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コレステロール

書こうとしても、主人公がいつまでも動こうとしないので2ヶ月飛びます。

村長宅にお世話になって早2ヶ月。

しかし俺は村長宅に住んでいる。

漫画の主人公ならヒロインと出会い、とっくに冒険を始めているはずだ。

だが俺が出会った女性はだいたい人妻で、一番仲の良い女性は薬師のコニーさん(42歳独身)と言う由々しき事態になっている。


「それでうちの旦那ったら、また服を脱ぎっぱなしで」

「うちもそうよ、せめて下着くらいは洗濯カゴにいれてほしいわ」

「ホントそうっスね。村長も家ではそんな感じっス」


最近の生活は、朝食を作り村長を送り出す、洗濯してから家の掃除昼は前日の残り物、暫く自由時間、買い物に行って夕食の準備、村長が帰って来たらご飯を食べて晩酌に付き合う。

そんな生活をしていたら気づいたら2ヶ月経過していた。


「よし! やっと終わったわ。子供が多いと家事が大変なのよね」

「子供は多いほうが良いんだけどね」

「将来のことを考えるとそうッスね。そういえば村長の服から加齢臭が取れないんス」

「あー、お爺ちゃんの服の匂いがね。青いハーブを洗剤に混ぜるとマシになるかも」


井戸端で自分と村長の服を洗濯する。

仲良くなったご近所の奥様方と旦那や村長の愚痴や村の噂話に興じる。

最初は冒険者様やリュート様だったのが、今ではリューくんとか呼び捨てが多い。

火酒は飲まないがエールを飲みに村長と酒場に行くこともあり、そこで打ち解けた。


「それじゃあ家に戻るわね、子供が暴れてないと良いけど」

「ウフフ、ホントホント」

「じゃあ行きますか、おつかれッス」

「「また明日〜」」


奥様達と別れ、村長宅に帰る。

今日は午前中だけの仕事と言っていたので帰ってきてるかもしれない。

村長の分も昼飯が必要だから残り物とあと何品か用意しなくては。


「ただいまー、村長帰ってきてたんだな」

「今日は早く帰ると行ったじゃろ?それよりもお昼はまだかのぅ」


この爺さんは俺が料理を初めて作ったときは、料理漫画のキャラくらい絶叫していた。

最近は叫ばなくなったりマシになったが、外食を辞め、酒場に行くときでさえ飯を食ってから出かけている。


「昼は夕食の残り物と適当に何品かだぞ」

「構わん、ただ、卵巻きをつけてくれんかの?」


村長は卵焼きにハマっている。

この世界で卵焼きは目玉焼きを指してるらしい。

他の地方はあるかもしれないが基本卵料理といえば茹でるか目玉の二択だったらしい。


「良いけど、今夜は卵なしだからな」

「そこはなんとかならんかの?」

「ならん」


コレステロールの取り過ぎは危険だ、早死するぞ。

村長のが駄々をこねてるが無視して卵焼きとお干たし、残り物のスープとパンをチャッチャと用意する。


「出来たぞ、手は洗ったか?」

「大丈夫じゃ、では食事としよう」


村長が子供のようにガツガツ食べる。

子供のように食べ散らかすのを注意するが何度行っても直らない。


「ふぅ、今日も美味かったわい」

「そうかい、そりゃよかった」


村長ともお互いにフランクに話せるようになった。

最初はちゃんと喋ってやったが、この爺さんの生活習慣を見てやめた。

ろくに家事が出来ないので村人にすべて手伝って貰ってたのだ。

食事もすべて外食、亡くなった奥さんの苦労が偲ばれるな


「リュートよ、大切な話があるんじゃが」

「話し?」


入れてやったハーブティーを飲みながら妙に畏まっている。

そうか、ついに俺に村長の座を譲り渡そうと言うことか。


「実は頼みがあるんじゃ」

「村長、まだ俺が村長になるには時期が早すぎる。せめて来年の春まで待て。この村の有力者の情報を抑えてはいるが時期尚早だ」


いくら村長といえども支配階級だ、権力を欲しっている村人を抑えにかからないといけない。

村長になるにも高度な政治的行動が必要になる。


「いやいや、そうじゃなくてじゃな――」

「豪農のベルンと酒蔵のマークは問題ない。あの二人を抑えておけば、農家連中と商人連中はこっちに付く。だが、職人のタルクがネックだ。あいつが頷かないと味方しないだろう」


