!」
さっきからニックのボリュームが馬鹿になっている。
無駄にいい声なのもイラッとする。
もう一発くらいデコピンしてやろうか。
「そんな感じだ。もう行っていいか? 流石に水浴びくらいしたい」
横を通り過ぎて村な入ろうとすると縋り付いて引き止められた。
「ま、待ってください! そのまま村に行くと村人が腰を抜かします!」
「じゃあ、川に行けばいいんだな」
全く、面倒なイケメンだ。
お湯が欲しい所だが、仕方ない。
ニックを振りほどこうとすると。
「村長を呼んでくるのでここで待っていてください! 絶対ですよ! 直ぐに呼んできますから!」
ニックが跳ねるように村の中へ走っていった。
「さっきのはフリなのか? ニックの後ろに貼り付いて村へ突撃したらびっくりするかな?」
実行しようとしたが、隣最近やっと懐いてきた近所の家の子供の顔が浮かび、イタズラは止めにした。
盗賊を殺したシーンを見ていた様で、必要以上に警戒されていたのが、最近になってようやく仲良くなったのだ。
俺は子供に優しい男だからな。
仕方ないので柄だけになった剣を、クルクル回して遊んでいると村長が走ってきた。
「ゼイ、ゼイ、ち、はぁ、血まみれ、ゴッホゴッホ! だ、っ大丈夫、か?」
「いやいや、俺よりも村長が大丈夫か?」
年なのに無理するからだ。
あんまり無理するとポックリ逝くぞ?
「はぁ、はぁ、す、スマンな。ふぅ、あー、もう大丈夫だ、それで本当に怪我はないのじゃな」
「ああ、随分丈夫な猫だったが問題ない」
「そうか、ニックの奴がリュートが村の前で、怪我はないが血塗れで魔獣をデコが痛いと錯乱しとったからの」
「オチャメな奴だ。それよりも水浴びしたいんだが」
「スマンが後回しにしてくれ。経緯だけでも教えて欲しい」
面倒なので簡潔に説明する。
ただカブトムシの事だけは微に入り細に入り説明する。
あのデカさ、カッコよさを言葉の限りを尽くして説明した。
「カ、カブトムシはひとまず良くわかった。もうこれ以上は大丈夫じゃ。それで襲って来た魔獣はどうなったんじゃ」
「切った、猫いっぱい。多分50はいない。全部切った。大猫は頑丈だったが殺した。」
「50! 全部、全部切ったのか!?」
「木の下敷きになった奴もいたしな……まぁ切ったよいうよりも殺したな。少なくとも森の中の猫は全部だ」
「そうか……全部殺したか……」
村長が、遠い目をしてブツブツ言ってる。
ついにボケたか?
叩けば直るか考えていると、ニックが村の男達を連れて戻ってきた。
「リュートさん、先程は動転してしまいスミマセンでした。お湯とタライに布。着替えも持ってきました。家の解体小屋を使ってください」
最初にミランダと出会った小屋に案内される。
村の外れにあったのは解体場だからか。
「ココを自由に使ってください。俺達は村長と共に魔獣の確認に行ってきます」
ニックが出ていったので、小屋の裏にあった小さな井戸で水浴びして、固まった血と脂はお湯で落としていく。
「ふぅ、サッパリした。けど風呂が無いのはどうもな、仕方ないが」
風呂か、少なくともこの村じゃむずかしいな。
都会に行けばあるんだろうか。
また村長に聞いてみるか。
「しかし精神的に疲れたな、今夜は外食で済まそう。村長達が戻ってくるまで昼寝でもしようか」
服を着替えて村長宅に戻り、予想以上に疲れていたのか、スグに眠りについた。
何時の間にかブックマークが……初めて書いた物語なので稚拙な文ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。