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3-10  大賢者と当代の勇者


 ジョンとタイロスは小屋を出て行った。

小屋の中には俺エリックと大賢者サミュエル

それにアリアという女性が残った。


「大賢者サミュエル様、お会いできて光栄です。

自分が当代の勇者エリックです」

大賢者はしげしげと俺の顔を見ている。


「サミュエルじゃ。お主、勇者の子孫か?」

「まさか。そんな話は聞いてません。

俺は姓のない家の生まれです。

自分の詳しいルーツは解りませんが

勇者の子孫って事はないと思いますよ」


「さようか。失礼した。

ところで先代勇者の活躍ぶりは知っておるかの?」

「ええ、それはもう。子供向けの絵本や演劇にもなって

国民の間で親しまれていますから」


「なら話は早いな。だが勇者のペンダントの話は知らなかったようじゃの」

「はい、初めて知りました。ルド王国の王城に残っていた記録には

当時のパーティ編成や国が主導した軍の編成が中心に書かれていましたが

道具に関する情報はありませんでした」


「ふむ。その様子だと勇者の剣がしゃべることも知らんか」

「いえ、それは知ってます。これですよね」

俺は勇者の剣を手渡した。


『ひさしぶりじゃの。覚えておるか?』

『おっと、エリック以外と話すのはひさしぶりだ。

だが俺は前代勇者としゃべってた奴とは違うよ』

『そうか、奴は消えたか。お主の名は?』

『剣栄次朗だ』

『転生日本人じゃな。先代の剣も日本人じゃった。

名はもろおか健吾けんごじゃったが』


『それは本当か?』

『ああ、本当じゃがなにか?』

『その名は俺が所属していた諸岡流の開祖の名前だ。

だが活躍したのは戦国時代だから約400年前だな

時系列がおかしいぞ』

『時空を越えただけじゃろ。なにもおかしくないわい』


 二人の会話は俺の頭にも届いていた。

会話に割って入る。

『なあ、えーちゃん。警察時代は剣道やってたんだよな』

『そうだよ。全国大会ベスト8どまりだったがね』

『じゃあ先代の勇者の剣はえーちゃんの大先輩なのか』

『ああ、俺もビックリだよ』


「さて、念話は疲れるから普通にしゃべるぞ。

剣さんも聞こえておるよな?」

『ああ、聞こえてる』


「エリックよ。先代勇者の名を知っておるか?」

「いえ、知りません。誰も知らないし記録にも残っていないんです」

「そうじゃろ。大規模精神干渉魔法で人々の記憶から名前だけを消されたからの。

単に『勇者』とだけしか伝わってないはずじゃ」


「それは魔王がやったんですか?」

「そうじゃ、奴は人々の記憶から勇者の

存在自体を消そうとしたのじゃがワシが阻止した。

じゃが完全に防ぐことは出来ずに名前だけが消えてしまったのじゃよ」


「大賢者様はその名を知っているのですか?

出来れば教えてはくれませんか?」

「いいぞ。******だ」

「はい?」

「今ワシは******と言った。聞こえたか?」

「いえ、聞き取れませんでした」


「やはりな。いまだ呪いはワシの体に残っておるらしい。

だがお主に渡した勇者の日記には書かれているかもしれん。

それは先代勇者の母国語で書かれてあるのでワシには読めんがの。

当代の勇者ならあるいは、と思って渡したんじゃ」

 

 昨日ジョンから渡されたノートはまだすべてを読んではいない。

日記というか日々のメモ書きの集大成みたいなノートだった。

そしてそれは日本語で書かれてあったのだ。


「これは日本語で書かれています。

俺は転生日本人なので読めるんです。

先代勇者も転生人、あるいは転移人だったのでしょうか?」

「そうじゃ。転生日本人じゃった」

「やはり。ちょっと待ってください今ノートをざらっとめくってみます」


 俺はパラパラとページをめくり中身を確認するが

名前らしき物は書かれていなかった。


「ありませんね。日々のメモ書きみたいなものです。

『塩、ロウソク、綺麗な布数枚を購入。サミーに渡す』

とか書いてありますが」

「記憶にないがワシがお使いを頼んだんじゃろな」

「勇者をパシらせるとは流石ですね」


「しかしおかしいな。勇者から手渡されたから重要な物だと思い

勝手に日記と思いこんでいたわい」

「実は日記は別の場所に存在してるのでは?

単に間違えたなんてことはないですかね」

「うむ、奴ならありうる。戦闘時はとことん頼りになる奴じゃったが

平時はどこか抜けてる奴じゃったからの」


「大賢者様、出来れば当時の様子を教えていただきたいのです。

魔王をどうやって倒したのかを詳しく」

「もちろんじゃ。勇者の物語にはなんと書かれてあったかな?

「大賢者様は魔法を使って援護したとしか」


「ふむ。ワシだけかね?」

「いいえ、他に剛力のリリアン、聖女ララキア、

最強剣士アーノルドの活躍ぶりが伝わってます」


「今のお主は何人パーティじゃね?」

「一緒に行動してるのは聖女セシリアだけですね」

「では仲間を集めるところから始めないとな。

今のままでは魔王に勝てまい」


「はい、実はすでにやりあってまして。負けちゃいました」

「なに?もう対決したのか」

「対決というか襲われたというか。

魔王も復活して間もないらしく

調子が出ないとかブツブツ言いながら戦ってましたね。

戦闘の途中でアレックス殿下率いる部隊が駆けつけてくれたので

魔王は退散して行きました。

おかげで命拾いしたという情けない話です」


「いや、情けなくはないぞ。生きているだけ行幸じゃ」

「では仲間捜しからですかね」

「その方がいいじゃろ。では仲間と出会った辺りから話すとするかの」

「お願いします」


 大賢者サミュエルは勇者の物語には書かれていないエピソードを交え

仲間との出会いの話からはじめてくれた。


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