タルクは職人気質で酒は好きだか嫁一筋で金に執着もない。

子煩悩で有名だか子供はまだ5歳でこちらに取り込むことは難しい。


「村長、タルクの弱みを知らないか? それさえあれば今年の収穫祭には村長になる事は可能だ」

「なれちゃうの!? 村長を本気で狙ってる!?」

「なに、本気を出さなくても何とかなるさ。全ての暴力を認めれば来月までには実行可能だからな」

「継がせんぞ! お主に村長を継がせるつもりはないんじゃ! 今回言いたいのは魔獣に関してじゃ!」


なんだ、早合点してしまった。

魔獣か、さすがファンタジーな世界なだけは有る。

最近家事ばっかりしてたファンタジー感がなかった。


「魔獣か、どれくらいの強さなんだ?」

「大人でも勝てん。Cランクの群れならこの村も一晩で落ちる」


数百人規模の村を一晩か、相当ヤバそうだな。


「その魔獣が村に?」

「いや、姿は確認できておらん。じゃが大型のクマが東の森で殺されておるんをニックが見つけおってな、状況や周囲の肉食獣の糞から魔獣の群れと推測したらしいの」


状況証拠ということか、ニックは若いが猟師としては優秀だと聞いている。

他にも猟師はいるので、村長のところに話が来るなら、ほぼ確定的なんだろう。


「良し分かった。簡単だ、冒険者を呼べば良い」


素人判断で手を出してもろくな事にならない。

こういう時はプロに処理してもらうのが正解だ。


「……い、いや。じゃから冒険者のお主に相談しておるのじゃ。どうかの?報酬も約束する、やってもらえんかな」

「おいおい、俺は、冒険者でもサーカスの団長でも――」


待てよ。

最近隣に住む奥様が犬を飼い始めたと自慢していたな。

食料事情が安定しないこの世界で、動物を趣味で育てるのは中流家庭以上でないと難しい。

村長も舐められないように、動物の1匹や2匹必要なのではないだろうか。


「気が変わった、俺に任せておけ」

「おお、やってくれるか!」


そうなれば捕獲する方法を考えなくてはいけない。

網でもあればいいんだか、漁村でもない村にはないだろうしな。

まぁ適当に躾ければ付いてくるだろう。


「東の森で良いんだな?」

「そうじゃ、東の森の先には死の森と言われる国境の森があっての。そこには大量の魔獣がいて軍も通れないらしい。その死の森から弾かれた弱い魔獣の可能性が大きい」

「強い魔獣じゃないのか?」

「あくまで死の森の中で弱い魔獣じゃ。死の森で上位の魔獣は何故か出てこんからの、じゃが下位の魔獣でも十分に強いはずじゃから気をつけるんじゃぞ」

「ああ、任せろ」


じゃあ早速向かおうか。

ミランダ(人妻)から貰った剣を佩いて東の森に向かった。





東の森につくと、森の手前でハーブを採取している奥様方とであった。

ここハーブ群生地にはよく来るので顔見知りだ。

ご近所付き合いは大事なのでしっかり挨拶する。

簡単に30分ほど世間話をしてから森に入り込んだ。


「んー、どこにいるのか検討もつかん」


ブラブラ歩くが魔獣らしき影も見当たらない。

糞や足跡もあるが見分けが、コレの見分けつくのなら俺はとっくにプロの猟師を名乗っている。


「飲み物くらい持ってくれば良かったな、近くの川で水分補給でもするか」


川の方角くらいはわかるので、近くの川を目指す。

この世界に来てから身体能力は飛躍的に上がっているので、疲れはないが喉は乾くし腹も減る。

写りの悪い鏡しかないからよくわからんが、コニーには15歳くらいと言われているから年齢も若返ってるかもしれない、どうでもいいけどな。


「タラタラタ、タラタラタ、タラタラタラタラタヤタ、タッタタッラヤタタラヤタタラタラタ♪」


昔聴いたクラシックを口ずさみながら川へ歩いていると有り得ない光景を目にした。


「な、なん……だと?」


黒い身体と天を突かんとする漆黒の二又の鉾。

力強く、捉えた足場から落ちることは無いであろう爪。

甲殻は後ろに行くほど鮮やかな赤に変わり、見事なグラデーションになっている。


「カ……カブトムシだと? 30センチ以上はあるぞ?」


地球の何処かにはいるかもしれないが、30センチ級の大物なんて見たこともない。

木の3mほどで樹液を舐めている。

今の俺なら垂直飛びで十分に捕獲可能だ。


「そっと……そっとだ……」


カブトの留まってる木へにじり寄る。

空気、そう俺は空気になるんだ。

コレを捕獲すれば村の子供の中で勇者として語り継がれることだろう。


「あと少し、あと少しだ……」


木の根本までたどり着き、脚に力をためジャンプしようとした瞬間――


「グラァァヴゥゥウ!」

「――っんな!?」


獣の鳴き声に反応するように飛び立つカブトムシ。

捕まえようとジャンプするが僅かに届かない。


「誰だ! 急に叫ぶなんてマナーがなってないぞ!」


空中で辺りを見渡すと、先程まで俺がいた場所に獣が突っ込んで来ていた。

腰の剣を、抜き着地と共に斬り伏せる。


「ほいっと」

「ギャァァン」


1mを超える大きな猫の、クビと身体がサヨナラした。

だが、まだまだ森の奥から痛い視線を感じる。


「おい、さっき吠えたのはこの猫じゃないだろう……出てこい! 俺の少年の心を踏みにじった罰を受けろ!」


異世界に来て2度目の戦闘が始まった。


やっと戦闘パートです。少し長くなってしまった。

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