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絶招

猫好き注意。ネコ科との戦闘です。サーベルタイガーとかスミロドンみたいなイメージですが、それでも許せない方は回避推奨。

森の奥から視線を感じる。

みられてるなー程度じゃなくて本当に肌がビリビリする。

これが殺気ってやつか。


「出てこないのか! どうした! かかっ……多くね?」


30〜50くらいか、どこに隠れていたのか猫達がゾロゾロ出てくる。

口からはみ出た牙は小型のトラのようだが、俺はネコ科には詳しくないのでよくわからん。

猫って群れるのか?

まぁライオンも群れるんだから群れるんだろう。


「まぁ、なんだ。そちらに非があるのは間違いないが、土下座の1つでもすれば許してやらんこともないぞ」


ビビってる訳ではなく文化人として、平和的解決を模索しているだけだ。

自然を愛する男としては、無為な環境破壊は避けたい、決してビビってはいないのだ。


「グルゥウ」

「ガァウ」

「ヴウゥゥゥ」


頭を低くして唸る。

見ようによっては土下座にも見えないことはない。

違うみたいだが。


「はぁ、たぁ、とりゃあ!」


襲い掛かってくる猫達を次々に回避する。

連携が取れているのか、手足や喉元に噛みつかんと飛び込んでくる猫を、避ければ避けるほど猫達の動きがよく見えてくる。

所詮はニャンコ、人間様とは格が違うのだ。


「うははは、てい、ほいさぁ!」


避ける、正に神回避だ。

段々楽しくなってきた。

今の俺ならルナティックモードも初見クリアできそうだ。


「ハハハ、ドコを狙って……うぐっ!」


周囲には30を超える猫の群れ。

ソレに一斉に囲まれ襲われたら、結果はわかりきっている。

そう、圧倒的に獣臭い!

