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3-12  1000年前の勇者 その2 剛力のリリアン


 町に城壁はなかったがそこそこの規模の町だった。

入り口付近に看板があり

『ようこそクレイドル・タウンへ!』と書かれてある。


「まずは冒険者ギルドを探して魔石を売ってくるね」

三人で町の中心部を目指した。

役所とおぼしき建物の並びにギルドを発見。

勇者が中に入り魔石を売ってきた。


「結構な額で買い取って貰えたよ。それじゃあ宿を探そうか」

近くに冒険者御用達の安宿があったのでそこにした。


 宿屋の食堂で夕飯を食べる。

食べ終えて葡萄酒を飲みながら三人で話をした。


「さっきギルドで聞いたんだけどこの辺りの開拓村が

幾つか魔人に襲われて壊滅してるんだって」


 アーノルドが発言。

「襲われた村に行ったところでもう魔人も魔王も来ないだろうな。

まだ襲われてない村を探してみたらどうだろうか」

「そうだね。まだ健在な村は護衛依頼を出してるみたいだけど

冒険者が誰も受けたがらないみたいなんだよ」


 私も会話に加わる。

「ではその依頼を三人で受けてみるか?」

勇者が腕を組んで考え込む。

「うーん。リスクでかいよ?魔人だけならなんとかなるけど

魔王が出てきたらやっかいだな」


「小さな開拓村なら魔王が直々に出てくることはないんじゃないのかな」

「サミーの言うとおりだと思うが。うん、明日もう一回ギルドに行って

詳しく聞いてみようか」


 アーノルドがアクビをしたあと賛成と言う。

「眠そうじゃん。まあ俺もなんだけどね。

今夜はさっさと寝て明日に備えようか」


 次の日ギルドで護衛依頼を出してる開拓村を教えて貰う。

魔人が来なくても魔物を討伐するだけで実入りはあるので受けることにした。


 勇者が空(くう)を繋ぎ村の入り口付近まで運んでくれた。

「それにしても空(くう)使えるとべんりだね。

でも自分以外に二人もいっぺんに運べる空(くう)使いは見たことないよ」

私が褒めると勇者が逆に質問してきた。


「エルフ種は魔法に長けた種族だって聞いてるよ。

空(くう)使いならたくさんいるんじゃないの?」

「いや、エルフは治癒だったり固定化だったり精神干渉系が得意なんだ。

人間が使える空(くう)風(ふう)火(か)水(すい)地(ち)はあまり得意じゃない」

「でも火とか水なら普通に使えるじゃない」

「生活魔法って奴なら使えるけど戦闘に使えるレベルではないよ」


 村に入り農作業をしていた男性に村長の居場所を聞いた。

「ギルドから派遣されてきた方々ですよね?

