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3-15 ガウンムアのクレイグ准将 その1


 パールバディアを出る前にボイド上級尉官以下五名の部下達から

ガウンムア国内の様子を聞いておいた。


現在の時点では新国王リチエルドを中心とする

評議会が内政を仕切っている。

魔人軍は海岸の警備と警察的な役割を担っているそうだ。


「ボイド上級尉官。ガウンムアの国民感情はどのような印象だった?」

「はい。ヴァレリ中将の部隊が滅ぼさん勢いで侵略したので

魔人に対する印象はあまり良くありません。

しかし圧倒的な力量差を見せつけたためか反攻する者はいません」


「なるほど。パールバディアよりは厳しい状況だな」

「ヴァレリ中将とグレイン少将のやり方の違いについては

私はなにか意見できる立場ではありません」


 私はボイドの顔をマジマジと眺めた。

ボイドは生真面目な性格らしい。

「実際に現地に行きリチエルド国王と会ってみようと思う。

ガウンムアの政治形態を把握しなければならないしな」


「クレイグ閣下。最初の方針ではガウンムアからは

物資を奪うだけの予定でした。

ところが戦争が長引き食料等物資の供給を担う

属国として扱う事に方針が転換されました。

今回クレイグ閣下がどのように改革なさろうと

十二人会議の意向を実現させるためならば

我々は黙って指示に従います。

何なりとお申し付けください」


 この男。ここで十二人会議の名を出すか。

遠回しに監視して居るぞと宣言したようなものだな。

今のところグレイン少将が一枚、

いや数枚上うわであると認めざるを得ない。


「ボイド上級尉官以下5名。私の指揮下に入ることを許可する。

よろしく頼む」

「「「「はっ!」」」」


 早速現地に行き国王及び評議会の面々と顔を合わせる。

どうやら私がスフィーアを滅ぼした張本人であることは

知れ渡っているらしく予想としては

恐怖政治を執るだろうと思われているようだ。


 集まった面々を眺める。

新国王と新評議会のメンバーは皆若かった。

私に関する噂も知っているだろうに臆することなく質問をしてくる。


 治安担当大臣が発言した。

「クレイグ閣下。現在魔人軍の軍人が警察的な立場におり

主に治安維持に当たっております。

が、魔人の中には不届き者がおり

強姦や窃盗事件が後を絶ちません。

犯人の引き渡しにも応じず被害者は泣き寝入りの状態です。

このような独善的な支配状況を改善していただきたい」


「ほう、では君たちが力ずくで犯人を検挙すればいいではないか」

「無駄ですな。力で対抗出来るなら占領などされてませんから」

「ではそのような要請は却下だな」


「閣下は何をしにここに来たのですかな?

税収を上げるのが目的でしょう。

魔人達が生産効率を下げる原因を作っているのが現状ですぞ。

改善できなければ閣下は降格されて本国に返されるだけでしょうな」


「君は自分の立場がわかっているのかね。

君を殺して意にそぐう者に変えればいい。

もしくは王族貴族を皆殺しにして行政も魔人が担当すれば良い話だ」


「残念ですな、閣下。もう少し頭の良い方かと思っておりましたが」


 挑発的な態度で意見を述べた治安担当大臣が着席した。

次に国王が発言する。


「国の運営方法に関してはいろいろな形態があるでしょう。

クレイグ閣下はどのような統治をなさるのかお決めになってますかな?

恐怖政治を敷こうと融和政策を行おうと

現場の民がやることはあまり変わりません。

日々働き税を納める。これが国民の義務です。

それに付随して教育はどうするのか?

生産活動を支える発展研究はどうするのか?

街道や都市の整備は?改正された法の伝達はどのように?

国家の運営は一人で出来るものではありません。

国王である私と評議会がいて現在この国は廻っているのが現状ですぞ。

その辺は理解しておられますかな?」


「・・・・・理解しているつもりだ」

 

「魔人の国から政治が出来る人材をいったい何人連れてくれば

ガウンムアを統治できますかな?

それだけの人材が用意できますか?

この評議会の首をすげ替えるだけでは駄目ですぞ。

我が国はある程度の地方自治を認めている。

各地方の議会の人数まで入れれば相当な数になります」


「なるほど。政治と行政をすべて魔人に入れ替えるのは不可能だと言うわけか」

「その通りですな」


 全員が私を睨んでいる。

「君たちの意見は考慮しよう。

では一つ聞きたい。もし本当に政治と行政を魔人に入れ替えると言ったら

君たちはどうするつもりだ?」


 国王の眼光が力を帯びたように見えた。

「例え滅びても徹底抗戦しましょう。

その結果があなたの将来にどう影響するかも考えるがいい。

私が言ってることは実にシンプルだ。

税や収穫物は約束通り魔人軍に渡す。

その代わり自治を認めろ。それだけだ」


 誰かの入れ知恵か?

ヴァレリ中将の報告ではこの国王は

単なる色ボケのガキではなかったのか。


「君たちの要求は理解した。

次回私の方針を言い渡す」


 用意された宿舎に帰る。

書斎も用意してあったのでそこに自分の部下達とボイド部隊を集めた。


「今日の評議会会議の剣呑さを見れば

魔人に対するこの国の感情が理解できるな。

率直に言えばかなり悪い。

今更グレイン少将の路線を踏襲するのは不可能だと思う」


 今回私が連れてきた部下達は戦闘に関してはプロだと言えよう。

だが政治に関しては素人ばかりだ。

私自身も勉強不足であった事を認めなければならないだろう。


 ボイド部隊のドルマー軍曹が挙手して発言した。

「当面各省庁に監視役の魔人を数人配置してはどうでしょうか?

自治を認める方向で良いかと思いますが完全に野放しにはできないかと」


「うむ。良いアイデアだな。国王にも誰か付けた方がいいだろうな」

「それは不精私が担当しておりました」

「ほう、ブランカが担当ではなかったのか?」

「ブランカ殿は・・・・その・・・・夜の・・・」

「あー、みなまで言わなくともよい」


 ブランカめ。

もっとも国王を色仕掛けでたぶらかしておりました、

などと正式に報告も出来ないだろうが。


「わかった。ドルマー君、国王の監視役は頼む。

各省庁の監視役を早急に選出しよう。

常駐している魔人軍からも選出しないと間に合わないな。

明日常駐軍を集めて着任の挨拶をすると同時に選抜を行う。

諸君、しばらくは忙しくなると思うがよろしく頼む」


 政治か。

今まであまり気にしてこなかった分野だけになめてかかっていた。

私自身が勉強せねば誰もついてこないだろう。


「やはり政治に詳しい有能な副官は必要だな。誰か本国から推薦して貰うか」 




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