盗賊のオッサン達もそうだが、何故、戦闘で匂いを気にしながら戦わないといけないのか。


「貴様らぁ! もう許さんぞっ! “戦技 大円斬”」


体を限界まで捻り、横薙の一閃と共に開放する。

剣先から伸びた何かは、10m程伸びて周囲の木々と共に獣達を一掃する。

一気に吹き飛んだ獣たちは肉片を撒き散らしながら吹き飛んでいく。


「どうだっ!って、危なっ」


倒れてくる木々を回避しながら周囲を警戒する。

まだ肌がビリビリしているので、全滅はしてないだろう。


木々が邪魔で足場が悪い、一旦距離を置こうと川の方角へ全力で走る。


「おお、スゲえ早い!」


っていうか、先程の戦闘で回避しまくったか息も上がってない。


「んー、チートだな。まぁ強い分には問題ないか」


ゲームでは速さやジャンプ力に制限が掛かっていた。

速すぎれば思考が付いていかず、上手く操作できないからだ。

だが、今は問題なく動けているし、木にぶつかることもない。

反応速度も強化されているらしい。


「ニャンコは付いて来てるのか?」


殺気は受け続けているので撒いてしまった事はないと思うが。

チラリと振り向くと、先程の猫よりひと周り大きな猫が追いかけてきた。

あの猫達のボスだろう。


「あの大きさだと猫というよりサーベルタイガーとかメスライオンだな」


大型肉食獣に追われているのに不思議と恐怖はない。

寧ろ負ける気がしないのは、実力の差か、単に俺が調子に乗っているだけか、のどちらかだろう。


「最悪の場合は……食われるだけだ、問題ない」


戦いとは本来そんなものだろう。

別に死にたい訳じゃ無いが、コッチも命をベットしないとフェアじゃない。


「そうだろニャンコ」


開けた場所があったので立ち止まり、大猫に話しかける。

大猫もこちらが立ち止まるのを確認すると、距離を置いて立ち止まった。


「三下の台詞みたいで嫌だが、一応聞いておこう。ペットにならないか?今なら1日1食は保証しよう。因みに俺は、トップブリーダーだ」

「グラァ!」


トップブリーダーと言えば心が揺らぐかもしれないと思ったが、この破格の条件でも納得しない辺りは畜生風情ということか。


「仕方ないな、じゃあお前は実験台だ!」


この世界でゲームの技を使えることは確認済みだが、どこまで可能なのかが問題だ。

ゲーム時は相手を通常攻撃するとアクションケージが溜まって武技が使用可能になった。

限界までアクションゲージを貯めると武技の上位技を使用可能になる。


「ガォォオオン!」

「集まってきたな、さて……どうなる事やら」


大猫が吠えると先程の行き残りがワラワラ集まってきた。

大分減ったがまだ20匹はいる。

俺の持つ12の戦技と4つの絶招が何処まで使えるか確認しようか。


「じゃあまず、“戦技 断一閃”!」


盗賊を殺った技だ。

横薙に振るわれた一閃は3m程の半月状の斬撃となり剣先から放たれる。

こちらを威嚇していた猫を3匹纏めてスライスして、そのまま後ろの木々を数本切り倒した。

上手く行ったので、首を狙い飛びかかってきた猫に次の技を試す。


「“戦技 飛竜斬”!」

「ギャン」

「っグァ」


本来なら地対空技だが、今回は実験なので問題ない。

猫の顎下から斬り上げると共に飛翔する。

吹き飛んだ頭部と共に鮮血を空中に撒き散らしながら10mほど飛び上がる。

まぁ昇○拳的なアレだ。


「おお! メッチャ飛んだ! じゃあこっから、“戦技 鳳凰撃”」


飛竜斬とは逆の空対地技。

空中を滑るように滑空して剣を突くと、剣先から身体を包み込む様に半球状のオーラが展開され隕石のように落下する。


「おおおぉ!?」

「グゥーー」


着地点に小さなクレーターができて、落下地点に突っ込んできた数匹はクレーターと中心でシミになっている。


「あー、ビックリした。ゲームなら戦技中は基本オートだから自分に衝撃なんてこなかったが……生身の弊害か?」


ゲームと同じようで微妙に違う気がする。

オートマとマニュアルの違いかもしれない。

アシストされている感覚はあるが、斬撃の軌道をある程度コントロールできる。


「グラァアァァ!」


着地点に座り込んでいる俺を見てチャンスと思ったのだろう。

大猫以外の全員が、互いの身体がぶつかるが関係ないと言わんばかりに総攻撃を仕掛けてくる。


「“戦技 瞬光斬”!」


高速の乱れ切り。

襲い掛かってきた猫達は、鳴き声を上げることも出来ずに肉片へと形を変えた。

カウンターを決めたのは良いが、ミキサーにかけたようにバラバラに切り裂かれた肉や臓物を、頭から被ってしまったのは失敗だ。


「ぺっ、ぺっ!クサイっ! はぁ、使いどころ間違えたな……」


ドロドロになった服を見ながらため息をついてしまう。

全ての戦技を使い切ってないのに、あとは大猫1匹。

だが、肉食獣のプライドなのか、大猫は逃げようともせずに、口からはみ出た牙を更に剥き出し、縦長の瞳孔からは今までの以上に殺気が溢れている。


「出血大サービスて今なら俺の相棒に――」


既に勝負は決まったと思い、もう1回スカウトしようとおもったが……辞めだ。

大猫は唸りもせずに、ただただ俺を殺す為にこちらを見ている。

今までの戦闘で俺の力量がわからない筈がないのに、逃げることもせず、諦めもしない。


「いや、何でもない。お前は全力で相手をしてやる」


もし俺はこの世界で、きっと戦うことを辞めない。

あの村で、村長のサポートをしながらノンビリ暮らす事もできるだろう。

それでも力があることを知ってしまった。

俺はどれくらい強いのか、他にどれくらいの強者がいるのか、何処まで強くなれるのかを試さずにはいられない。

その道の先で圧倒的強者と出会い、戦場で散ることが有るのなら、俺はコイツの様に死を受け入れ、それでも抗うことができるだろうか。


「うん、お前はカッコイイ。だが……負けてやらん!」


周囲の音が消し飛ぶほど集中すると、身体の中から何かが急激に蒸発していく。

蒸発した何かは力に変化し、俺の体内や握りしめた刀身の中で暴れ狂う。

爆発しそうな力を押さえ込み、力を技に、最高の一撃へと昇華する。


「グラァアァァァァァァ!」


小細工なしで真正面から突っ込んてくるのを、こちらも正面から受けて立つ。


「…………“絶招 流星牙撃”っ!」


鳳凰撃の様に剣先を半球状のオーラを纏わせるが、規模が違う。

周囲を巻き込みながら、渾身の突きと共に自身の身体が弾丸の様に前方に打ち出される。


「オラァァァァァァ!」


岩や大樹など物ともせずに、周囲の全てを轢き潰し、大地を抉りながら、ただ真っ直ぐに突き進む。


「はぁ、はぁ、さ、流石に、つ、疲れた……」


へたり込みながら前を向くと、恐ろしいことに大猫は死んではいるが原型を保っていて、俺の手に持った剣は柄以外は粉々に砕け散っている。


「マジか……まともにやったらヤバかったかもな……」


振り返ると距離にして50m、直径15mの堀が完成していた。

周囲は吹き飛んだ木々や岩でメチャメチャになっている。


「打撃技の究極系なんだけどな……どれだけ丈夫なんだよ」


今となっては、大猫に勝算があったのか、覚悟を決めたのか、プライドの問題だったのかはわからない。


「あぁ、身体がだるい……後始末は村長に任せよう」


異世界2度目の戦闘は、得るものが多い戦闘だった。





コメディー成分が足りない!プロットでも作ったほうがいいのかな……

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