集落の中央に広場があります。そこで待っててください。

村長を呼んできますね」


 広場で待っていると村長と一人の女性がやってきた。

「冒険者の皆さん、依頼を受けてくれてありがとう御座います。

こちらは我々の村のリリアンといいます。

村の護衛を担当してるので詳しい事は

この娘に聞いて一緒に行動して貰えますか?」


 勇者が代表して答える。

「わかりました村長。普段は村周辺の警戒と魔物の討伐をします。

その間に村人が脱出出来るルートと隠れる場所の確保をしましょう」

「よろしくお願いします。ほれ、リリアン。挨拶しなさい」


 年の頃二十歳くらいだろうか女性にしては背が高い。

目鼻立ちの通った美人だった。


「こんつわ。あんたら強いんけ?」

「ん?。まあ強いよ。アーク王国認定の勇者だし」

「勇者様け!びっくらこいただなやぁ!まんずよろすくおねげぇしますだ」

ぴょこりと頭を下げるリリアンと名乗る女性と各自が自己紹介をした。


「じゃあリリアンはこの村の警備も担当してたんだね。

普段の巡回コースや危険なポイント等教えてよ」

「はい、勇者様。今から案内しますだ」


 リリアンと一緒に村の周りを歩いて地形を確認しながら

簡単な地図を作成していった。


 森の入り口付近で村人数人が木を切り出していた。

「よう、リリアン。いいところに来たな」

「なんだべ?」

「この倒した木の枝がひっかっかちまて森から引き出せないんだ」

「お安いご用だべさ」


 リリアンは倒れた巨木をひょいと持ち上げて

ズルズルと開けた場所まで引っ張って行った。

「助かったよ。ありがとな」


 村人はさも当たり前のように接している。

私達三人は目を丸くしてその光景を見つめていた。

私はリリアンに尋ねて見た。


「リリアンは剛力の持ち主なのかい?」

「んだ。成人してからこの能力が発現したんさ」

勇者もびっくりしていた。

「はは、俺たちいらねぇじゃん」


「うんにゃ、勇者様。わだすは力はあっけど戦闘は魔物相手しか

やったことがねぇだ。できれば皆さんに格闘技とか剣技を

教えて欲しいんだけんども?」

「それこそお安いご用だよ。頑張ろうな!」

「はいぃ!」


 それから数日は脱出ルートや隠れ場所を確保したり

リリアンと訓練をしたりして過ごした。


 訓練ではリリアンが勇者を投げ飛ばす光景もだんだん見慣れてきた。

「ねぇねぇ!今の見た?俺地上50mくらいの高さまで投げられたよ!」

「それで無事って言うのもすごいべさ」


 私達がこの村にやってきてから10日後の早朝未明。

ついに魔人はやってきた。


~~~~~~~~


「くぉんのやろぉぉぉぉ!」

目の前に忽然と姿を現しリリアンに斬りかかってきた魔人は

リリアンに胸ぐらを捕まれ一本背負いで倒されて地面にめり込んでいた。

頭部はつぶれ眼球が飛び出している。

折れた肋骨が数本胸から突き出ていた。

即死であろう。


 私は訓練通り村人をシェルターまで導いた。

勇者が森の土中に土魔法で作った頑丈なシェルターである。

入り口は私が偽装し登録した村人以外には見えないようになっている。


 勇者も魔法を駆使し魔人をどんどん倒している。

凄いのはアーノルドだ。

彼は魔法を使えない。

純粋に剣技だけで魔人と渡り合っている。

飛んできた岩塊すらまっぷたつにするその姿は頼もしいばかりだった。


戦闘開始から数時間後。

「ふう、数人は逃げていったか。何とか防いだな。

リリアン、サミュエル。被害状況を調べてくれ。

俺とアーノルドは周囲を警戒して廻る」


 集落から離れた畑で作業していた村人の数人が犠牲になった。

だが人的被害よりも畑の被害が深刻だった。


 広場に集まった村人達の前で村長が話をした。

「みんな、亡くなった村人達に冥福を。

畑の被害状況を見て回ったが今期の収穫は絶望的だ。

立て直しにかなりの時間がかかる」

村人は皆考え込んでいた。


 私は彼等に提案してみた。

「魔人の被害にあった村はここだけではありません。

荒らされた村はほぼ放棄せざるを得ない状況です。

そこで提案です。

今期は国の援助を受けて生き残った皆さんで町に近いところで

農業をやりませんか?

他の壊滅した村の人達と共に新しい村を作るんです」


「サミュエルさん。提案ありがとう御座います。

すぐには答えは出せないので村人達と相談してみますね」


 その夜は交代で寝て夜通し集落の見張りをした。

次の日村人達はこの開拓村を放棄する決心をしたようである。


 まずギルドに連絡を入れ国の役人が視察に来た。

村の放棄はやむなしという承認を得て村人達は引っ越しの準備を始め

移動を開始した。


 戦闘から数日後。

最後の村人が集落を出て行った。


「さて、俺たちもいったん町に戻るか。

リリアンはどうするんだ?」

「勇者様、お願いがあるだ。わだすも皆の仲間に入れてくれねぇべか?」

「うん、いいよ!」


「そんな簡単に返事していいんだべか?」

「リリアンの剛力は貴重な戦力だ。大歓迎だよ。

あー、それからうちのパーティではもっとフランクな言葉遣いで頼むぜ」

「ありがてぇだ。けんども身分が違いすぎるべ?

『様』は付けさせて貰うだ」

「じゃあそれで。改めてよろしくね!」


 こうしてリリアンが仲間に加わった。

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